今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

未分解機 ? PEN-Fの巻

2023年08月08日 20時00分00秒 | ブログ

迷走台風の6号が居るのに7号も発生したようですね。7号の方が関東地方に影響するコースなのでこちら在住としては心配です。で、秋田のご常連さんからきれいなPEN-F #2882XX(1966年6月製)が来ました。流石に選択眼は確かで点検しても作動に何も問題はありません。未分解機で正常に作動をしている個体なのか?

内部の状態もきれいです。

 

 

しかし、アンダーカバーを外してみると・・なんだこのグリスは。リンケージやリターンミラー作動部などにべっとりと塗布されています。工場ではやりません。

 

カバー裏に大量に付着しています。

 

 

シボ革を剥がすと・・あっ、これは過去に分解されています。しかも、SSかそれに準じた修理です。再接着の接着剤で分かります。

 

シャッターユニットも分解を受けていますね。途中で修理を受けているので現在でも問題なく作動するのでしょう。ということは優秀な修理ということ?

 

では、洗浄をして組み立てて行きます。スプロケットはすでに樹脂製となっていてパーティングラインが見えますね。

 

駒数機構はFTとは設計が違っていてこのようになっています。

 

 

スプール軸受けの三脚座を取り付けます。

 

 

問題はブレーキです。ブレーキリングがスカスカで全く抵抗がありません。ブレーキが機能していないと言うこと。

 

拡大してみると、なにやら傷が多いです。ブレーキナットのスリ割りが壊れかかっていて緩み止めのポンチも多く打たれています。推理はこうです。この個体はブレーキのOリングが変質してブレーキが利きっぱなしの状態となり、するとシャッターが正常に作動しなくなったので修理に出した。リペアマンは恐らく変質したOリングを取り除いてそのままブレーキナットを締めてポンチを打った。ブレーキは利かなくても分からないということ。分解を試みましたがブレーキナットはポンチが強く打たれていて変形し、親の仇のように強く固着していて緩みません。使用中に緩まないようにと強く締めてポンチを打ったのでしょうけど、次に分解をする者のことは考えていないのでしょう。この個体のブレーキナットは真鍮製ですが、鉄製のものも存在するので強度について試行錯誤したようです。ここでも組立に厳しい米谷設計で構造的にブレーキナットが緩みやすい。困ったな、じゃ、ポンチを打って緩まないようにしよう。エンジンじゃないんだけどね。

画像のように製造時期の一部でチャージギヤが切削物のかさ歯歯車になっている個体があります。FTのプレスものとはコストが違います。

 

ブレーキの分解に成功。

 

 

変質して膨張したOリングをナイフで削り取られていました。これ、良く見る処置ですが修理のスタンダードなのかな? 

 

実際の話し、ブレーキが利いているか利いていないかは瞬時に比較しなければ分からないというのが本当のところでしょう。今回の処置はオーナーさんが承知の上なのか単なるごまかし修理なのかは分かりません。と言っている間にブレーキを微調整して組み立ててしまい画像がありません。裏蓋に前回の修理歴が書かれていますね。

Fのプリズムは黒点腐食が出ますが、この頃になると品質が向上したのかきれいですよ。スクリーンのフレネル汚れは拭き上げではなく洗ってしまった方が良いです。

 

問題はこのレンズサイドカバーですが、すでに一度剥がされて再接着されているのでヨレヨレになっています。普通のカバーは厚さ0.15mm程度ですが、このカバーは箔のように薄く0.07mm程度しかありません。こんなの見た記憶がないです。すでに再接着をされていたのでオリジナルなんでしょうけどね。前回の剥離時にすでに端の出っ張り部が千切れているし・・

思わぬブレーキで時間が掛かりました。しかし、Oリングを削るのがスタンダードの修理法なのでしょうかね。私は独学なので業界のスタンダードは分かりません。確かにブレーキの再生は個々の個体の寸法に合わせてOリングを調整する必要があるので面倒な作業ではありますが。

次の作業に移って完成画像を撮っていないことに気が付きました。まぁ、ブレーキが利いていなくとも特に問題はないのであればOリング削りでも良いのかも知れませんけどね。私は拘ってあげたいと思うだけです。

 

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生存確認PEN-FTの巻

2023年08月05日 14時00分00秒 | ブログ

相変わらず危険な猛暑が続いていますが皆さん体調はよろしいでしょうか? 私のブログも「生存確認」のようになって来ました。この暑さの中で写真を撮ろうという方も少ないようで修理のご依頼も減っています。このカメラはPEN-FT #1916XX (1967年12月製造)と製造中期頃の個体ですが、いろいろな個所が変更前の仕様なので一般的には安定性に難があることが多いですが、この個体は外観も使用感も少なく作動も問題はありません。このままでも使用に問題は無いと思いますがオーナーさんのご希望によりオーバーホールをします。

この頃はスプール軸ユニットを本体に取付けるネジが真鍮の頭の大きなスリ割りネジで、しかも緩み止めを塗布されて締め込まれているので取り外しが非常に困難でスリ割りに力を掛けるとネジが折れてしまう危険が高いところです。充分熟知しているのに折ってしまいました。本体に残ったネジを削り取り、タップ修正をしました。本体は洗浄してモルトを貼ってあります。

シャッターユニットも変更前のシャッターバネが強化される前ですが、摩耗も無く問題はありません。洗浄とチャージギヤ軸にグリスを塗布しておきます。

 

画像では見えませんが、スクリーンは外から故意に傷を付けられています。これはファインダーから見えますが、それほどひどい状態ではありませんので再使用とします。

 

当初、この個体は未分解機と思っていましたが、ファインダーの無限調整を受けていました。

 

19万台としてはハーフミラーの状態は良い方ですが、メッキは薄くなっていますので新品に交換します。

 

これも良くあるアクシデントですが、メーターユニットをルーペに取付ける3本ネジのうち1本が斜めにねじ込まれていて正常に取付けできません。(は修正後) 米谷さん設計のアルアルで、メーターのの部分にドライバーのビットが干渉してビットがネジ頭に対して垂直に入らないのが原因です。+ネジになって電動ドライバーを使用する頃になるとモーターの強いトルクで斜めにねじ込んでしまうのです。生産後期はこの部分のネジを省略して2本留めとしています。

メカの組立はほぼ終了。

 

 

露出計の感度は低下気味でしたので調整抵抗で補正。ピントの確認などをして終了。

 

ストロボの発光テスト。

 

 

この頃はセルフタイマーは巻き上げがジジジッと言うタイプ。巻き戻しダイヤルのノブはローレットタイプ。

 

電池蓋は変更前のネジピッチが細かいタイプ。このタイプは間違ってネジを斜めに入れやすいので、この個体のすぐ後ぐらいの生産からネジピッチを粗いタイプに変更されています。見分けはピッチ細は電池蓋の表面が凸の段付き、ピッチ荒は円周に溝付です。

変更前の仕様機としては外観もきれいで状態は良好です。しかし、撮影は暑さが一段落してからの方が良いかも知れませんね。尚、ご依頼も少ないので更新は少なめになると思います。

 

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