「はなまる」という讃岐うどんのチェーン店がヒットして、雨後の筍のように立ち食いうどん屋が街のあちらこちらに出現している。
そのむかし、私は国鉄「天王寺駅」の阪和線快速電車乗り場に出店していた屋台のうどん屋の立ち食いうどんが大好きで、親に買い物に連れていってもらった帰りには、よくここのかけうどんを買ってもらったものだ。
プラスチックの丼に入ったうどんは出汁が美味しく、そこに葱と細かく刻んだ薄揚げが入れられていたと記憶する。
JR「天王寺駅」からはこの屋台のうどん屋は姿を消し、きっちりとした店構えになってコンコースに二軒ほど営業しているが、味は昔とはかなり変わってしまったような気がする。
ところで、最近の立ち食いうどん屋はセルフサービスの店が多い。
「何を今さら。立ち食いのうどん屋はセルフでしょ」
と、言うなかれ。
最近のうどん屋は具や果ては出汁まで客に入れさせるところがあるのだ。
先日、桜橋の交差点にできた、あるうどん屋に入ると、店の内装にビックリ。まるでカフェなのだ。
一瞬私はプロントかスターバックスに入ったのではないかと錯覚した。
うどん屋の場合普通、カウンターで「きつねうどんね」「はい、きつね一杯!」という会話が交わされるがここは違った。
まず、うどん屋とは明らかに異なる内装なのでオーダーの方法に一瞬戸惑う。
「大、中、小、どれにします?」
といわれても困るのだ。
どうしてサイズを訊かれるのかわからなかったが、うどんの量を尋ねられていることに気付き、とりあえず「中」を注文。
店員は丼に茹でたうどんを入れて私に差し出した。
「うどんだけくれても........どうすんの?」
と思っていると、そのうどんカウンターの横に並んでいる具の棚から、好きな具をトッピングするように促された。
そしてレジ。
代金を精算し支払う。でも、まだ汁が入ってないじゃないか。
「あの~、汁はどうするんですか?」
と訊いたら、そのレジの横手にある給茶機のような機械に丼をかざし、自分で汁を入れるように指示された。
それにしても、エエ加減にせいよ。
これでは完全セルフサービス。店員はまるで番台の親父。
いったいどんなメリットが、客と店側にあるのやらさっぱりわからない。
確かにこの店も「讃岐うどん」と謳っているからには麺は太く、腰もある。でも、雰囲気とシステムが味をぶち壊しているような気がしたのだ。
家でもめったに料理をせん私が立ち食いうどん屋でうどんを作ることになるとは。
噂によると麺まで客に茹でさせる店があるという。
うどん屋。いったい君は何を考えとるんだ?
嗚呼、私は落語の「風邪うどん」にでてくる屋台のうどんが食べてみたい。
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