27日(日)わが家に来てから今日で3148日目を迎え、2024年米大統領選で返り咲きを狙う共和党のトランプ前大統領の陣営は24日、20年大統領選への介入事件で起訴され、同日被告人として撮影された前大統領の「マグショット」(逮捕時などの顔写真)をプリントしたTシャツなどのグッズを発売したが、専門家は写真を使用する権利は撮影した当局側にあり、被写体のトランプ氏にはないと指摘している というニュースを見て感想を述べるモコタロです
転んでもただでは起きない男 違法でも”やったもん勝ち”というトランプ商魂 健在!
昨日、東京芸術劇場コンサートホールで読響サマーフェスティバル2023「三大交響曲」を聴きました プログラムは①シューベルト「交響曲第7番 ロ短調 D759 ”未完成”」、②ベートーヴェン「交響曲第5番 ハ短調 作品67 ”運命”」、③ドヴォルザーク「交響曲第9番 ホ短調 作品95 ”新世界から”」です 指揮は坂入健司郎です
”ベタな名曲路線”と言われようが、私が毎年この「三大交響曲」公演を聴くのは、①”名曲中の名曲”の3作品を登り坂にある若手の指揮者により1日で聴けること、②シューベルトの「未完成交響曲」を生で聴く滅多にないチャンスだからです
指揮をとる坂入健司郎は1988年神奈川県生まれ。慶應義塾大学卒。指揮法を井上道義、小林研一郎らに師事。2008年から東京ユヴェントス・フィルを主宰。22年1月にマーラー「交響曲第2番」を指揮し好評を博す。全国各地のオーケストに客演し指揮活動を行う。読響とは3日前の8月23日に「三大協奏曲」で共演した
自席は1階M列13番、センターブロック左通路側です。会場は文字通り満席です 読響の「三大交響曲」「三大協奏曲」という”大衆路線”は、親会社の一つ 読売新聞社のDNAを受け継いでいるかのように、毎年大当たりの様相を呈しています
オケは12型で、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという いつもの読響の並び コンマスは林悠介、隣は元・読響コンマスで現・新日本フィル特任コンマスの伝田正秀です
1曲目はシューベルト「交響曲第7番 ロ短調 D759 ”未完成”」です この曲はフランツ・シューベルト(1797-1828)が1822年に作曲、第3楽章は9小節まで完成、第4楽章はスコアなしということから「未完成交響曲」と呼ばれています 楽譜は作曲者の死後、1865年に発見され、初演されました 第1楽章「アレグロ・モデラート」、第2楽章「アンダンテ」の2楽章から成ります
坂入の指揮で第1楽章に入ります 低弦による重心の低い音楽に導かれ、金子亜未のオーボエと金子平のクラリネットがメランコリックなメロディーを奏でます この演奏が素晴らしい 松坂隼による豊かなホルンの響きが会場を満たします そして、弦楽器が繊細に、時に大胆に演奏されます 第2楽章では倉田優のフルート、金子亜未のオーボエによる息の長い旋律が心に沁みます そして、弦楽セクションの弱音によるアンサンブルが美しく響きます 2つの楽章を聴いて気が付いたのは、ティンパニの岡田全弘は第1楽章を固いマレットを使用し、メリハリのある演奏をしていたのに対し、第2楽章ではソフトなマレットを使用し、重みのある音を出していたことです 坂入の指揮はテンポ設定も適切で説得力を持ちました
2曲目はベートーヴェン「交響曲第5番 ハ短調 作品67 ”運命”」です この曲はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)が1807年から翌08年にかけて作曲、1808年12月22日にアン・デア・ウィーン劇場で「交響曲第6番”田園”」他と共に初演されました 第1楽章「アレグロ・コン・ブリオ」、第2楽章「アンダンテ・コン・モート」、第3楽章「アレグロ」、第4楽章「アレグロ」の4楽章から成ります
他の曲はともかく、私はこの曲に関しては、指揮者が舞台袖から現れ指揮台に上るまでにも注目しています この日、坂入は1曲目のシューベルトとは異なり、下向き加減で黙して指揮台に向かい、客席に浅く一礼して指揮台に上りました 合格です これが、客席の方を向いて笑顔を振りまきながら指揮台に向かったら失格です ベートーヴェンの「第5番」を指揮する心構えが出来ていないからです 私がこのように思うようになったのは、数年前にジョナサン・ノットが東京交響楽団を指揮して「第5交響曲」を指揮する姿を見てからです ノットは、まるで怒ったような顔つきで登場し、客席の方を見向きもせずに指揮台に上り、ものすごい勢いでタクトを振り降ろしました この時の演奏は、私が今まで聴いた「第5番」のベスト1です ノットには「命を懸けてこの曲に対峙する覚悟があった」とさえ思います
