とりがら時事放談『コラム新喜劇』

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高速バス

2004年12月16日 21時41分31秒 | エトセトラ
昨日から一泊二日の予定で鳥取県の米子へ行ってきた。

鳥取には大きな街が三つある。
鳥取市。倉吉市。米子市。
この三つの街への大阪からの所要時間が実はほとんど同じであることをあまり知っている人はいない。
というのも、鳥取というところはビジネスが少なく、観光地も大きくても少し地味な温泉街は中心のため訪れる人が少ないことが原因としてあげられる。
「鳥取県、って確か大阪市と同じくらいの人口でしたよね。」
と昨日、得意先の人に尋ねたら、
「いいえ、まったく違います。鳥取県の人口は約七十万人ですから、大阪の方がもっと多いです。」
最初、怒られるのかな、と思ったら違った。
それほど人口が少ないというのだ。
七十万人ということは大阪市どころか豊中市二つ分ほどの規模しかないことになる。
この人口過疎化の深刻な鳥取に行く交通網で、鉄道と路線バスが熾烈な戦いを演じていることも。もちろんあまり知られていない。
十年ほど前に、兵庫県の上郡と岡山県の鳥取県を結ぶ第三セクター智頭急行が開通してから鳥取市が近くなった。大阪駅から最速の特急で二時間半かからなくなったのだ。
私はこの特急をしばしば利用するが、温泉客が座席を占領していることが多く、やかましいことこの上ない。
こちらは仕事で乗車しているので、隣で酔っぱらわれたらたまらないのだ。
なにか快適に移動する方法がないかと考えていたら、日本交通が運行する高速バスが走っていることを知った。
この高速バスはなかなか優れものである。
所要時間はJRとほとんど同じ。椅子は独立した一列三人掛けでとても快適。バスの車内にはトイレが付いているので安心できるし、セルフサービスのお茶のサービスもある。
利用書はただ渋滞による遅延だけを心配すればよい。
この高速バスとJRとの違いが、たった一つある。
高速バスはJRと比較して、驚くほど安いのだ。
鳥取の三都市に、いずれも片道五千円以内で行くことが出来る。これはJRよりもかなり安価で、ビジネスマンの私としては出張費を浮かすのに絶好の手段になっているのだ。
鳥取行きで片道2500円程度、米子行きで片道4500円は節約できる。

ということで、嬉々として鳥取出張に精を出す私である。

うどん屋

2004年12月14日 07時27分02秒 | エトセトラ
「はなまる」という讃岐うどんのチェーン店がヒットして、雨後の筍のように立ち食いうどん屋が街のあちらこちらに出現している。
そのむかし、私は国鉄「天王寺駅」の阪和線快速電車乗り場に出店していた屋台のうどん屋の立ち食いうどんが大好きで、親に買い物に連れていってもらった帰りには、よくここのかけうどんを買ってもらったものだ。
プラスチックの丼に入ったうどんは出汁が美味しく、そこに葱と細かく刻んだ薄揚げが入れられていたと記憶する。
JR「天王寺駅」からはこの屋台のうどん屋は姿を消し、きっちりとした店構えになってコンコースに二軒ほど営業しているが、味は昔とはかなり変わってしまったような気がする。

