19日(月)。わが家に来てから114日目を迎えた神経過敏なモコタロです
耳の後ろの「取扱注意」って、ぼくのこと?
閑話休題
昨日、初台の新国立劇場でワーグナーの歌劇「さまよえるオランダ人」を観ました キャストは、オランダ人にトーマス・ヨハネス・マイヤー、ダーラントにラファウ・シヴェク、ゼンタにリカルダ・メルベート、エリックにダニエル・キルヒ、マリーに竹本節子、舵手に望月哲也ほか、指揮は新国立劇場オペラ芸術監督・飯守泰次郎、管弦楽は東京交響楽団、合唱は新国立劇場合唱団、演出はマティアス・フォン・シュテークマンです
シュテークマンの演出で「オランダ人」を観るのは2007年2月25日、2012年3月8日に次いで、今回が3回目です
物語は、永遠に海をさまよう呪われたオランダ人船長を乙女ゼンタの愛と自己犠牲が救済するというもので、ワーグナーのテーマである「愛による救済」が描かれています
「悪魔の呪いを受けて永遠に海をさまようオランダ人船長だが、7年に一度だけ上陸が許され、永遠の愛を捧げる乙女に会ったとき、呪いから解かれる運命にあった ある日、ノルウェー船船長のダーラントと出会い、娘のゼンタに求婚する。運命的な出会いを直感したゼンタは、永遠の貞節をオランダ人に誓う
ゼンタを愛するエリックは彼女の心変わりを責める。それを知ったオランダ人は絶望して出航を命じる。ゼンタは彼を追って海に身を投じる。彼女の永遠の愛によってオランダ人は呪いから解かれる
」
オーケストラ・ピットには通常のオペラよりも多くの楽員がスタンバイしている様子。ワーグナーですから 拍手の中、飯守泰治次郎氏が登場、序曲の演奏に入ります
物語を凝縮した音楽が流れる間、幕は閉じられています。演出家によっては、スクリーンに海の波を映し出すような演出もあるでしょうが、シュテークマンは、そうしたことはせず、じっくりと音楽に集中してほしいという演出に徹します
オーケストラの力強い演奏で序曲が閉じられたので、私は拍手をしましたが、この時拍手をしたのはほんの5~6人程度だったようです 指揮者によっては、序曲から第1幕への間を置かないで演奏する人もいますが、飯守氏の場合は一旦タクトを下ろし、間を空けました
渾身の演奏に対して拍手をしたのですが、他の聴衆の皆さんはその時、拍手をすべきではないと判断したようです。果たして私はマナー違反をやってしまったのでしょうか?自分自身はそういう意識は全くありませんが
このオペラでは4人の歌手が揃っていないと成功しません。オランダ人、ゼンタ、その父ダーラント、エリックです
まずオランダ人のトーマス・ヨハネス・マイヤーですが、ドイツ出身のバリトンです。新国立劇場ではリヒャルト・シュトラウスの「アラベッラ」でマンドリカを歌った歌手です。呪われた運命を負ったオランダ人をほの暗いバリトンで見事に歌い演じました
ゼンタを歌ったリカルダ・メルベートはドイツ出身のソプラノです。新国立劇場ではワーグナーの「タンホイザー」のエリーザベト、「ローエングリン」のエルザを歌っています このオペラのテーマは女性の愛の犠牲による救済ですが、”強い意志を持った女性”エルザを力強く演じ歌いました
第2幕で歌われた「ゼンタのバラード」は力強く、ほれぼれするような歌声でした
ダーラントを歌ったラファウ・シヴェクはポーランド出身のバスです。新国立劇場ではヴェルディの「ドン・カルロ」のフィリッポ二世を歌いました。深みのある歌声で、時にコミカルな味も出していました
エリックを歌ったダニエル・キルヒはドイツ出身のテノールです。新国立劇場は初登場です。ゼンタをオランダ人に奪われる惨めな役割ですが、何とかエルザを引き止めようとする必死の歌と演技が光っていました
このオペラの特徴の一つは合唱です。新国立劇場合唱団の実力発揮といったところで、合唱も演技も素晴らしいものがあります カーテンコールでの彼らの丁重な扱いは、その実力に合わせたものでした。また、飯守泰次郎のタクトに応えて厚みのある見事な演奏を展開した東京交響楽団の皆さんにも大きな拍手を送ります
演出で気が付いたことが一つあります。それは第2幕冒頭のシーンです。ダーラントの家の広間で港の娘たちが糸紡ぎの仕事に精を出して「糸紡ぎの合唱」を歌うのですが、その糸紡ぎ機の形がオランダ人の乗ってきた船の舵にダブって見えるのです つまり、舵はオランダ人の象徴であり、糸紡ぎ機はゼンタの象徴である、と考えられるのです
また、シュテークマンの演出では光を有効に使っています。総合的に見て何度見ても新しい発見のある素晴らしい演出です
も一度、閑話休題
という訳で、昨日聴いたのは、午後の公演の予習のために聴いたオットー・クレンペラー指揮ニューフィルハーモニア管弦楽団によるワーグナーの「さまよえるオランダ人」全曲CDです。歌手陣はオランダ人にテオ・アダム、ゼンタにア二ア・シーリア、ダーラントにマルッティ・タルヴェラ他です。序曲を聴いただけでも狂気迫る迫力に圧倒されます
ところで、新国立オペラの公演プログラムの「作品ノート」に次のような記述がありました
「クレンペラー指揮ニュー・フィルハーモニア管弦楽団の全曲盤もドレスデン初演版とされるが、序曲とオペラの終結部は根拠不明の改変が行われている」
これは大変ということで、家に帰ってCDの、取りあえず序曲を聴いてみました
そのフィナーレ・・・・ムム、なんか音が多くないか?? これは、クレンペラーが勝手にフィナーレを引き伸ばしたのでは・・・・・・・クレンペラーは自ら作曲もするので、作曲者の立場からワーグナーのオリジナル作品に手を加えたのではないか、と思いました
しかし、クレンペラー版のCDジャケットに載っている渡辺護氏の解説を読むと、
「ワーグナーは後になってからも、この作品に1846年、1852年、1860年に修正の手を加えた。殊に『トリスタン』の総譜が完了してから後、序曲の終わりなどに変更を加え、音楽の上でも救済のイデーを一層強調したのである。また部分的には楽器法も変え、金管楽器の音をやわらげた」
と書かれています。つまり、これにしたがえば、クレンペラーは3回の修正版のどれかを採用したのではないか、と思えるのです。これについては、ワーグナーに詳しい方のコメントを是非お願いしたいと思います
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます