今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

本革貼りのPEN-FT

2014年01月12日 21時53分41秒 | インポート

Img_336732 正月休みが終ったと思ったら、今度は成人式の三連休ですね。休み癖が付いて調子が出ませんね。2日続けての通院日で、おまけに昨日は帰りの中央線が三鷹駅で人身事故で不通となって、ヘトヘトで帰宅しました。新宿から京王線回りでとも思いましたが、あちらも芦花公園で人身事故だったようです。新年が明けたばかりなのに、最近多いですね。で、カメラの作業は今日からです。何台もお送り頂いている個体で①はPEN-FT #2834XXです。現役で作品を撮影されている個体なので、作動は特に問題は無いようですがO/Hです。点検すると、セルフタイマーが固着して動きませんね。

Img_336811 底部です。電池室からのリード線が腐食により断線して、リード線を継ぎ足して修理をされています。

Img_336971 この個体も、何故か古いモルトを取り去られていて、新しいモルトを貼ってありませんね。何でかなぁ??

Img_337055 問題はこれです。この個体は、本革のシボ革に交換されているのですが、カメラのシボ革用でない材質のため、一度貼った両面テープを剥離することが非常に困難なのです。溶剤を使うと革が傷んでしまうので使えません。

Img_337177 本革ですので、ダイカスト本体の丸ごと洗浄が出来ませんので、清掃のみで組立をして行きます。

Img_337266 シャッターユニットを洗浄しました。現役機にしては、あまり磨耗は進んでいませんね。ギヤ軸もきれいです。

Img_337434 本体は特に問題ありませんでしたので割愛します。固着して動かないセルフタイマーユニットです。原因の殆どは、クラッチ部の腐食です。水気が入ったのでしょう。3つのコロがワンウェイクラッチとなって、逆転を防止する機構です。初期型は爪で噛みあう構造です。腐食部分を滑らかに研磨しておきます。

Img_337557 で、いつもの姿。メカ部分の組立終了。セルフタイマーも軽く滑らかに作動します。電池室のリード線は交換しています。

Img_337717 本体は完成して付属の38mm f1.8 ですが、36万代ですから設計変更を受けた後の製品です。変更前との部品の互換はありません。困るのは、絞り機構を分解洗浄する場合、画像のように絞りカムと絞りリングを同調させるピンを外さなくては絞りカムが分離出来ないことです。真鍮の薄板に直接タップを切ってあるだけですので、何度も分解をするとネジがバカになってしまいます。設計変更の理由は知りませんが、変更前の方が何度分解しても支障が生じなかったのですけどね。え~と、本体との完成画像は撮り忘れました。すでにお帰りになりました。

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再びのPEN-F

2014年01月08日 21時34分18秒 | インポート

Img_335355 タイトルは、前回同じPEN-Fをやりましたので、その意味もありますが、オーナーさんが10年前にデジカメに移行されていて、現在、デジカメ故障を切っ掛けに、再びPEN-で写真を撮ってみたい。とのお気持ちになられたとのことで、涙が出るほどうれしいお言葉ですね。ただし、私事でちょっと取込中のこともあって、作業内容は前回とほぼ一緒ですから、簡略してUPしたいと思ったのでしたが・・症状は、ご覧のようにミラーがUPして停止するので、全体のフリクションが増大しているようです。シボリレバーのトルクも小さめです。

Img_335414 ネジロックが良く見る茶色(変色?)ですので、沢山の個体を修理されている修理屋さんで分解修理を受けているようです。モルトはご覧のように取り去られて、新しいモルトを張ってありません。なんで貼らないのかな?

Img_335522 全反射ミラーは清掃した形跡があります。再使用は可能の範囲ですが、ご希望により新品と交換します。

Img_335664 シャッター幕が良くないなぁ。回転中に指で触れたというのではなくて、この状態で分解中に不注意で曲げてしまったという損傷の仕方ですね。シャッタースピートに影響あるなぁ。

Img_335986 簡単にUPと思いましたが、そうも行かなくなりました。ブレーキリングを抑えるナットのスリットが損傷しています。しかも、瞬間接着剤が塗られています。どんな修理屋さんだよ。このナットは鉄製から真鍮製に材質変更をされていて、強く締める部分なので、簡単にスリットが壊れてしまうのです。何故、材質を変更したのか? 真鍮にすれば表面処理がないのでコストが安い? いくら違うんだよ。材質的に柔らかい真鍮を使うことによって、変形をさせることで緩みにくくなることを狙った? 技術屋さんの考えることは高度で私には理解できませんが、それによって製品の完成度を落としているのです。問題は、これをどうやって分離するか・・・

Img_336042 分離しなければ仕事にならないので・・。 ブレーキのOリングが削られているのが分かりますか? Oリングが硬化するとブレーキが効きすぎてシャッターが正規の位置に戻らないという不具合が出るのですが、修理屋さんでは、「じゃあ、ブレーキを効かなくすれば良いじゃん」とこのようなごまかしをするのが一般的なのかも知れません。過去に随分見て来ましたからね。どうして交換する正規の修理をしようとしないのかな? 私には理解できません。これからすべて分解をして組み直しですが、前回と一緒なので割愛。

Img_336164 本体の方は、いつものように分解洗浄後、組立をして行きます。

Img_336376 すみません。作業が遅れました。で。結果的に組み上げましたが、この個体、シャッターのメインのバネが弱っていたようですね。それによって、ブレーキが効くと、シャッター羽根の正確な復帰が出来ないので、ブレーキを殺してしまおう。ということではなかったのかとも考えられます。チャージをしたまま、長期間放置されたのかも知れません。皆さんも、撮影しない時は、シャッターは巻上げたままにしておかない方が良いかなぁ? 確証はありませんけど・・プリズムは、珍しく腐食がありませんね。

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全反射ミラーは新品と交換しています。#1959XXですから、巻上げ部は設計変更後の仕様です。

Img_336585 付属の40mmも作動が重いレンズですが、絞り羽根に油が付着して、作動が緩慢ですので、清掃をしてあります。10年ぶりに調子を取り戻したPEN-Fです。将来は息子さんの譲られる予定とのことで、大切にされてください。

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初詣に行ってきました

2014年01月05日 14時55分42秒 | インポート

Img_334431 今年二回目の外出ですので寒さが身にしみます。例年の初詣は、天邪鬼な私は人混みがきらいなので遅めにお参りに行くのですが、それでも結構似たような考えの方が参拝に来ていますね。雲りの天気で気温は8℃ぐらいですが立川の諏訪神社に来ています。今年最初の出動はセイコー5にしました。(風防が反射してしまいました)66系は410のマイナーチェンジとして登場したモデルで6619-8280は1966年の諏訪精工舎製です。亀戸の76系はガッチリとしたケースが特徴ですが、この66系は少し小ぶりの諏訪のエレガントさを感じるモデルで好きですね。キャリバーは6619Aでリューズをプッシュすることによりカレンダーを早送りできる機構が搭載されて便利になりました。

Img_334561 右腕です。こちらも同じ6619Aを搭載したモデルですが、ケースが一回り大型になっています。じつは、こちらの方が製造が古くて1964年製です。カレンダー枠とインナーリング間の距離を比較するとサイズが大きいことが分かりますね。他の参拝客がけげんな顔をして見るのでお札を頂いて早々に退散します。確かに挙動不審な男に見えますね。

Img_335054 文字盤が見えにくいので並べてUPです。文字盤とケースの違いで印象が変わりますね。とにかく、初詣も終えて、明日から本格始動になりますね。みなさんも頑張ってくださいね。


新年最初は最初期PEN-Fから

2014年01月02日 13時25分54秒 | インポート

Img_330047 みなさん、新年おめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。こちら関東地方は大晦日から晴天が続いておりまして、穏やかなお正月となっています。初詣に行かれた方も多いと思いますが、私は少し人出が減った頃に行く予定です。その前に早くも今年の仕事始めです。初心に戻ってF系の原点、最初期型のPEN-F #1003XXから始めましょう。初期型の外観からの特徴は、上下カバーの梨地の粒度が細かく、以後の個体に比べて光り気味になっていますね。傷が目立ちやすい、手が滑りやすいなどの問題で粒度を荒い方向に変更して行ったのでしょう。

Img_330275 巻き戻し側の角が激しく凹んでいるのが何とも惜しいところです。これは修正はできません。アイピースのカケもありますね。

Img_330333 内側からの修正はされていないようです。初期の巻上げ機構は巻上げ爪を抑えるバネの構造が異なります。

Img_330477 りん青銅のマブチモーターのコアのような板バネです。潤滑が切れると、接片の磨耗が進んで、テンションが掛からなくなる不具合が発生しますが、耐久性の向上を目的に、板バネからコイルバネへと根本的設計変更を受ける部分です。

