人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ディーン・R・クーンツ著「これほど昏い場所に」を読む ~ 読む手が止まらない 科学を下敷きにしたサスペンス小説:FBI捜査官ジェーン・ホーク・シリーズ第1作

2019年03月25日 00時01分02秒 | 日記

25日(月)。今月は12日から12日間連続でコンサート・映画館通いが続き いささか疲れたので、昨日は家で 今週のコンサートで演奏される曲のCDを聴きながら読書をして過ごしました 予習で聴いたのはショスタコーヴィチ「交響曲第4番」(ハイティンク指揮ロンドン・フィル)、モーツアルト「ピアノ四重奏曲第1番」(フォーレ四重奏団)、シューマン「ピアノ四重奏曲」(ラヴィノヴィチ、今井信子他)、ブラームス「ピアノ四重奏曲第1番」(フォーレ四重奏団)のCDです このほか、リヒャルト・シュトラウス「ピアノ四重奏曲」とマーラー「ピアノ四重奏曲・断章」をカップリングしたフォーレ四重奏団のCDを探したのですが、CDラックのR.シュトラウスのコーナーにもマーラーのコーナーにもない。とうとう見つからず諦めました いったいどこにいったんだろう

 

         

 

ディーン・R・クーンツ著「これほど昏い場所に」(ハーパーコリンズ・ジャパン)を読み終わりました ディーン・R・クーンツは1945年生まれの米国の作家です。60年代後半からSFを中心とした作品を書き、70年代には心理サスペンス&ホラーに転じました 発表される作品は例外なく「ニューヨーク・タイムズ  ベストセラー・リスト」に載り、最も売れている超ベストセラー作家の一人となっています

彼の本は朝日文庫から出ている「ベストセラー小説の書き方」を読んで興味を持ちました この「これほど昏(くら)い場所に」は、60~70年代の作品ではなく、2017年から発表を開始した新しい「ジェーン・ホーク・シリーズ」の第1作という位置づけにある作品です 主人公はジェーン・フォークというFBI捜査官の女性です

 

     

 

FBIに勤務するジェーンは、海兵隊員である夫ニックと5歳の息子トラヴィスとともに幸せに暮らしていた ある時、ニックが不可解な自殺を遂げた。ジェーンにはまったく思い当たる節はない ジェーンはFBIを休職し、密かにこの事件の背景にあるものを調べ始める。すると夫の死と時期を同じくして、理由の不明な奇妙な自殺が異常な率で増え続けていることが分かる ジェーンは同じような境遇にある犠牲者の家族を訪ね事情を訊くなどするが、彼女は得体の知れない者たちに付け狙われるようになる やがて、ある研究所と会員制秘密クラブの存在が浮上する。ジェーンは元陸軍特殊部隊隊員のドゥーガル・トラハーンを仲間に引き入れ、事件の首謀者、科学者でシュネック・テクノロジーの主宰者バーナード・シュネックの世界制覇の悪だくみを暴きだしていく

シュネックの企みとはナノテクの能インプラントを人間に注入し思い通りに操ることによって、自分の都合の良い世界を作り上げるというものです 訳者の松本剛史氏が「訳者あとがき」の中で、「クーンツは自らのサイトで『科学を下敷きにした、未来小説とまでいかなくとも、こんな恐ろしい事態が現実になってもおかしくはないような話』と書いている」と紹介していますが、科学が進歩すれば あり得ない話ではないような気もします

ところで、読書をしている時に いつも気になるのはクラシック音楽が出てくるかどうかです この作品では、ジェーンが法精神科医でFBIアカデミーの元顧問モーシェ・スタイニッツを訪ね、事件に関するアドヴァイスを受けるシーンで登場します

「彼のかけた音楽が、全室にあるスピーカーを通して家じゅうにあふれていた モーツアルトの《K.488》。クラリネットのために作られた、他のどんな作曲家にもまねのできない快活なテンポで展開されるコンチェルトが、ジェーンの人生に訪れた厳粛なこの瞬間に天翔けるような楽観的な気分をもたらし、いつまでもこれをつかんで手放さずにいたいと思わせた (中略)そのコンチェルトには、過去にも現代にも通じるさまざまな性格の反復進行が含まれていた。深いメランコリーに満ちた驚くほどゆるやかな旋律が、いまは流れてくる。ジェーンはモーシェの言葉には反応せず、目を閉じたまま、モーツアルトに運ばれるまま、どこよりも深い悲しみの芯へと旅をし、ニックを、亡くして久しい母親を想った そのパートが終わり、また恐れとは無縁のスリリングで楽観的な旋律が戻ってくると、ジェーンは心の底から感動しながらも、まだ眼は乾いているのを意識した。涙が出ないこと、眼をうるませないように自制できていることで、たとえこの先何が起ころうと、それがどれほど苛酷なものだろうと、自分にはその準備ができていると信じることができた

この文章を読むと、ジェーンがモーツアルトの「クラリネット協奏曲イ長調K.622」の第1楽章「アレグロ」を聴いていて(快活なテンポで展開されるコンチェルトが~家じゅうにあふれていた)、次いで第2楽章「アダージョ」を聴き(深いメランコリーに満ちた緩やかな旋律が、いまは流れてくる)、そして最後に第3楽章「アレグロ」を聴いている(スリリングで楽観的な旋律が戻ってくる)ことを鮮やかに想像することが出来ます クーンツもモーツアルティアンなのだろうか、と思ったりしました

600ページを超える超大作ですが、スリリングで一気読み必至です お薦めします

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