少し前にPEN-Fからファンになられた初心者さんが、こともあろうに三光PENを買って来ましたよ。「どうせなら一気に三光PEN」とのことのようです。まぁ、それも考え方ではありますが、状態を良く見て買わないとね。修理する人間が難儀をするので・・で、この個体。外観は目立つ欠点は少ないですが、前面シボ革角の欠落、駒数ノブとカニ目ネジの欠落、巻上げ不良、ファインダーブロックのフレーム折れなどがありますね。#1242XXと、初期タイプではありません。
巻上げダイヤルカバーがネジ留めですね。初期は熱カシメで、ダイカスト本体の形状も異なります。三光当時は巻上げカムが小さいですね。
トップカバー裏のファインダーブロック。紙製カバーはオリジナルではなく作ったものです。なんでも良いけど、接着剤でごってりと固められています。
紙カバーを剥がしてみます。うぁ、これは困ったな。対物レンズと樹脂製のファインダー本体が有機溶剤系の接着剤で貼られています。対物レンズは樹脂製ですから、この接着剤では溶けてしまうのです。
接着剤と本体が一体に溶け合っていますので、きれいに剥離は出来ません。せっせと削るだけです。対物レンズ2枚は完全に一体化して分離が出来ません。ちょっと考えれば解りそうなものですけどね。
すべて分解をして洗浄を終えたところ。シャッターはスピードがちょうど半分で、全速で1/100です。バネが弱っていますので、この程度が普通です。
古いタイプのスプール軸ですから挽物一体でスリップ機構は組み込まれていません。代りにスプールの内周に拡張バネが入っています。しかし、それが原因で、多くのスプールにはクラックが入っていますね。これですとスリップをし易くなってしまいます。
バリオタイプ2枚羽根のシャッターですから、シャッタースピードが上がりませんね。メインスプリングも張力低下をしているのでしょうけど、元々1/200が出たのでしょうか? この個体ではかなりきびしい・・スローガバナーはユニット化されておらず、地板に直接歯車をセットしていくタイプ。
で、完成したシャッターを搭載してあります。問題は欠落部分のあるシボ革。
三光PENの補修用シボ革なんて、簡単にないですよ。当方の在庫機から調達していますが、なんと、補修用のシボ革の方が劣化が少なくきれいで目立ってしまいますね。(笑) まぁ、夜目遠目、指摘されなければ分からないでしょう。
ファインダーブロックの補修と保護ガラス、対物レンズの接着をしておきます。本体側は、2回に1回のサイクルでチャージ不良が発生する状態でした。基本的にはカムの磨耗によってリフト量が不足しているためで、リンケージ側で調整をしてあります。今日は体調がイマイチなのでここで終わり。
トップカバーにメンテナンスの終ったファインダーブロックを取り付けます。各ミラーの状態は良くありませんが、ガッチリと接着されているため、分離をすると傷めてしまいますので、今回は修復は断念します。3本ビスのうち、右の部分のモールドが欠落しているため、ビスも紛失していましたので追加してあります。この頃の遮光カバーは後のアルミ製と異なり、紙製で、このように貼られています。
駒数ダイヤルとカニ目ネジが欠落していましたので、この頃の仕様に合わせてカニ目孔非貫通のものを選んで取り付けます。尚、ネジはすでに左ネジに変更されています。
こんなところでしょうね。人の手が入って、返って荒れてしまったような個体でした。しかし、レンズとリング周りが不釣合いにきれいで、或いは交換されているのか?との疑問も抱かせるくらいです。ストラップは、この頃御用達の革編みタイプが似合いますね。
底部のへこみも修正してあります。付属の革ケースには、このようにセットして撮影するのが正規のようですね。これなら撮影に夢中になって革ケースを落とす心配も無いわけです。