イタリアワインかぶれの料理人

イタリアワインとコーヒーが大好きな料理人が、呆れるほど愉快に溢れるイタリアワインの魅力を伝えていきます。

コンテルノ ファンティーノ社のバローロ“ヴィーニャ デル グリ”1997

2010-03-08 09:29:57 | 食・レシピ

一連のバローロが飲み頃を迎え、呼ばれるがごとく、次から次へと飲みたくなります。ヴィーニャ デル グリは何故か途中で経過を見なかったワインです。香りは:甘草、コショウ、シナモンの上品な香りと黒オリーブ、桑の実のリッチな香り。いまだに若々しい果実味、ふくらみのある柔らかな酸。味わいの中で一番嬉しくさせられたのがタンニンです。最初に張り付くような強いアタックがあります。しかし、淡雪が解けるように綺麗に解けていきます。この引き際の潔さが、桜の花の散り際に重なり、春の桜が無性に恋しくなりました。いまだ寒さが居座る札幌ですが。柔らかな酸と果実味に心温められ、タンニンの余韻の潔さに、運命を冷静に受け入れる日本人的な精神を感じます。
話が飛びますが、太宰治の小説「人間失格」を原作にした映画を見てきました。原作は読んでいないので、監督の意図とした事は解りませんが。筋だけを見ていくと女優さんの演技だけが華やかで。特に津軽の風景は混沌としたグレーが立ち込む映像が映し出されていました。その最中に、ふと思い出したのが弘前城の桜です。散った花びらは道路を桜色に埋め尽くし風に吹かれるままにうごめく様は、まさに風の行く末の運命を穏やかに受け入れ、散ってなお、その美しさを顕わにしています。“ヴィーニャ デル グリ”を飲んだ翌日に、タンニンの潔い引き際を桜の散る様が微妙な重なりに感じられ、思わぬところでワインの余韻が蘇ってきました。
訂正があります。先回のグロミス社のバローロ1988とありますが。正しくは1998です。申し訳ありません。


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