今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

少し前にも来たねオリンパス・フレックス

2012年08月06日 21時33分49秒 | インポート

Dscf018818 今朝目覚めたらロンドンオリンピックの100mはウサインボルトが9.63秒で優勝だってね。毎度東京オリンピックのお話で恐縮ですが、東京大会の100m優勝はアメリカのボプ・ヘイズだった。セイコーが初めて水晶時計による公式時計を担当した。誰が10秒の壁を破るのかが注目されたが、その時のヘイズのタイムは準決勝で9.9秒であったが、追風未公認で、決勝は10.0秒であったと記憶しています。実況のアナウンサーが「褐色の弾丸が飛んでくるようだ」と形容したのを覚えている。映画、東京オリンピックのナレーターが「人間はどこまで速くなれるのだろう」と言ったが、正しくその感を強くしましたね。で、少し前にも来ましたが、オリンパス・フレックスです。部品取りとして入手されたそうですが、メンテナンスで現役になるのではとのご依頼です。まぁ、ボチボチやりますね。

Dscf019149 絞りダイヤルと絞り羽根が同調しないとのこと。カバーを分離した時にリンケージを正しくセットしていないのです。その他は特に不具合はありませんので、メンテナンスをして行きます。このカメラのレンズは、コーティングの劣化や曇りが進行しているものが多いようです。後玉ですが、コーティング劣化により曇りがあって清掃は不可能の状態です。

Dscf019564 洗浄したピントグラスです。シミのようなカビ痕のような汚れはすでにガラスを侵しており、清掃は出来ませんでした。反射ミラーのメッキの劣化は進んでいますね。

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フレームへのセットは2つの板バネによります。何度も拭き上げられたピントグラスは、スリが摩滅して素通しに近くなっていますので、ファインダー像は見やすくはないですね。サンドブラストを掛けて修正してみたら? 粒度が分からないしね。

Dscf019737 中玉も劣化が進んでいますが、以前の個体よりは良い方かなぁ・・シャッターのクリーニングと注油をしておきます。

Dscf019926 不具合であった絞りダイヤルと絞り羽根の同調を確認しています。

Dscf019851 メンテナンス終了。レンズの曇りはそれほどひどくはなく、充分に実用になると思います。ft表示機なので、やはりこの個体も海外からの里帰り機ということでしょう。


暑いのにPEN-Wフードの塗装

2012年08月05日 18時19分28秒 | インポート

Dscf018722 今朝目覚めたらロンドンオリンピックは水泳男子と女子が400mメドレーでそれぞれ銀と銅メダルを獲得したとラジオが言ってました。あぁ、最後のメドレーで入賞したのは、東京オリンピックもそうでした。全く不振の競泳陣が最後の4X200自由形リレーで水泳日本の面目を保ったという記憶があります。あの時は、「いっちゃ~く、ドン・ショランダー君アメリカ」の連発でしたからね。女子ではオーストラリアのドン・フレーザーさんが記憶に残っています。まぁ、有終の美を飾れて良かった良かった。しかし、中国と韓国と対戦すると、日本は負けることが殆どですね。日本には絶対に負けないという気持ちの差でしょうかね。で、PEN-Wフードを作りました。採算が合わないので、もぅ、やめようかなと思っていると、ポツンポツンとご注文を頂きます。PEN-Wのレンズの状態からはフードは装着した方がよろしいと思いますので、作れるうちは作ろうかとは思っております・・・

Dscf017822 午後からは中途半端なので、少し前に入手していましたペリス環用の復刻ベルトのベルト幅を直すことにしました。片側1mmづつカットして2mm幅を詰めます。すると、尾錠のサイズが合わなくなりますので、手持ちの当時物(終戦直後ごろ)からちょうど良い尾錠を選んで交換します。手に持っているものが当時物で、その上が、このベルトに付いていたもの。これは、現代の何か用の流用だと思いますね。

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尾錠をベルトに通して革用接着剤で接着をしておきます。後は、糸で縫うのですが、同じ色の糸がない・・ユザワヤへ買いに行くのも暑いので、普通の糸を染めて使うことにします。とは言っても、なかなか思うような色には染まってくれませんね。

Dscf018288 まぁ、糸の色は妥協して縫って行きます。革を縫う場合は、普通の布を手縫いするのと違って2本の針で両方から同じ穴に通して縫って行きます。穴は、前の縫い穴をそのまま使いますすが、お世辞にも上手な加工とは言えませんね。

