観測にまつわる問題

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憲法9条改正の方向性

2018-03-15 23:45:47 | 政策関連メモ
佐藤正久議員のツイート(17:12 - 2018年3月14日)

>【自民党で9条改正案の絞り込み】
>佐藤の提出案は「9条1項2項を残し、9条の2を新設し、過去見解との整合を図れるよう自衛隊の任務と文民統制の観点から総理と国会の関与を明記」することが柱だ。推進本部の案も佐藤案に近いものなっている。議論を経て国民の意識と学者のギャップを埋めたい

申し訳ありませんが、あまり憲法学者の方々の意見を気にし過ぎない方がいいと思います。

憲法解釈は百家争鳴の状況であり、自説に固執する学者の方々が折れることに期待するべきではありません。学者と裁判所の力関係は実際のところ圧倒的に裁判所の方が上のようです。学者の判断=通説がどうであれ、最高裁の判断が出て判例が確定すると、下級審はそれに拘束されるようであり、その判例が通説と如何に違ってようが関係ないようです。通説が判例に影響しないとも言えませんが、重要なのは裁判所の判断=判例の方だと思われます。

日本国憲法第9条(ウィキペディア)

>自衛隊の憲法9条に対する合憲性について直接判断した最高裁の判例は未だ存在しない。

問題は最高裁が合憲だと判断していないことです。これは違憲を意味している訳ではありませんが(つまり合憲ですが)、政府の解釈を認めている訳ではない(判例になっていない)ことに注意しなければなりません。

裁判所は自衛隊が憲法に書き込まれれば自衛隊を認めるでしょうし(憲法の条文どうしが矛盾しているというような話については良く分かりません)、そうなれば学者の説も見直しをせまられるでしょうが、それはギャップを埋めるというような話にはなりません。

問題は自衛隊が合憲と裁判所が認め学者がそれを容認する情勢になったとしても、そこからまた憲法解釈が始まってしまうことです。つまり必要最小限などと憲法に書き込んでしまうと、それは必要最小限なのだろうかという問題提起がなされてしまい、個別の法律が違憲立法審査で違憲とされてしまう恐れがあると思います。これでは全くどうにもならないというか、何時までも「反戦」の方々とバトルが続く展開に終わりが来ないことになります。

これまでの政府解釈を問題にしたい訳ではありません。別に今までの政府解釈でいいと思います。ただし、最高裁判所が判断を避けている以上、後生大事に墓場まで持っていくような解釈になっていないことも間違いないと思います。そもそも政府解釈は集団的自衛権は行使できないと解釈していたのを2014年に必要最小限度の範囲で行使できると解釈変更しました。必要最小限を明記してしまうと、こうした解釈変更ができなくなることも間違いありません。

仮に必要最小限を明記せずとも9条そのものを書き換えない限り、法律の書きぶりによっては、自衛隊関係の法律が違憲と判断されるリスクが無くなる訳ではありません。しかしながら、学者の方々や裁判所の方々が解釈する余地ができるだけないのが良い立法であり、現状の改憲案は解釈の余地が大きいあまり良くない改憲案だと筆者は思います。

西修教授の改憲私案(私の憲法9条改正案を提示する 駒沢大学名誉教授・西修 産経ニュース 2018.2.22 11:00)のミソは「(3)自衛隊の編成及び行動は、法律でこれを定める」にあると思います。この文言が憲法に書き込まれている限り、戦力不保持など残る9条の条文に配慮する場合において、政府が出した法律が違憲だと判断されたり、最高裁判所が判断を避けたりすることは考え難いということになると思います。政府は憲法に則って法律を出したことが明快になるからです。これが完璧ではないにしろ、必要最低ラインで満足できる憲法改正だと筆者は思います。逆に言えば、こうした文言が無い限り、「護憲派」とのバトルは形を変えて続くことになることが避けられません。

つまり大変申し訳ありませんが、どうも国民の意識と学者のギャップが埋まる改憲案にはなっておらず、新たなバトルの幕開けになると見ていいのではないかと思います。これでは何のために改憲したのか分からないということになります。

憲法9条改正の方向性としては、①今までできていたことは大体できるようにする。②自衛隊に関係する国民の常識に沿う法律に関して最高裁判所が判断を避けるような事態が起こらないようにする(下級裁判所が変な判決を出さないことに期待するべきではないと思います)の2点が重要だと筆者は思います。結局のところ、いろいろな解釈が有り得るので、基本的に政府判断で法律を出して良いのだということが明記されていないと、最高裁判所の判断に期待できないということになるのではないかと思います(よもや違憲判決は出ないでしょうが、これまでと同じバトルが繰り返されることになります)。

必要最小限を明記して、「自衛隊の編成及び行動は、法律でこれを定める」を明記することもできますが、現行憲法に必要最小限が書いていないのですから、戦力不保持条項に加えて、更に火種に成り得る条項を入れる必要はないと思います。

今までの解釈は何だったの?と思われるかもしれませんが、別に解釈は永久不変ではなく(法律の世界で判例が永久不変だと考える必要はありません)、新たな秩序を打ち立てることに改憲の目的があります。現に必要最小限の実力組織派の方々も自衛隊が違憲だと判断されるリスクが無くなる新秩序を打ち立てようとしています(ただし、法律が違憲審査される形で新たな戦いが始まる改憲案になっているようには見えます)。

仮に改憲案が国民の支持を得られそうもなく撤回することになったところで、最高裁判所が急に自衛隊を違憲だと判断してしまう事態は考え難いところです(宙ぶらりんの状態が良くないことは同意します)。

また、必要最小限の実力組織案が国民の支持を得やすい案だと必ずしも筆者は思っていません。基本的には難航した平和安全法制を固定化する案だからです。どうせまた難航しますし、難色を示している公明党さんの合意が得られないと、参議院で通らず発議が難しくなります。森友問題の再発で自民党政権の求心力が落ちている現状ですから(政権が変わったところで現状の安倍政権の支持率が維持できるような気がしません)、難航することが目に見えている憲法改正案はお荷物のようにも見えます。

「自衛隊の編成及び行動は、法律でこれを定める」を憲法に書き込む案も平和安全法制を固定化することには変わりありませんし、あるいは難航する可能性もあります。しかしながら、よほど変な法律を出さない限り、最高裁判所が認める形であるいは学者が匙を投げる形で自衛隊を巡るバトルが概ね終結する優れた案だと筆者は思います。その辺をきちんと説明すれば、野党や与党内の反対派の理解が寧ろ得られ易いと考えられます。別に野党や与党内の反対派を信じている訳ではありませんよ?そうではなく、国民の常識に沿った提案で国民の支持が得られれば、野党や与党内の反対派が抵抗する機運は萎んでいくということです。一体全体自衛隊を巡ってくだらないバトルが続くことをどの国民が望んでいるのでしょうか?普通の常識ある国民はそういうしょうもないバトルに辟易しているとき思います。

平和安全法制が違憲という主張を気にする必要はありません。明らかに合憲だからです。違憲合憲を判断するのは裁判所の仕事中なのであって、学者の仕事は理論を考えるところまでです。


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