ところで、最近の立ち食いうどん屋はセルフサービスの店が多い。
「何を今さら。立ち食いのうどん屋はセルフでしょ」
と、言うなかれ。
最近のうどん屋は具や果ては出汁まで客に入れさせるところがあるのだ。
先日、桜橋の交差点にできた、あるうどん屋に入ると、店の内装にビックリ。まるでカフェなのだ。
一瞬私はプロントかスターバックスに入ったのではないかと錯覚した。
うどん屋の場合普通、カウンターで「きつねうどんね」「はい、きつね一杯!」という会話が交わされるがここは違った。
まず、うどん屋とは明らかに異なる内装なのでオーダーの方法に一瞬戸惑う。
「大、中、小、どれにします?」
といわれても困るのだ。
どうしてサイズを訊かれるのかわからなかったが、うどんの量を尋ねられていることに気付き、とりあえず「中」を注文。
店員は丼に茹でたうどんを入れて私に差し出した。
「うどんだけくれても........どうすんの?」
と思っていると、そのうどんカウンターの横に並んでいる具の棚から、好きな具をトッピングするように促された。
そしてレジ。
代金を精算し支払う。でも、まだ汁が入ってないじゃないか。
「あの~、汁はどうするんですか?」
と訊いたら、そのレジの横手にある給茶機のような機械に丼をかざし、自分で汁を入れるように指示された。

それにしても、エエ加減にせいよ。
これでは完全セルフサービス。店員はまるで番台の親父。
いったいどんなメリットが、客と店側にあるのやらさっぱりわからない。
確かにこの店も「讃岐うどん」と謳っているからには麺は太く、腰もある。でも、雰囲気とシステムが味をぶち壊しているような気がしたのだ。
家でもめったに料理をせん私が立ち食いうどん屋でうどんを作ることになるとは。
噂によると麺まで客に茹でさせる店があるという。
うどん屋。いったい君は何を考えとるんだ?

嗚呼、私は落語の「風邪うどん」にでてくる屋台のうどんが食べてみたい。

千と千尋の神隠し

2004年12月12日 22時20分36秒 | エトセトラ
つい先日、テレビで宮崎アニメ「千と千尋の神隠し」が放送されていた。
千と千尋の神隠しはアカデミー賞を受賞した名作として、また日本映画最高の興行収入を記録したことで、だれもが知っている超人気作品だ。
そういうわけで名作かどうかはともかくとして、私もこのアニメが何となく好きでDVDも購入し、何回か見ている。

テレビで放送されていたとき「どうせDVD持ってるから、わざわざチャンネルを合わせる必要なんかないわ」と思い、受信料不払い運動が加速して窮地に立たされている国営放送のニュース番組を見ていた。
私の欠点として、一つチャンネルに合わせて同じ番組を見続けることができない癖がある。この癖のために二時間ドラマなど、ここ十数年間見たことがない。
このときもニュースの話題がつまらなくなったのでチャンネルボタンをポツポツ押したら、「千と千尋の神隠し」を放送しているチャンネルがでてきてしまった。
ちょっとだけ見てみよう、としたそのシーンは怒り狂った「カオナシ」が「千を呼べ!千を呼べ!」と暴れ回っているところだった。
この映画の中でも、そこそこ面白い場面なので暫く見続けることになった。
やがてカオナシ騒動は沈静化して、主人公の千尋が電車に乗って魔法使いだったか、なんかのオバハンのところへ向かうシーンに移っていった。
さっきまで狂い、暴れ回っていたカオナシはもとの大人しい無表情な白い、ヒョロ~とした感じに戻り、千尋と一緒に電車に乗っている。
ここで私はふと気付いた。
この「カオナシ」どこかで見たことがあるぞ、と。
そう、この「カオナシ」の顔と、今、中高年のババア共に人気絶大の韓国人俳優「ぺ・ヨンジュ」の顔がそっくりではないか、ということに気付いたのだ。
なるほど、あらかじめ「千と千尋の神隠し」を子供や孫と見た大人が、その後ぺ・ヨンジュの顔を見て無意識のうちに親しみを感じ、魔物に取り憑かれたように追っかけを開始したのであろう。
そういえば、この「千と千尋の神隠し」のかなりの部分の作画が韓国のプロダクションを利用して作られていたことを思い出した。
これは何かの陰謀なのか。はたまたただの偶然なのか、妖怪達のなせるワザなのか。
ともかく、
「カオナシ」
恐るべし、である。