Dscf018354 で、こんな具合です。ベルトの幅がちょうど良くなりましたね。この方式のベルトは現在では使用されておらず、その意味では復刻されている方に敬意を表しますが、できれば、もう少し丁寧な加工をして頂けると良いですね。価格は3,500円と拘りの安さですが、このベルトを欲しがる方は多少のコストアップは許容すると思うのです。金具さえあれば比較的自作は容易ですので、今度は、革から調達して作ってみようと思います。


セイコー・ロードマチックのO/H

2012年08月01日 22時52分19秒 | インポート

Dscf015455_2 その前に、セイコー・スーパーのリューズを取り付けます。巻き芯はデッドストックの新品ですが、リューズはジャンクからの調達です。巻き芯は補修用の部品のため、ケースに合わせてカット出きるように、ネジ部が長めになっています。リューズをねじ込んでから、ケースに挿入してカットする寸法を計測します。

Dscf015667 僅かに長めにカットしました。リューズの締め込みによりクリアランスが減るのを計算に入れています。最近では珍しい16mm幅のベルトをセットしてみます。一応の雰囲気は分かりましたね。文字盤は完成していませんので、また、分解することになります。

Dscf014566 で、本題です。北海道のINOBOOさんからオークションで落札した時計が直接送られてきました。セイコー最後の機械式キャリバーを搭載したロードマチックです。この個体は1968年製の初期型ですが、致命的な欠点は無いのですが、風防やケースは実用品として使い込まれた状態で傷だらけです。しかし、この機械(56系)はキングセイコーやグランドセイコーにも発展した優秀な機械ですので、O/Hをしたいと思います。

Dscf015546_2 このケースは裏蓋のないワンピースケースで、機械を取り出すには風防を外して前から分離する必要があります。セイコー純正の工具で風防を外しています。

Dscf015937 風防が外れると、機械はポロッと出てくるわけではなくて、機械を固定しているスナップリングを回してから取り出します。

Dscf016127 傷の多いケースを研磨しています。手磨きでは、どうしてもシャープなエッジがスポイルされてしまいます。この後、リューターで仕上げます。ご覧のように裏蓋はありませんので、歩度調整は機械を取り出さなければ出来ません。兄貴分のキングセイコーでは、ラグ間のビスがあり、そこから調整が可能となっていますけどね。まぁ、どちらにしても、面倒くさい方式です。

Dscf016364 機械を取り出しました。初期型の23石で、昭和53年(製造されて10年目)にO/Hを受けた書き込みがありました。熟練の時計師さんだったようで、分解によるキズは皆無といって良いきれいさです。その時計師さんに敬意を表して、私もキズをつけないように慎重に分解をして行きます。

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曜日の表示窓は60年代のウィークデーターなどで見かける6時位置配置されていますので、曜車の文字も円周状にプリントされています。中央のワッシャーを外すと分解することが出来ます。

Dscf016698 では、組み立てて行きます。ゼンマイの入った香箱車にグリスを塗布してセットします。

Dscf017184 しかし、普段は40年後半から50年代の機械を相手にしていると、ある意味、組立は非常に楽なのです。受けをセットすると、何の苦労もなく歯車のホゾが入ってくれます。部品の加工精度は全く比較にならないほどの進歩を遂げています。画像は、リューズを前後に回して日付と曜日の進み具合をチェックしているところ。この個体は、曜日が変わりきらない持病を持っていたようです。

Dscf017296 日車をセットして、正常に切り替わるかをテストしています。日付の調整禁止時間帯で無理に切り替え操作をされていた個体で、樹脂部品で組まれている個体は、送り部分に無理が掛かって部品の変形による不具合がありますが、この個体は、材質が金属ですので、全く問題はありません。

Dscf017364 後ろは研磨をしたケース。自動巻きのローターを外した機械は何と薄いこと。機械式では最後の設計で、技術は最高水準に達していた頃です。

Dscf017566 完成した機械をケースに収めます。風防はすでに純正部品の入手は不可能ですが、社外品の新品は入手することが出来ます。外周のエッジが純正よりシャープな感じがします。最後にベセルを圧入をして風防を固定します。

Dscf017660 これで完成です。典型的なセイコーデザインで、悪く言えば個性のないデザインとも見えますが、私は清潔感と品の良さを感じて好きですね。防水性を上げるためのワンピースケースですが、歩度調整時にもベセルをこじ開けなければならないのは、確実にケース(ベセル)にダメージを与えるので、裏蓋ネジ式の方が良いと思います。まぁ、何度も開けるなということでしょうか。安定した精度と小型、薄型化を達成した56系の機械は、日送り機構の弱さなどのウィークポイントもありますが、クォーツ腕時計の時代となっても、最後まで生産をされた優秀なキャリバーと言うことが出来るでしょう。