人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

早川千絵監督「PLAN75」を観る ~ 近い将来の日本で「75歳で生死を選択できる制度」に応募した78歳女性の最後の選択

2022年07月01日 07時07分16秒 | 日記

7月1日(金)。今日から7月。すでに猛暑の中、2022年も後半戦に突入です 取り合えず、熱中症に気を付けて過ごしましょう

ということで、わが家に来てから今日で2728日目を迎え、ロシア大統領府による29日の発表によると、プーチン大統領はウクライナに対する「特殊軍事作戦」に関し、「全てプラン通りに進んでいる。何らかの期限の下に、せかせるのは正しくない」と語り、東部ドンバス地方の住民「保護」という目的達成まで侵略をやめない考えを改めて示した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     侵略開始から4か月経って作戦が完了しないのも プラン通り? 嘘つきプーチン!

 

         

 

昨日、夕食に「サーロインステーキ」「生野菜サラダ」「卵スープ」を作りました    さすがにステーキ250グラムは食べ応えがあります

 

     

 

         

 

昨日、新宿ピカデリーで早川千絵監督による2022年製作日本・フランス・フィリピン・カタール合作映画「PLAN75」(112分)を観ました

物語の舞台は少子高齢化が一層進んだ近い将来の日本 満75歳から生死の選択権を与える制度「PLAN75」が国会で可決・施行され、当初は様々な議論を呼んだものの、超高齢化社会の問題解決策として世間に受け入れられた 夫と死別し 独り静かに暮らす78歳の角谷ミチ(倍賞千恵子)は、ホテルの客室清掃員として働いていたが、ある日突然、高齢を理由に解雇されてしまう 住む場所も失いそうになった彼女は「PLAN75」の申請を検討し始める 一方、市役所の「PLAN75」申請窓口で働く岡部ヒロム(磯村勇斗)は、他に身寄りのない叔父がPLAN75に応募してきて驚き戸惑う また、死を選んだお年寄りにその日が来るまでサポートするコールセンタースタッフの成宮瑤子(河合優実)は、ミチのたっての願いで直接会い、情が移ってしまう さらに、フィリピンから単身来日した介護職のマリア(ステファニー・アリアン)は幼い娘の手術費用を稼ぐため、より高給の「PLAN75」に転職し、制度利用者の遺品処理など、複雑な思いを抱えながら作業に勤しむ毎日を送っている そして、三者三様に「PLAN75」の在り方に疑問を抱いていく

 

     

 

本作は早川千絵監督が、是枝裕和監督が総合監修を務めたオムニバス映画「十年  Ten  Years  Japan」の一編として発表した短編「PLAN75」を自ら長編化した作品で、初長編監督作にして第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品し、カメラドールのスペシャルメンション(次点)に選ばれました

早川監督がこの映画を撮ろうと思ったのは、2000年代半ば以降、日本において「自己責任」という言葉が幅をきかせるようになって社会的弱者を叩く社会風潮が徐々に広まり、2016年には障害者施設殺傷事件が起こったという時代背景があります 「PLAN75」とは、使い道自由な10万円を支給するから死んでくれという国家が認めた安楽死のようなものです この映画を観ると、「こんな制度が許されて良いわけがない。ともに生きようと励ますのが国家の役割のはず。こんな制度が出来るような社会にしてはいけない」という早川監督の危機感のようなものが静かに伝わってきます そんな中、ミチが最後に下した決断に心が救われます

主人公のミチを演じた倍賞千恵子の自然な演技力が素晴らしい 台詞は極端なほど少なく、顔の表情や最小限の動作だけで78歳の老女の大きな不安と小さな期待を体現しています

映画を観終わっても、しばらく分からなかったのは冒頭のシーンです 一人の若者が猟銃を持って建物の中を歩いています。そして座り込んで銃を頭に当て引き金を引きます 彼はなぜ自死しなければならなかったのか、その理由が分からなかったのです しかし、一晩寝ながら考えてやっと今朝、理解できました 「PLAN75」のシステムでは応募した老人たちの葬儀・火葬は個別にやると費用がかかるが合同でやると無料となっています 市役所職員のヒロムは、合同で焼却した老人たちの骨や灰が産廃業者に引き取られていくことを知り、そんな非人間的な制度に怒りと絶望を感じたのです そこで彼は、叔父の死体を施設から運び出し自分で葬儀をすることにし、その後、施設に忍び込んで建物を破壊し尽くし、自死したのです 彼が破壊したのは「PLAN75」はユートピアではなくディストピアだと判断したからです

ところで、その冒頭のシーンでバックに流れていたのはモーツアルト風のピアノ曲でした。残念ながら曲名は分かりません あるいは誰かがモーツアルトの曲をアレンジして作曲したのかもしれません 緊迫したシーンで流れる 幸福そのものの音楽は アンビバレントを狙ったものです

2025年には国民の5人に1人が75歳以上になると言われていますが、それはたった3年後です ちなみにこの日の観衆のうち5人に3人は75歳以上だったのではないかと思います 曲がりなりにも家族が近くにいる高齢者はまだ良いでしょう。しかし、ミチのように家族も親族もない独居老人は他人事では済まされません 現実には「PLAN75」はありませんが、どう生きるのか、われわれは自分自身で決めなければならないリアルの世界に生きています

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