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田辺聖子さんはやっぱりすごい。いま『エッセイベストセレクション1』をパラパラと開く。酒井順子さんが巻末で解説を担当しているが、親から田辺聖子さんみたいな物書きになってほしいと言われたらしく、本人は極上の下ネタを書くように揶揄されたのだと解釈して、泉下の父君に決意を表明している。酒井さんには『Remix枕草子』があるように、また下ネタが得意であるようなので、いわば現代版お聖さんになりたいのかとも思うが大阪弁が母語のお聖さんにはなれない。しかし、母語は違えどその存在には心酔しているのである。タイトルといい、話の展開といい、語り口といい、相方のカモカのおっちゃんといい、極上の芸術品なのである。
何でこんな発想ができるのかとか、こんなスケベなことをさらりと言えるのかとか、中身についても考えさせられる。冒頭の一編に『女のムスビ目』というのがある。この中で男には生きている間に2、3のムスビ目があるが、女にはないという。そこで男のムスビ目について、自分自身を振り返るのである。また、2編目には『いらう女』が出てくる。これも『いらう男』というタイトルでどんな男でもすなるヘンズリというものを書きたいのだが、ちょっと羞恥をともない、露骨な内容になってしまい、お聖さんのように格調は出せないように思う。こんな風に色々と触発をされる内容であることは太鼓判を押せる。このエッセイのベストセレクションはその2も刊行され哲学者の土屋賢二さんが解説を書いておられる。