24日(月).わが家に来てから今日で1027日目を迎え,「よこはま,たそがれ」「瀬戸の花嫁」「カナダからの手紙」など多くのヒット曲を生んだ作曲家で歌手の平尾昌晃さんが亡くなったというニュースを見て感想を述べるモコタロです
わが家のご主人もカラオケでさんざんお世話になりました ご冥福をお祈りします
昨日,ミューザ川崎で「パイプオルガンとオーケストラの饗宴」を聴きました これは「フェスタサマーミューザ」特別参加公演です.プログラムは①与えられたテーマによるエスケシュのオルガン即興演奏,②シューベルト「交響曲第7番ロ短調”未完成”」,③サン=サーンス「チェロ協奏曲第1番イ短調」,④エスケシュ「オルガン協奏曲第3番『時の4つの顔』(世界初演)」です
③のチェロ独奏はルドヴィート・カンタ,④のオルガン独奏はティエリー・エスケシュ,管弦楽=オーケストラ・アンサンブル金沢,指揮=井上道義です
「オーケストラ・アンサンブル金沢」は1988年,岩城宏之が創設音楽監督を務め,外国人を含む40名からなる日本最初のプロの室内オーケストラとして石川県と金沢市が設立,2007年から井上道義が音楽監督を務めています
ティエリー・エスケシュはフランスの作曲家,オルガニストで,現在パリ音楽院教授を務めています 1991年ストラスブール国際コンクールで第1位を獲得,1997年から巨匠デュリュフレの後任としてパリのサンテティエンヌ・デュ・モン教会の首席オルガニストを務めています.作曲家としては1989年に第1回アンドレ・ジョリベ賞を受賞しています
自席は1階C7列18番,センターブロック左から5番目,ほぼ真ん中の席です
演奏に先立って,井上道義氏がマイクを持ってステージに登場,1曲目にエスケシュが演奏するパイプオルガンの「テーマ」を,手元のピアニカで演奏しました それはこの日演奏されるシューベルトの「未完成」冒頭のテーマと伊福部昭の「ゴジラ」のテーマを組み合わせたものでした
2階正面のパイプオルガンにスタンバイしたエスケシュは,与えられたテーマに基づいて即興演奏を展開しました 全体的には「未完成」のテーマを低音部で,「ゴジラ」のテーマを高音部で演奏し,音の大伽藍を築き上げました
オケの面々が入場し配置に着きます.オヤッと思ったのは,通常のオケの配置とはまったく違ったからです ステージ左サイドにヴァイオリン・セクションが,中央にチェロとヴィオラ,その後方にコントラバスが,右サイドに木管・金管・打楽器がスタンバイします
こういう配置は初めて見ました
あとで井上氏が解説したところによると,総勢40人の室内オケで,コントラバスが2本しかいないので,センターに持ってきて前を向いて演奏しないと低音部の音が十分に客席に届かない,とのことでした
演奏するのはシューベルト「交響曲第7番ロ短調”未完成”」です シューベルトは第8番「ザ・グレイト」まで8曲の交響曲を書きましたが,いずれも誰かに委嘱されたわけでも公開の演奏会で演奏することを前提として書いたわけでもありません
この曲は1822年に第1楽章と第2楽章が作曲されたものの,第3楽章は中断され未完のまま置かれました
楽譜は作曲者の死後の1865年(43年後
)に発見され,指揮者ヨハン・ヘルベルクにより初演されました
第1楽章「アレグロ・モデラート」が低弦の動機に乗せて演奏されるオーボエとクラリネットの第1主題によって開始されます このオーボエとクラリネットが素晴らしかった
第2楽章「アンダンテ・コン・モート」ではホルンとファゴットが活躍しますが,これもまた素晴らしい演奏をします
弦楽器は透明感があります.落ち着いた演奏でした
ステージの模様替えが行われ,オケは左から第1ヴァイオリン,ヴォイラ,チェロ,第2ヴァイオリン,その後ろにコントラバスという対向配置をとります 指揮台の左にチェロの演奏台が設置され,サン=サーンス「チェロ協奏曲第1番イ短調」の演奏に備えます
このオケの首席チェリスト,ルドヴィート・カンタが登場し配置に着きます.ルドヴィート・カンタはスロヴァキア生まれ,1977年のハラデッツ・オバヴァ・ベートーヴェンコンクール第1位,80年プラハの春国際音楽コンクールで第2位入賞などの経歴を持っています
この曲は第1楽章「アレグロ・ノン・トロッポ~アニマート」,第2楽章「アレグレット・コン・モート」,第3楽章「テンポ・プリモ~少し速度を抑えて~ピウ・アレグロ~モルト・アレグロ」の3つの楽章から成りますが,切れ目なく演奏されます
井上の合図で第1楽章が速めのテンポで開始されます 独奏チェロは相当技巧を要する曲想のようですが,カンタは難なく弾き切ります
第2楽章は一転,ワルツのような穏やかな音楽が展開します
チェロの演奏はロマンに満ちています.第3楽章は第1楽章のテーマが回帰します.そして喜びに満ちたフィナーレに突入します
会場いっぱいの拍手とブラボーにカンタは,バッハの「無伴奏チェロ組曲第2番」から「サラバンド」を演奏,再び大きな拍手を浴びました
なお,この演奏に先立って,ミッシャ・マイスキーのチェロ,オルフェウス室内管弦楽団のCD(1997年録音)で予習しておきました
休憩後は,エスケシュ「オルガン協奏曲第3番『時の4つの顔』」です この作品は2016年度オーケストラ・アンサンブル金沢委嘱作品で,日本初演です
エスケシュによるプログラム・ノートによると,この曲は4つの絵画(タブロー)から構成されています 第1は「起源」,第2は「仮面」,第3は「ロマンス」,第4は「夜の後に」となっています
エスケシュがパイプオルガン席に着き,井上の指揮で曲が開始されます 最初の「起源」は,人類誕生の起源とでもいう雰囲気が感じられ,なるほどと思ったのですが,第2曲以降はタブローのタイトルを思い浮かべるまでに至りませんでした
ただ,最後の「夜の後に」は,それまでの鬱積した気分を一掃するかのような明るいリズムが中心の音楽になり,音そのものを楽しむことが出来ました
ところで,プログラム冊子の井上道義氏のプロフィールの最後に「自宅にアヒルを飼っていた」という記述があります これについては,以前 当ブログで「井上道義氏のニックネームはミッキーだが,ディズニーでのミッキーの相棒はドナルド・ダックだから,相棒のダック(アヒル)を飼っていたのだろう」と書きました
これについては,どこからも反論が寄せられていないのでその通りなのではないかと思います.それにしても,公式プロフィールに「自宅にアヒルを飼っていた」と書くのは奇人・井上道義氏くらいしかいないでしょう