四字熟語

2004年12月10日 23時26分23秒 | エトセトラ
勤務している会社が柄にもなく経営企画部なるものを立ち上げて、とても達成できそうになり売り上げ目標をクリアさせるための作戦本部に仕立て上げた。
この経営企画本部は定年延長された元役員が本部長に就任し、アシスタント一人でスタートした、みるからにショボイセクションなのだ。
私はこれを縮めて「ショボセク」と呼んでいる。
そしてこのショボセクが一番はじめに考えた運動方法が目標額とスローガンを記した旗を作り、全社員が抱負と名前を書き入れるというものだった。
卒業記念の色紙じゃあるまいし、ばかばかしい。「みんな元気でね」と懐かしい変体処女文字で書き込んでやろうかと思ったが、それではふざけていると叱られる。
だからあまり気の乗らない私はまだ、なーんにも書き入れていない、が他の社員はなんだかんだと書き入れて会社に忠誠を尽している。
感心感心。

ところで、ここに書き入れる抱負として使われている言葉になぜか「四字熟語」が多い。
相撲取りが昇進して、挨拶をするときによく四字熟語を使用して、一見引き締まって見える文句を滔々と述べることがあるが、それに似ている。
高校もろくすっぱ卒業していないような相撲取りが四字熟語で挨拶する様は「お前、意味わかっとるんか。」とツッコミそうになるが、わが社の寄せ書きもそれと同じ感想を抱いてしまう。

書き取りテストを実施したら、とても正解を書けそうにないような四字熟語かけるのは、つとにインターネットのおかげといえよう。
社員は個々にインターネットで四字熟語のサイトを見つけ出し、適当に書き込んでサインをする。
漢字なので傍目からは引き締まった見えるものの、三日も経てば、書いた本人も思い出せないような文句なのだ。

私は部下の建前、書かずにいるわけにはいかないので、何か考える必要がある。
でも四字熟語は、嫌だ。
そういう私を察してか、ある日部下は、
「これ、今年は絶対優勝や!」って書きましょか? と私の部下はいった。
「ほんなら、おれはその下に黒と黄色でストライプを書くわ。」と私。
「ほんで甲子園へ持っていくんでしょう。この旗。だれもわかりませんよ。皆、今期は営業利益優勝やと思うでしょうけど、ほんまは阪神優勝です!」と部下。

営業企画本部長は、まだこの隠された陰謀を知らない。

国境なき医師団

2004年12月09日 21時46分00秒 | 書評
今、タイトル欄に「こっきょうなきいしだん」と入力したら私のMacは「国境なき石段」と変換した。
相変わらず「アホ」である。
しかし私は最新のEGBRIDGE15を使っとるんだがな。

さて、それはともかく本題に入ろう。

今日、仕事から帰宅すると私の机の上に一通のダイレクトメールが届いていた。封筒の差出人を見てビックリ。
そこには「国境なき医師団」と記されていたのだ。
封筒の窓には私の住所と私の名前。その下に「緊急事態 スーダン・ダルフール地方」とある。

国境なき医師団は世界で最も有名な非営利民間組織の一つである。1999年にはノーベル平和賞を受賞している。
この世界的に有名なNPOがどうして私の住所と名前を知っているのか。理解できない。
これだけ立派な組織なのだから、どのようなルートで私の名前と住所を入手したのか、挨拶文に書かれていてもいいのではないかと、封を開けてみたものの、そのような記述は一切なかった。
クレジットカードでの寄付を募っているところを見ると、私は変に疑いたくなってしまったのだ。
なんで寄付金にJCBやVISAなのか、と。
文面を見る限り本物の「国境なき医師団」のように見えるし、具体的に「スーダン」という国名を挙げて、支援を要請しているところをみると、信じても良いのかな、とも思ってしまう。