坂入の指揮で第1楽章に入ります 比較的速めの快速テンポで演奏が進行します この曲でもホルン、クラリネット、オーボエが素晴らしい 第2楽章で坂入は、意識してテンポを動かし 緩急を付けて演奏しました 改めて本楽章の指示を見ると「コン・モート」つまり「動きをつけて」となっており、坂入はベートーヴェンの指示通りに指揮していることが分かります 決して”受け狙い”で指揮をしているわけではないのです 第3楽章では、やはりホルンの健闘が目立ちます 第3楽章から切れ目なく第4楽章へ移るシーンでは弦楽器群の渾身の演奏が光りました そして咆哮する金管・木管楽器、炸裂するティンパニ、アグレッシブな演奏を展開する弦楽器により、苦悩を乗り越えた勝利の音楽が高らかに歌い上げられます フィナーレにおけるティンパニのトドメの一押しが強烈に響きました
プログラム後半はドヴォルザーク「交響曲第9番 ホ短調 作品95 ”新世界から”」です この曲はアントニン・ドヴォルザーク(1841-1904)が米ニューヨークの私立ナショナル音楽院の院長に招かれ、アメリカ滞在中の1893年に作曲、同年ニューヨークで初演されました 第1楽章「アダージョ ~ アレグロ・モルト」、第2楽章「ラルゴ」、第3楽章「スケルツォ:モルト・ヴィヴァーチェ」、第4楽章「アレグロ・コン・フォーコ」の4楽章から成ります ある調査によると、現在、世界中のコンサートホールで演奏されている交響曲の中で最も多く演奏されているのはこの「新世界交響曲」だそうです
オケは14型に拡大し、坂入の指揮で第1楽章に入ります
静かな序奏部を経て 主部に移りますが、この曲でもフルート、オーボエといった木管楽器が素晴らしい 坂入は推進力に満ちた演奏を展開します 第2楽章は日本では「家路」という名前で知られているメロディーが北村貴子のイングリッシュホルンによってしみじみと奏でられ、郷愁を誘います この曲におけるイングリッシュホルンは天下無敵です 他の楽器がどんなに頑張って素晴らしい演奏をしても敵いません すべての栄光を一人でかっさらっていきます カーテンコールでは真っ先に立たされて聴衆の拍手を浴びます この楽章の終結部では、弦楽セクションの1列目の奏者による弱音のアンサンブルが美しく響きました 第3楽章は一転、弦楽器を中心にエネルギッシュな演奏が展開します そして、第4楽章冒頭では、まるで蒸気機関車が発進し徐々にスピードを上げていくかのようなエネルギッシュな音楽が展開します ドヴォルザークは鉄道オタクとして知られており、ニューヨークに赴任した際も、駅舎まで機関車を見に行ったということです その後、オーケストラ総力を挙げてのアグレッシブな演奏で壮大なクライマックスを築き上げますが、そのままイケイケドンドンで終わらないのがこの曲の良いところです 最後の一音が消え入るようにして曲を閉じますが、それは生まれ故郷チェコに対するノスタルジーの象徴かもしれません
文句なしの素晴らしい演奏でした
しかし、残念なことに指揮者のタクトが降り切らないうちに、フライング拍手が起こりました 正直言って早過ぎです 指揮者も納得していないでしょう フライングかそうでないかの判断は難しいと思いますが、一つの判断基準は「最終楽章がどのように終わるか」ということです ベートーヴェン「交響曲第5番」やチャイコフスキー「交響曲第4番」のように威勢よく終わる曲であれば、最後の音が鳴ったら、別に指揮者のタクトが降り切らないうちに拍手をしても不自然ではない、むしろ自然だと思います 一方、ドヴォルザークの「新世界交響曲」やチャイコフスキー「悲愴交響曲」のように静かに消え入るように終わる曲の場合は、指揮者のタクトが降りるまで余韻を楽しむのが常識というものです
ほとんどのコンサート会場で、今なお 演奏前に「指揮者のタクトが降ろされるまで、拍手やブラボーはお控えください」などという”大きなお世話”的なアナウンスが流されています はっきり言って、私はこの手のアナウンスにウンザリしています しかし、曲がどう終わるのかもわきまえずに「誰よりも早く」と争うように拍手をするせっかちな聴衆がいる限り、この手のアナウンスはこれからも続くのでしょう コンサートは一人で聴いているわけではありません お互いに最低限のルールは守って最後まで楽しみたいものです