浦沢直樹の人気コミック「20世紀少年」は「ともだち」という名前の新興宗教の教祖が、自ら仕組んだテロを企画し、そのテロと戦い打ち勝つという芝居を演じて英雄となり、やがて世界を制覇する、という狂気の世界が描かれている。
そこへ子供時代「ともだち」の友人だったと思われるケンジやその仲間が「ともだち」による「世界の終焉」から世界を救おうとする物語だ。
北朝鮮という国家は「20世紀少年」の中で描かれている狂気の世界をまさに地でいっている現実の世界ということができる。
ただコミックと違うのはコミックでは全世界的に狂気が展開されていることに対して、北朝鮮では北朝鮮という半島の最も乏しい地域を限定して展開されている点だ。
しかし、その範囲における影響力は究めて酷似しているのである。
現実の独裁者「金正日」は「ともだち」そのままに総てのテロ行為の指揮をとっている。
この国の国民にとって金正日が下す指示こそが正義であり、真実なのだ。
「北朝鮮国民」にとって「金正日」は教組であり、絶対的存在であり、彼らの思想そのものだからだ。
だから彼らは金正日の言葉なら総てを疑うことなく平然と実行することができるのだ。
たとえそれが中学生の少女を拉致することであったとしても、航空機に爆弾を仕掛けて墜落させることであったとしても、偽札を印刷し世界にばらまくことであったとしても......。
手嶋龍一著「ウルトラダラー」は北朝鮮で発行される偽ドル紙幣に絡むサスペンス小説だ。
「99%の真実と1%の創作」と著者自身が語っているように、ドキュメンタリー調で展開されるドラマはスリリングで魅力的だ。
一連の拉致事件に始まり、日本の外務省と北朝鮮のかかわり、偽ドルの持つ意味、などなど「もしかしてこれは実話か」と思えるエピソードが次々と展開されていく。
もしこれが著者の語るように99%の真実からの物語であるとしたら、非常に由々しき問題でだろうだろう。
前述のコメントは元ジャーナリストである著者ならではの宣伝文句なのかも知れないが、ジャーナリストだからこそ知り得た北朝鮮に関係する情報が本作の執筆の重要な役割を果たしているようだ。
それにしても紙幣製造のノウハウの記述は物語以上に興味を惹かれる部分でもあった。
先日久しぶりに日本円をドル紙幣に両替する機会があった。
替えてもらう紙幣は小額紙幣にして欲しいと依頼して、もらった10ドル紙幣を見て驚いた。
カラフルな色が付いていたのだ。それも微妙にグラデーションのかかった色なのだ。
まるでゲームに使う玩具の紙幣のようなデザインだったが、これも偽造防止技術の一つなのだろう。
小説の中では最新の紙幣にはどのような偽造防止技術が用いられているのか、真偽のほどはか分らないが、最新のドル紙幣にはマイクロチップが埋め込まれている、などというところは思わず頷けるものがあった。
そして、その紙幣の真贋を確かめるハイテク機器の記述も魅力的な要素の一つだった。
著者の手嶋氏は9.11同時多発テロの際、NHKワシントン支局長として現地から連日レポートを届けてきた私たちにとって馴染のある顔でもある。
あのNHKの特派員が、かくもユニークで面白い小説を書き上げるとはなかなか想像することはできない。
こういう真に迫った「北」の闇を扱った小説をメジャーな報道機関に勤務していた元ジャーナリストが自由に書き、そして発表できるような世の中になったことも、これまでなにかと遠慮気味であった北朝鮮報道に関する一つの進歩なのかも知れない。
~「ウルトラダラー」手嶋龍一著 新潮社刊~
そこへ子供時代「ともだち」の友人だったと思われるケンジやその仲間が「ともだち」による「世界の終焉」から世界を救おうとする物語だ。
北朝鮮という国家は「20世紀少年」の中で描かれている狂気の世界をまさに地でいっている現実の世界ということができる。
ただコミックと違うのはコミックでは全世界的に狂気が展開されていることに対して、北朝鮮では北朝鮮という半島の最も乏しい地域を限定して展開されている点だ。
しかし、その範囲における影響力は究めて酷似しているのである。
現実の独裁者「金正日」は「ともだち」そのままに総てのテロ行為の指揮をとっている。
この国の国民にとって金正日が下す指示こそが正義であり、真実なのだ。
「北朝鮮国民」にとって「金正日」は教組であり、絶対的存在であり、彼らの思想そのものだからだ。
だから彼らは金正日の言葉なら総てを疑うことなく平然と実行することができるのだ。
たとえそれが中学生の少女を拉致することであったとしても、航空機に爆弾を仕掛けて墜落させることであったとしても、偽札を印刷し世界にばらまくことであったとしても......。
手嶋龍一著「ウルトラダラー」は北朝鮮で発行される偽ドル紙幣に絡むサスペンス小説だ。
「99%の真実と1%の創作」と著者自身が語っているように、ドキュメンタリー調で展開されるドラマはスリリングで魅力的だ。
一連の拉致事件に始まり、日本の外務省と北朝鮮のかかわり、偽ドルの持つ意味、などなど「もしかしてこれは実話か」と思えるエピソードが次々と展開されていく。
もしこれが著者の語るように99%の真実からの物語であるとしたら、非常に由々しき問題でだろうだろう。
前述のコメントは元ジャーナリストである著者ならではの宣伝文句なのかも知れないが、ジャーナリストだからこそ知り得た北朝鮮に関係する情報が本作の執筆の重要な役割を果たしているようだ。
それにしても紙幣製造のノウハウの記述は物語以上に興味を惹かれる部分でもあった。
先日久しぶりに日本円をドル紙幣に両替する機会があった。
替えてもらう紙幣は小額紙幣にして欲しいと依頼して、もらった10ドル紙幣を見て驚いた。
カラフルな色が付いていたのだ。それも微妙にグラデーションのかかった色なのだ。
まるでゲームに使う玩具の紙幣のようなデザインだったが、これも偽造防止技術の一つなのだろう。
小説の中では最新の紙幣にはどのような偽造防止技術が用いられているのか、真偽のほどはか分らないが、最新のドル紙幣にはマイクロチップが埋め込まれている、などというところは思わず頷けるものがあった。
そして、その紙幣の真贋を確かめるハイテク機器の記述も魅力的な要素の一つだった。
著者の手嶋氏は9.11同時多発テロの際、NHKワシントン支局長として現地から連日レポートを届けてきた私たちにとって馴染のある顔でもある。
あのNHKの特派員が、かくもユニークで面白い小説を書き上げるとはなかなか想像することはできない。
こういう真に迫った「北」の闇を扱った小説をメジャーな報道機関に勤務していた元ジャーナリストが自由に書き、そして発表できるような世の中になったことも、これまでなにかと遠慮気味であった北朝鮮報道に関する一つの進歩なのかも知れない。
~「ウルトラダラー」手嶋龍一著 新潮社刊~