私が今通っている英会話スクールがユニセフを支援しているので、ここから私の名前を教えてもらったのかも知れないが、それならそれで、しっかりと断り書きを入れておくべきた。
冬のボーナスも満足な額をもらえない貧乏サラリーマンの私なので、本当のところ私が支援してもらいたいくらいなのだが、このダイレクトメールが本物なら少しの寄付も惜しむものではないが、どうも疑いたくなってしまうのだ。
なぜなら、この「国境なき医師団」のダイレクトメールの雰囲気が、時々私の手元に届く「香港から」の「世界の宝くじで儲けよう」ダイレクトメールに似ているからだ。

これが本物である証拠はどうすれば入手できるのか。
ちょこと思案しているところである。

大阪市交通局「定期券」編

2004年12月08日 23時11分03秒 | エトセトラ
万年大赤字を出しながら、従業員が組合活動に精を出し、管理職は下請け業者に天下りすることばかり考えて、双方高給を受け取りながら、服装も髪形もだらしなく態度も横柄で、勤務時間中に勤務場所である改札ボックスで居眠りをし、退職後は異様に高額の退職金を受取って平気な顔をしているサービス業のことを、関西では「大阪市交通局」という。

今日、定期券を買うために大阪市営地下鉄のとある駅の定期券売り場へ行った。
以前から、この地下鉄の定期券売り場には、ほとほと呆れざるを得ないものがある。

まず、大阪市営地下鉄の定期券売り場は「どこにあるのかわからない」。
私鉄やJR線の定期券売り場は切符売り場と隣接しているのが普通で、定期券売り場をわざわざ探す必要がない。JRはほとんどの駅にあるみどりの窓口で買える。
これに対して大阪市営地下鉄の定期券売り場は〔改札口から歩いて数十メートル、または数百メートル離れた場所」に隠れるように設置されている。
そして、大阪市営地下鉄の定期券売り場は「限られた時間内しか営業していない」。
これまた私鉄やJR線の定期券売り場は「通勤通学客、利用者の便宜に合わせているので」早朝や深夜でも定期券を売っている。これに対して大阪市営地下鉄の定期券売り場は「職員の勤務の都合に合わせているので」早朝や深夜は閉まっている。もちろん特別な場所を除いて休日になんか開いているわけがない。
さらに、大阪市営地下鉄の定期券売り場は「クレジットカードで定期券を買うことが出来ない」。
一部の私鉄ではまだ駄目なところもあるようだが、最大手の私鉄であるJRではクレジットカードで定期券を買うことが出来る。
これに対して、大阪市営地下鉄では「役所商売のためか、いつもニコニコ現金払い」だけである。
そしてそして、大阪市営地下鉄の定期券は「お得感がほとんどない」。
くどいようだが、ほとんどの私鉄やJR線は定期券の普通切符に対する割引率がとてもよく、割安感が強い。JR線なんぞ一ヶ月定期はだいたい二週間ちょっとで元をとることができる。
これに対して大阪市営地下鉄の定期券の割引率は「千円のテレカと良い勝負である。」
割引率が悪過ぎて2月は定期を買ったほうが損をする。

このように、大阪市交通局は職員優先の職員のための福祉機関である。市民の安月給から徴収した税金を経営上の赤字補填に注ぎ込み、楽な仕事で高額給料を実現した桃源郷。
それが大阪市交通局なのである。

せめて午後11時まで開けとかんかい!定期券売り場。残業したら買えんやないか。こっちは残業のない公務員ちゃうんじゃ怒。

スカイキャプテン

2004年12月06日 21時07分09秒 | 映画評論
先週末に映画を鑑賞してきた。
「ハウルの動く城」「Mr.インクレディブル」「ポーラーエクスプレス」など話題作の中で埋もれるように公開されている特撮映画「スカイキャプテン ザ・ワールド・オブ・トゥモロー」を観てきたのだ。

