とりがら時事放談『コラム新喜劇』

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ナイト・ミュージアム

2007年03月21日 19時20分05秒 | 映画評論
まだまだガキ......ではなく少女であった頃のキルスティン・ダンストが出演していた映画「ジュマンジ」は、サイや象、シマウマ、キリンが家の中を走り回るという非常に騒々しい映画だった。
同時にCG技術もここまで到達したのか、という妙な感慨もしてしまう映画だった。

ある意味、ベン・スティラー主演の「ナイト・ミュージアム」もジュマンジと同じ主旨のとても騒々しい映画といえなくもない。
そして、どの部分が実写で、どの部分がCGなのか、よく分らない映画でもあった。

結論から述べると、どちらの方が面白かったかというと、私には「ジュマンジ」の方が正直面白かったように思える。
というのも、ナイトミュージアムはあまりにもご家族映画に徹してしまってて、スリルさに物足りなさを感じてしまったのだ。
コンセプトは面白い。
夜の博物館というのは、気持ちのいいものではないはずだ。

私は大型小売店の店内を深夜、一人トボトボと歩いたことがある。
もちろん、ドロボウに入ったわけではない。
私は観光目的のビザ免除で入国し、百貨店の宝飾コーナーやブランド物のショーウインドウを破壊して廻る中国人窃盗団のメンバーではない。
空調機器の騒音と振動を測定するという、いかにも技術者然とした「アルバイト」で入ったのであった。
当然のことながら、深夜の大型小売店は不気味だった。
客が残って潜んでいないか、と警戒したり、暗がりのマネキンにドッキリすることも正直あった。
私は機器の騒音と振動の測定をしていたので、シーンとした店内で突然機器が動き出し、天井裏のダクトが「ボワ~ン」と鳴る音も、実に不気味なのであった。

ちなみに機械室の前で一人待機していた18歳の高卒の社員に背後から近づき「わっ!」と脅かすとビックリして5メートルほど吹っ飛んだことも思い出す。

つまり、それほど深夜の大空間は気持ちの悪いものなのだ。

まして博物館となると、恐竜や動物の骨格標本はもちろん人間の骨格標本やミイラなんてものまであるので不気味に違いない。
また博物館の種類によってはホルマリン漬けの生態標本などもあり、不気味さは一層増す。

ともかく映画「ナイト・ミュージアム」はそういう深夜の博物館の不気味さをヒントに製作されている作品なのだ。
しかし、その不気味さはあくまでもファンタジーとしての不気味さであってご家族向けの作りなのであった。

映画「ジュマンジ」では謎のボードゲームが数々の事件を巻き起こす。
そのため、ご家族向けであっても全体的にオカルトやパニックの要素が色濃くこめられていて、観客がかなり冷や冷やするストーリーに仕上がっていたのであった。
それと比べると「ナイトミュージアム」は緊張感が欠如しており、スパイスの効きの弱い甘口カレーライスのような食感に仕上がってしまっていたのだった。

ま、悪役に「メリーポピンズ」「チキチキバンバン」で懐かしいディック・バン・ダイクなんかが出演していたので、すべての世代が楽しめるエンタテーメントにはなっていた。
でも私には「ボチボチでんな」という映画であった。

~「ナイトミュージアム」2007年作 20世紀フォックス映画~