ひと月ほどまえ、息子が帰ってきたときに自宅近くのコンビニへ寄った。ジュースかアイスか買ったあと、お店からでて駐車場へ向かうとき、
「樹の匂いがするな。生きている樹の匂い」
と、息子が言った。春の樹木の息する匂いがした。水度神社が近くにあって、どこを歩いても参道の樹木の匂いがするのだった。
家の玄関の戸をあけても、駅へむかうときも、学校への道も、いつも樹が近くにあって、神社の参道が気に入って、この家を引っ越し先に決めたことを思い出した。息子は3歳から神社エリアで生活してきたので樹木の匂いにも敏感なのだろう。樹の息の匂いで季節を感じ取ることは、結構すてきなことのように思う。
きょうの夕方、冷蔵庫にはほとんどなにもなくて、ピーマンを切っていたら、夫が帰ってきた。
「懐かしい夏の匂いや」
という。え、ピーマンの匂い?
「子供のころ、おかんとばあちゃんがいっしょにピーマン切ってはった。7月とか8月になったら。だからピーマンの匂いをかぐと夏って感じになるねん」
どんなお料理だったんだろう。 もうふたりはいなくなってしまったけれど、そうやって季節の匂いといっしょに人や風景を思い出すっていいな。
きょうは雨で、紫陽花がいきいきしていた。テレワークでほぼいちにち家にいて。メダカのブウの元気がないのが気になっている。相棒のルウが心配そうにぷかりと浮いているブウのまわりをぐるぐる回っている。でもつついたりしない。見守っている感じ。よく見るとときどきブウは尾を動かしている。
最後の夜になるかもしれない。 水っぽい梅雨のはじめの匂いのする落ち着かない一日を、ずっと先のこの季節に思い出すかもしれない。
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