人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

「オペラの楽しみ~林美智子90分の『コジ』!」を聴く~アンサンブル・オペラの傑作をシンプルに!

2016年03月28日 07時29分54秒 | 日記

28日(月)。わが家に来てから547日目を迎え、上からのアングルで写されて不平不満を口にするモコタロです

 

          

               そういうのを 上から目線って言うんだぜ

 

  閑話休題  

 

昨日、晴海の第一生命ホールで「オペラの楽しみ 林美智子90分の『コジ』!」聴きました 『コジ』とは 言うまでもなくモーツアルトの歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」(女はみなこうしたもの)のことです 正味3時間かかるオペラを90分でどうやって歌い 演じるのか、興味深々で出かけました

出演はフィオルディリージ(姉)に澤畑恵美、ドラヴェッラ(妹)に林美智子、フェランド(ドラヴェッラのフィアンセ)に望月哲也、グリエルモ(フィオルディリージのフィアンセ)に黒田博、ドン・アルフォンソ(哲学者)に池田直樹、デスピーナ(姉妹の侍女)に鵜木絵里、影の実力者(ピアノ演奏)は河原忠之です

 

          

 

自席は5列24番、センターブロック右通路側です。会場は9割方埋まっている感じでしょうか ステージ後方の上部には巨大スクリーンが設置されており、右サイド後方にはグランドピアノが、そして舞台上に出場者の顔写真を背もたれに張り付けた6つの椅子が並べられています

「どういう風に始めるのだろう?」と思っていると、最初に哲学者ドン・アルフォンソ役の池田直樹(バス)とピアノの河原忠之が登場、池田アルフォンソが、これから2人の若者に仕掛ける賭け(恋人が浮気をするかしないか)について語ります バスによるその語り口は まるでミュージカルの男優そのものです セリフ(もちろん日本語)だけで聴衆の心を把握できるのは流石だと思います そして、河原のピアノ独奏によって”序曲”が華々しく演奏されますが、その間に このオペラの主役たちが登場して、それぞれ自分の顔写真が付けられた椅子に座り、再び去っていきます。男性陣も女性陣も黒を基調とする衣装で統一し、聴衆の関心を歌に集中させようとする意図が感じられます

次に2人の若者が登場し、アルフォンソが賭けを提案しますが、グリエルモ役の黒田博が「賭けだって?まあ、野球じゃないからいいか」と時事ネタを披露すると、聴衆がドッと湧きました プロ野球しっかりせい そして、「私のドラベッラだけはそうじゃない」の二重唱を、次いでアルフォンソとの三重唱で「女というものは」と「美しいセレナードを」を歌います その間、スクリーンには日本語の対訳が表示され 聴衆を助けます 

次に2人の姉妹が登場し「妹よ、見てごらん」の二重唱を歌いますが、澤畑恵美と林美智子のアンサンブルはとても美しいですね 歌手たちは、時にステージを降りて客席の通路を歩きながら歌うシーンもあり、私のすぐそばを美しい澤畑恵美さんが美しいソプラノで歌いながら歩いて行ったときはドキがムネムネ、もとい、胸がドキドキしました 通路側席は時にこういうメリットもあるのでやめられません

そして、ドン・アルフォンソが軍服姿の2人の若者を庭園に招き入れます。突然の別れに嘆き悲しむ姉妹、神妙に戦争に赴く芝居をする2人の若者、賭けの仕掛け人ドン・アルフォンソによって別れの五重唱が歌われます。5人はそれぞれの椅子を小道具として巧みに使いまわしながらアリアを歌います アンサンブル・オペラの真骨頂です

ここで、いきなりピアノを弾いていた河原が白い横断幕を持って舞台前方に出て来ます 横断幕を見ると「それから88分09秒経過」と書かれています。聴衆が「どういう意味だ?」と訝っていると、河原が「は・や・お・く・り」と”解説”してピアノに戻ります。聴衆にバカ受けです

そしてドン・アルフォンソと2人の姉妹は2人の若者の航海の無事を祈り「さわやかに風よ吹け」の三重唱を歌います これもアンサンブルの魅力溢れる三重唱です

ここで、ドン・アルフォンソは姉妹の女中デスピーナ(鵜木絵里)を仲間に引き入れるのですが、このデスピーナが素晴らしい 鵜木絵里という人は、新国立オペラでお馴染みのソプラノですが、この役のようなコケティッシュな役をやらせたら右に出る者はいないほど役に”はまって”います 歌も素晴らしいし、演技も最高です

ここで、2人の若者は異国人に変装して姉妹の前に現れることになるのですが、私が興味を持ったのは二人の若者がどんな格好に変装して登場してくるかということです。再登場した2人を見て「なるほどね」と思いました 二人ともグラサン(サングラス)をかけて、黒田はワイシャツ姿、望月はベスト姿、つまり上着を脱いだだけの恰好なのです 「いかにお金をかけないことに命をかけるか」というプロデューサーの意気込みが伝わってきます まさに「シンプル・イズ・ベスト」。望月には「ベスト・ドレッサー賞」を授賞しましょうか

第1幕は男女2組とドン・アルフォンソ、医者に扮したデスピーナの六重唱による大混乱の中で幕を閉じます。モーツアルトのオペラは、「フィガロの結婚」にしても この「コジ・ファン・トゥッテ」にしても、第1幕のフィナーレは登場人物を総動員して大アンサンブルで終わりますね。この高揚感が堪りません

20分の休憩後は第2幕です。この幕でも二重唱、三重唱、三重唱、六重唱が歌われ、このオペラが「アンサンブル・オペラ」の理想形であることが証明されます

 

          

 

カーテンコールは全員がステージに並びましたが、歌手の一人一人に大きな拍手が寄せられました。澤畑恵美、林美智子の二人による二重唱はとても素晴らしかった さらに、林美智子は ソロのアリアをカットし 重唱のみによる90分公演のプロデューサーとして尽力した人です。こういう才能があるとは思いませんでした。素晴らしいと思います 望月哲也と黒田博は素晴らしい歌声に加え、ユーモア溢れる演技が予想外で、とても好感が持てました 池田直樹は役者としてもやっていけるのではないかとさえ思えるほど演技力抜群でした 鵜木絵里は、今後デスピーナが当たり役になりますね。どこかの歌劇場から絶対声がかかると思います そして、影の実力者である河原忠之は 只者ではありません。日本の歌手たちから引っ張りだこのピアニストであり、新国立劇場オペラ研修所の音楽主任講師も務め、2月には同研修所公演「フィガロの結婚」の指揮を担当しました

結論を言えば、今回の公演は「モーツアルトの歌劇はピアノ1台と歌手陣が揃っていれば、余計な舞台装置などいらないことを証明して見せた」ということです。私は今年に入ってから昨日まで39回コンサートを聴いてきましたが、最も印象に残るコンサートの一つだと言っても良いでしょう これ程レベルが高く、楽しく、しかも安い(一般4,000円)公演は他に望むことが困難です 私は余程のことがない限りアンケートには協力しないのですが、今回はどうしても書かずにはいられず、「次は『フィガロの結婚』を是非」と書いて提出しておきました 

この公演は第一生命ホールの「ライフサイクルコンサート」という位置づけですが、もっともっと今回のような素晴らしい企画を打ち出してほしいと思います。オペラは楽しい モーツアルト最高

 

          

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