みなさん、新年おめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。こちら関東地方は大晦日から晴天が続いておりまして、穏やかなお正月となっています。初詣に行かれた方も多いと思いますが、私は少し人出が減った頃に行く予定です。その前に早くも今年の仕事始めです。初心に戻ってF系の原点、最初期型のPEN-F #1003XXから始めましょう。初期型の外観からの特徴は、上下カバーの梨地の粒度が細かく、以後の個体に比べて光り気味になっていますね。傷が目立ちやすい、手が滑りやすいなどの問題で粒度を荒い方向に変更して行ったのでしょう。
巻き戻し側の角が激しく凹んでいるのが何とも惜しいところです。これは修正はできません。アイピースのカケもありますね。
内側からの修正はされていないようです。初期の巻上げ機構は巻上げ爪を抑えるバネの構造が異なります。
りん青銅のマブチモーターのコアのような板バネです。潤滑が切れると、接片の磨耗が進んで、テンションが掛からなくなる不具合が発生しますが、耐久性の向上を目的に、板バネからコイルバネへと根本的設計変更を受ける部分です。
リード線を抑えるテープが黒テープですね。以後は、この部分だけ何故か透明テープとなります。理由は分かりません。
古いですからね。緑青のような腐食は進んでいます。丹念に磨いて行きます。
この個体は未分解機と思いましたが、ちょっと違うかもしれない。シボ革を剥がしましたが、私は絶対に傷を着けませんが、シャッターダイヤルの下部分に傷がありますね。工場で接着のままなら傷はないはずです。また、最も疑問だったのは、留めビスです。この画像では分かりにくいですが、左側のビスが右側のビスより長いものが使われています。正解はこの逆です。諏訪の女工さんが間違えたとは思えませんので、この個体は一度分解を受けていると判断します。接着剤は強固でしたので、SSでの作業ではないかと思います。
この個体は初期型ではあるが最初期型ではないのではという気がして来ました。最初期型では、プリズム抑えはリード線を保持する形状をしている。レンズマウントの赤●マークではなくスリットではないか? シリアル№は必ずしも製造時期と一致しないものですが、PEN-Fの発売は1963-5月で、この個体のシリアル№1003XX 1964-3月製ですから、10ヶ月の生産台数として300台は如何にも少ない台数です。組立途中でトップカバーを不良として、手直し良品化により遅れたとも考えられますけどね。
この付近の個体で私が確認している製造年月を表示してみます。
#104338 1964-3 #107672 1963-10 #111085 1963-10 #111446 1964-5 #115036 1963-12 #117672 1964-6 #119798 1964-2 #119546 1964-7 #122992 1965-3 #136901 1964-8 #146564 1964-10 #151115 1965-2 #157576 1965-2 #176351 1965-2
リターンミラーには角にミラー抑えがあるので初期型には間違いない。ミラーが割れていますね。
そこで、新品のミラーと貼り替えをしてあります。
前板に完成したリターンミラーを取り付けています。洗浄注油をしたミラーユニット、フレネルレンズの汚れも洗浄してあります。プリズムは、僅かに腐食がありますが、以後の黒点となるものとは違って、それほどひどくはありません。
組立完了。ここで興味深い点は、初期の個体は(他の個体も確認)プリズムを保持するためのスプリングがない点ですが、上部のプリズムホルダーにはスプリングのフックが無いのに、下部には付いている。片側だけでは意味はないが、スプリングを取付けるか否かの検討があった結果なのかもしれません。以後は、スプリングが付くようになって、FTの中期まで付いていましたが、中期以降は再び省略されて終息します。
シャッターユニット。過去に分解を受けています。シャッター幕とアイドラーのビスを緩めようとした形跡があってネジロックが塗布されています。ここのビスは、緩み止めのカシメが施されているので緩みませんが、無理に緩めると、作動時に緩んで分解してしまいます。それを知らないリペアマンですからSSではないようですね。ブレーキは全く機能していません。ゴムのOリングですから無理もありません。
シャッターユニットは、大量の古いグリスに埋もれている状態でした。何度も超音波洗浄を繰り返して洗浄、注油を終えたところ。№2チャージギヤの色が黒ずんでいますね。硬い熱処理をされているようです。シャッター幕は初期の光沢の強いタイプです。
ブレーキはご覧のように、Oリングは劣化して切れています。
Oリングホルターはゴムにより錆が発生しています。
正月から難儀な個体だなぁ。UPするたけで疲れちゃうよ。リューターに取り付けて、Oリングが嵌る部分を研磨しておきます。
全反射ミラーは曇りが激しく、再使用は出来ません。新品と交換します。
これで組立はほぼ完成。巻上げはスムーズで、シャッターも快調です。初期の個体としては良い状態と思います。
付属のF用38mmは、内部に絞り羽根に流化したヘリコイドグリスがべったりと付着しています。すべて分解洗浄をして組み直しです。
リターンミラーの交換を行っていますので、ピントの再調整をして完成です。 正月休み中とのことで、今年最初の作業でしたので、じっくりと時間を掛けて仕上げました。この個体は、ハードオフのワゴンから救出した来た個体だそうです。まぁ、地獄に仏。良い方にめぐり合った幸運な個体だと思います。期待に応えて、非常に調子の良い初期型機に仕上がっています。
http://www6.ocn.ne.jp/~tomys800/