17日(日)。わが家に来てから今日で2744日目を迎え、トランプ前米大統領が、14日にニューヨークの自宅で死亡した元妻イバナ・トランプさんの訃報を受けて支援者らに送信したメールに、寄付を呼び掛けるボタンが付いていたことが物議を醸している というニュースを見て感想を述べるモコタロです
秋に実施される大統領選中間選挙に向けた寄付金募集は明らか どこまで卑しい男か
昨夕、サントリーホールで東京交響楽団の第701回定期演奏会を聴きました プログラムは①ラヴェル「海原の小舟」(管弦楽版)、ベルク「7つの初期の歌」、マーラー「交響曲第5番 嬰ハ短調」です 演奏は②のソプラノ独唱=ユリア・クライター、指揮=ジョナサン・ノットです
ジョナサン・ノットのマーラーということでか、会場は文字通り満席です いつもこうだと楽団側も経営的に助かるでしょう
オケの配置は左奥にコントラバス、前に左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対抗配置。コンマスは水谷晃、その隣は小林壱成というダブル・コンマス態勢を敷きます
1曲目はラヴェル「海原の小舟」(管弦楽版)です この曲はモーリス・ラヴェル(1875ー1937)が1904年から翌05年にかけて作曲したピアノ曲「鏡」の1曲「海原の小舟」を、1906年に管弦楽用に編曲した作品です
ノットの指揮で演奏に入ります。まるで波間にたゆたう小舟を思わせるような曲想で、ドビュッシーの「海」を思い浮かべます 「管弦楽の魔術師」の異名をとるラヴェルの色彩感豊かな音楽が独特の浮遊感を持って展開します
2曲目はベルク「7つの初期の歌」です この曲はアルバン・ベルク(1885ー1935)が1905年から08年にかけてピアノ伴奏用の曲として作曲、20年後の1928年にウィーンでオーケストラ伴奏に編曲した版により初演されました 第1曲「夜」、第2曲「葦の歌」、第3曲「ナイチンゲール」、第4曲「夢の冠を載せられ」、第5曲「部屋で」、第6曲「愛の賛歌」、第7曲「夏の日」の全7曲から成ります
ソプラノ独唱のユリア・クライターはドイツ出身で、2004年にオペラ・バスティーユでモーツアルト「魔笛」パミーナ役でデビューし、アーノンクール、ミンコフスキ、アバド、ムーティなどと共演しています
深緑系のシックな衣装のユリア・クライターが登場し、ノットの指揮で演奏に入ります 全曲を通して聴いた印象は、声そのものが美しく、自然なビブラートによるリリカルな歌唱で、説得力がありました 特に印象に残ったのは第3曲「ナイチンゲール」です リヒャルト・シュトラウスに代表される後期ロマン派の香りが色濃く反映した曲で、彼女にピッタリだと思いました リートでもオペラでもよいから彼女の歌うリヒャルト・シュトラウスの曲を聴いてみたいと思いました
プログラム後半はマーラー「交響曲第5番 嬰ハ短調」です この曲はグスタフ・マーラー(1860ー1911)が1901年から翌02年にかけて作曲、1904年10月18日にケルンでマーラーの指揮で初演されました 第1楽章「葬送行進曲:正確な速さで、厳粛に、葬列のように」、第2楽章「嵐のような荒々しい動きをもって。最大の激烈さをもって」、第3楽章「スケルツォ:力強く、速すぎずに」、第4楽章「アダージェット:非常に遅く」、第5楽章「ロンド・フィナーレ:アレグロ、楽しげに」の5楽章から成ります
この作品は当初、4楽章形式による交響曲として構想されましたが、アルマ・シンドラーとの出会いにより5楽章に拡大したという経緯があります マーラーはアルマと出会った1901年11月のわずか1か月後の12月8日に、彼女と秘密裏に婚約を交わし、当時作曲中だった「第5交響曲」の中にアルマへの愛の告白を組み入れたのです それが第4楽章「アダージェット」です マーラーは手紙の代わりに「アダージェット」の楽譜をアルマに送り、アルマはその意図を理解したのです アルマも作曲家でしたから、独特の感性でマーラーの想いを受け止めることが出来たのでしょう
ノットが登場し、第1楽章に入ります 冒頭はトランペット独奏によるファンファーレですが、残念ながら不調でした この不調は第2楽章以降の演奏にも尾を引きました 中盤ではクラリネットとオーボエがベルアップ奏法を見せました ノットの指揮は激烈です。速いテンポでグイグイ進めます 間断なく入った第2楽章は驚くべき速さで荒々しく演奏されます何かに対して怒りをぶつけているかのようです 第3楽章はさながらホルン協奏曲のようです 冒頭から上間善之の独奏ホルンが冴え渡ります また、ホルンセクションのアンサンブルが見事です ホルンセクションは終盤でベルアップ奏法を見せました 第4楽章は弦楽セクションとハープのコラボレーションにより夢幻的でロマンティックな音楽が繰り広げられます この音楽を聴くと、ヴィスコンティ監督の「ベニスに死す」を思い出します ホルンの開始で演奏される第5楽章は、喜びの爆発です 結婚直後のマーラーの幸福の絶頂とも言うべき華々しい音楽です 咆哮する金管・木管楽器、軽快に打ち込まれる打楽器、渾身の演奏を展開する弦楽器 ノットのアグレッシブな指揮のもと、オーケストラ総力を挙げての熱演でフィナーレを飾ります
この日ノットは、第1楽章と第2楽章を続けて、第4楽章と第5楽章を続けて演奏しました それはこの曲が第1楽章と第2楽章を「第1部」、第3楽章を「第2部」、第4楽章と第5楽章を「第3部」とする3部構成を取っているからです ノットは間の取り方でマーラーの意図を反映したと言えます
満場の拍手がノットと東響の面々に送られ、カーテンコールが繰り返されました ノットは2014年度から東響第3代音楽監督を務めていますが、もはや東響は手中にあります
終演後、楽団員が捌けてからもノットがステージに呼び戻されていました ノットの人気は凄いものがあるな、とあらためて思いました