最近「特撮映画」という言葉が死語となっているが、この映画は特撮という言葉がぴったりするような映画だった。
なにも糸で吊るして花火を吹き出しながら飛んでいる宇宙船や背中にファスナーの見える着ぐるみの怪獣が出ている映画だという意味ではない。
この映画もご多分にもれず全編CGによる画像処理を駆使しており、決してちゃちな特撮ではないのだ。
では何が「特撮」かというと、その絵作りが1950年代60年代のオールドファッションなSF映画の雰囲気を多分に持ち合わせていたからなのだ。
彩度を落とした画面はまるで、閉館した古い映画館に貼られているボロボロになった古い映画のポスター、という感じがするのだ。
ストーリーは単純で、オチがわかってしまう部分も少なくない。そういうストーリーの幼稚さも何となく50年代のSF映画だった。
でもそれなりに私には楽しめる映画だった。
軽快な音楽。
早いストーリー展開。
色んな映画からぱパクってきたアイデア群。
などなど。
あまり評判の良くない映画のようだが、私は好きだ。
なぜなら、おもちゃ箱をひっくり返したような感じがするではあーりませんか。

社長をだせ!

2004年12月05日 08時55分15秒 | エトセトラ
とりがら書評

私もメーカーの営業マンという仕事上、様々なクレームに遭遇します。
その多くは、大きなトラブルも無く解決できるのですが、数年に一度は、気難しいお客さんにぶつかって、苦労させられることがあります。
本書はカメラメーカーのサービスセンターに勤めていた筆者による実録集であり、また有る意味、立派なマーケティング・ビジネス書でもあります。

書名は「社長をだせ! 
    実録 クレームとの死闘」川田茂雄著(宝島社文庫)

もともと本書を書店で見つけたときから、とても気になっていたのですが、今回文庫本となったのを発見し、購入しました。
一個のクレームが会社の命運を左右する世の中になったことは三菱自動車や雪印の例を見ても明らかです。クレームは無いに限ります。
しかし、実際にクレームが発生した場合どうすればよいのか。
筆者は誠心誠意対応し「ウソは絶対つかない」「隠さない」ことが大切だと言っています。
本書の中でヤクザ問題と同和問題が重複した複雑なユーザーからのクレーム実例が紹介されていますが、まさにこういう方々には誠意を尽すしか方法がないことを本書は述べています。
私も以前勤めていた会社で京都の有名なヤクザ屋さんにからんだ仕事でクレームが発生し、何度か打ち合わせした経験があります。このヤクザ屋さんも同和問題とからんでおりましたが、誠心誠意対応すると、先方は一般のお客さんよりも丁寧に接してくれ、クレーム処理に当たらせてくれました。
しかし、その「一般の人より」というのがキーポイントで、もし誠意が通じなかったら、どうなっていたものやらと、今思い出しても恐ろしいものがあります。

現在、ヤクザ屋さんより恐ろしいものにインターネットがあります。
本書はインターネット時代のクレーム対応についても述べられています。
インターネットの恐ろしさは、その匿名性とだれもがその情報を共有できるという公共性にあります。
数年前に東芝が「あんたみたいな人のことをクレーマーって言うんだよ」と言ったのを録音されてしまい、インターネットで世界中に発信させれてしまい大騒ぎになったことがありました。
それだけにインターネットの便利さの裏側には、企業として、流される情報にどう対応すればよいのか真剣に考えねばならない難しい課題が存在しています。

今後仕事に携わったいく我々にとって非常に勉強になる一冊でした。


※会社経営者もいらっしゃる「とりがら」のメンツには必読の書です。ん? 私はI氏を知っているから読まんでエエて?

