夢発電所

21世紀の新型燃料では、夢や想像力、開発・企画力、抱腹絶倒力、人間関係力などは新たなエネルギー資源として無尽蔵です。

POEM/母になる君に

2008-03-01 07:20:56 | 創作(etude)

 去年結婚し
 退職して
 横浜市に
 嫁いだ君
 
 ディズニーランドが
 大好きで
 毎年のように
 舞浜通いをした君

 仕事をする君は
 子どもたちに
 慕われている
 幸せなスタッフだった

 君がいた四年間で
 ぼくはいくたび
 きみの瞳からこぼれる
 涙を見ただろう

 私には資格なんて
 要らないんです
 子どもたちの傍にいれば
 それでしあわせなんですと

 そう言いながら
 相談室の部屋の
 机に座って
 泣きじゃくった君

 きのう2月の
 最後の日に
 里帰りをしたと
 元気な顔を見せに来た

 君のお腹には
 あと二ヶ月で
 産まれてくる
 赤ちゃんがいた

 君もとうとう
 お母さんなんだと
 再会の喜びの裏側で
 ぼくは感動していた

 めそめその女の子が
 赤ちゃんをお腹に宿して
 一年間ともに暮らし
 そして臨月を迎える

 僕のカミさんは
 長女の出産で
 大声で叫んだという
 バカヤロー!

 それは大きな声だったと
 カミさんの母親が
 恥ずかしかったと
 後述談だ

 でも母親になるための
 断崖絶壁を飛び降りるような
 あの出産の苦闘は
 それくらいの気概がいるだろう

 母になるためには
 めそめそしているだけでは
 やりきれない
 度胸がいるんだ

 夫ですらまともに見せない
 大股を開いて
 その隠しようのない股から
 痛みの子をひり出すんだ

 そうして
 世の母親は
 痛みと共に
 愛情を胸に抱くのだ

 愛しいものの
 いのちを守るとは
 半端な気持ちでは
 守りきれないのだ

 母親だって
 時には人間の
 種類で云えば
 ヤクザにもなれる

 本当の幸せは
 きみの痛みの
 向こう側にある
 陣痛のそばにある

 きみよきみよ
 母親になるきみよ
 今度はそのいたいけな
 いのちを守れ