旧友佐藤拓郎くんは仙台在住の俳人、俳誌「澪」の編集者。今回、わが大歩危トラベルに同行し、64連作を寄稿してくれました。
四万温泉
おしゃべりの止めば終点四万の冬
新そばや残り一つを譲られる
温泉の街廃休業の十二月
熊除けの鐘打ち山峡(やまかい)震わせり
熊出ると風生句碑の建つ辺り (稲つつみ地神)
山蛭の張り紙ちぎれ枯れ木立
落ち葉踏む美(は)しき刻字の白蓮碑
無骨なる石の地神や落葉積む
峡(かい)の空梳く稜線の枯れ木立
峡空(かいぞら)の早き日暮れや薬師堂 (日なた見薬師)
堂奥の薬師をろがむ覗き窓
御籠堂屋根の葺き替え雪見ぬ間
本日の宿「積善館」に荷物を預け、「小松屋」で蕎麦を食べ、散策に出ました。
当地は3度目ですが、落合通りの先、落合橋を渡った先は、まだ行ったことがないのです。
いきなり熊除けの鐘に遭遇です。
ほんとに人気のない道ですが、所々施設や人家があります。
昔から土地の神様が祀られている“稲つつみ神社”、祠があるだけの素朴な社で、ここに、冨安風生の句碑、柳原白蓮の歌碑がありました。
神社から800mほど先に「日向見」と呼ばれる地区があり、右手にダム、左手に国宝の薬師堂があります。立派な一本道なので迷うことはありません。
宿のある「新湯」という地区に帰り着いたとき、まだ3時前でしたが、山峡の村は、すでに夕方の気配でした。