しぶちん

2004年12月03日 22時39分07秒 | エトセトラ
とりがら書評

今年は唐沢寿明主演で大学病院を舞台にしたテレビドラマ「白い巨塔」がリメイクされ、大きな話題になった。
その「白い巨塔」の原作者、山崎豊子の初期の短編集が「しぶちん」(新潮文庫)である。

この短編集には表題作「しぶちん」の他に「船場狂い」「死亡記事」「持参金」「遺留品」の4作品が収録されている。
いずれも大阪を舞台にした小説だ。
とりわけ「死亡記事」と「遺留品」が心に響く作品として強く印象に残った。
「死亡記事」は著者の経験を活かした新聞社が舞台の短編だ。
ある日、第二次世界大戦中にその新聞社で主筆を務められた男性の死亡記事を「私」は発見する。
主筆には片足がなかった。
大学を出たばかりの「私」はその片足を失っている主筆が、どうして片足を失ったのか、生涯独身を通したといわれているが、それはまたなぜなのか。時間と共に彼の人生に触れることにより、一個の男の激しい人生を垣間見ることになるだ。
「遺留品」は航空機事故で死亡した大手紡績会社の社長が時計や鞄と共に「あるもの」を遺留品としても残し、周辺に様々な憶測を生み出し、それを秘書が解明して行くという、一種のミステリー作品だ。
子供が無く、長年連れ添ってきた妻だけを大切に愛していたという社長にとって、そのある「遺留品は他人」から見ると奇聞を生んでしまうような物だったのだ。
その社長の秘書であった年若い女性が「あるもの」にまつわる社長の真実を解明し、やがて大きな優しさを見いだし、亡くなった社長に尊敬以上のものを抱いていたことに気付くという多少感傷的ではあるが、胸にじんと染みてくる快作である。
他の三作が大阪文化の特異な部分を興味深く描写している作品で、面白いが私は先述した二作品ほどスキにはなれなかった。東京の人には受けるだろうと思える内容だった。

いずれにせよ、昭和三十四年に発表された本作品集は、現在でも十分に読みごたえのある一冊といえよう。

世界で進化する日本の味 2

2004年12月02日 22時54分27秒 | エトセトラ
一昨日の新聞「産経・ビジネス アイ」で、今、ニューヨークで日本のラーメンが俄に脚光を浴びてきている、という記事が掲載されていた。
鮨や天ぷらなどは、ごく一般的な食事の一つのジャンルになってしまっている。
例えば画「ユーガットメール」では、冒頭、メグ・ライアン扮する主人公の女性が同棲しているボーイフレンドと、
「今夜は何?」
「今夜は鮨だよ!」
「鮨!」
という日常会話を交わしているし、ローワン・アトキンソン主演の「ジョニー・イングリッシュ」や「モンスターズ・インク」にもすし屋のシーンが登場する。前者などは回転すしなのだ。

なぜ産経の経済専門紙がNYのラーメンを取り上げたかというと、ニューヨークタイムズ紙が紙面を割いて「NYのラーメンブーム」を取り上げたからだという。
鮨や天ぷらとは異なるラーメンの「濃い味」がアメリカ人の味覚にマッチしたとのことだ。

同じように、日本の洋菓子店がニューヨークで大人気になっているニュースがこれまた同じ新聞で二月前ぐらいに報道されていた。
その人気の店は「ビアード・パパのシュークリーム屋さん」というチェーン店だ。
この店は店先でオリジナルのカスタードクリームをシューに詰めて売る、実演販売方式の洋菓子店だ。大阪本社の会社だけに、市内にはあちこちに店舗を見ることが出来るが、いつもシュークリームを買い求める客の行列ができている。
一つ百二十円以上もするので、貧乏な私はまだ食べたことはない。しかし店の前を通ると、いつもバニラのいい香り漂っていて「きっと美味しいんだろうな。」と予感させるものがある。
これがこの春、NYの中心部に第一号店を出店したところ「これまでにない甘味体験」として女性を中心に、これまた行列ができるくらいに繁盛してるというのだ。
産経・ビジネス・アイによると、アメリカの都市部では「日本の食べ物は美味しい」という評判が定着しており、次々に現れる新しい日本の味が成功する可能性が高い、ということだ。

たこ焼きの屋台をNYでやって、一旗揚げられないか、いま考えている私であった。