Img_330538 リード線を抑えるテープが黒テープですね。以後は、この部分だけ何故か透明テープとなります。理由は分かりません。

Img_330622 古いですからね。緑青のような腐食は進んでいます。丹念に磨いて行きます。

Img_330864 この個体は未分解機と思いましたが、ちょっと違うかもしれない。シボ革を剥がしましたが、私は絶対に傷を着けませんが、シャッターダイヤルの下部分に傷がありますね。工場で接着のままなら傷はないはずです。また、最も疑問だったのは、留めビスです。この画像では分かりにくいですが、左側のビスが右側のビスより長いものが使われています。正解はこの逆です。諏訪の女工さんが間違えたとは思えませんので、この個体は一度分解を受けていると判断します。接着剤は強固でしたので、SSでの作業ではないかと思います。

Img_331052 この個体は初期型ではあるが最初期型ではないのではという気がして来ました。最初期型では、プリズム抑えはリード線を保持する形状をしている。レンズマウントの赤マークではなくスリットではないか? シリアル№は必ずしも製造時期と一致しないものですが、PEN-Fの発売は1963-5月で、この個体のシリアル№1003XX 1964-3月製ですから、10ヶ月の生産台数として300台は如何にも少ない台数です。組立途中でトップカバーを不良として、手直し良品化により遅れたとも考えられますけどね。

この付近の個体で私が確認している製造年月を表示してみます。

#104338 1964-3 #107672 1963-10 #111085    1963-10  #111446 1964-5  #115036 1963-12 #117672 1964-6 #119798 1964-2 #119546 1964-7  #122992 1965-3  #136901 1964-8  #146564 1964-10 #151115 1965-2  #157576 1965-2  #176351 1965-2

Img_331199 リターンミラーには角にミラー抑えがあるので初期型には間違いない。ミラーが割れていますね。

Img_331614 そこで、新品のミラーと貼り替えをしてあります。

Img_331757 前板に完成したリターンミラーを取り付けています。洗浄注油をしたミラーユニット、フレネルレンズの汚れも洗浄してあります。プリズムは、僅かに腐食がありますが、以後の黒点となるものとは違って、それほどひどくはありません。

Img_332619 組立完了。ここで興味深い点は、初期の個体は(他の個体も確認)プリズムを保持するためのスプリングがない点ですが、上部のプリズムホルダーにはスプリングのフックが無いのに、下部には付いている。片側だけでは意味はないが、スプリングを取付けるか否かの検討があった結果なのかもしれません。以後は、スプリングが付くようになって、FTの中期まで付いていましたが、中期以降は再び省略されて終息します。

Img_331955 シャッターユニット。過去に分解を受けています。シャッター幕とアイドラーのビスを緩めようとした形跡があってネジロックが塗布されています。ここのビスは、緩み止めのカシメが施されているので緩みませんが、無理に緩めると、作動時に緩んで分解してしまいます。それを知らないリペアマンですからSSではないようですね。ブレーキは全く機能していません。ゴムのOリングですから無理もありません。

Img_332364 シャッターユニットは、大量の古いグリスに埋もれている状態でした。何度も超音波洗浄を繰り返して洗浄、注油を終えたところ。№2チャージギヤの色が黒ずんでいますね。硬い熱処理をされているようです。シャッター幕は初期の光沢の強いタイプです。

Img_332777 ブレーキはご覧のように、Oリングは劣化して切れています。

Img_332824 Oリングホルターはゴムにより錆が発生しています。

Img_333024 正月から難儀な個体だなぁ。UPするたけで疲れちゃうよ。リューターに取り付けて、Oリングが嵌る部分を研磨しておきます。

Img_332021 全反射ミラーは曇りが激しく、再使用は出来ません。新品と交換します。

Img_333346 これで組立はほぼ完成。巻上げはスムーズで、シャッターも快調です。初期の個体としては良い状態と思います。

Img_333622 付属のF用38mmは、内部に絞り羽根に流化したヘリコイドグリスがべったりと付着しています。すべて分解洗浄をして組み直しです。

        Img_333713                                                                                                                                           リターンミラーの交換を行っていますので、ピントの再調整をして完成です。 正月休み中とのことで、今年最初の作業でしたので、じっくりと時間を掛けて仕上げました。この個体は、ハードオフのワゴンから救出した来た個体だそうです。まぁ、地獄に仏。良い方にめぐり合った幸運な個体だと思います。期待に応えて、非常に調子の良い初期型機に仕上がっています。

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