珍しいカメラが来ましたね。ツァイスイコンのTENAXⅡで、ゾナー2/4cmが付いていますがレンズ交換の出来るComperRapidを搭載したレンズシャッターカメラです。製造年を調べると1938年となっていますが、昭和で言えば13年ですよ。日本では日中戦争が泥沼に嵌って戦時体制に移行した暗い時代です。それにしては、ダイカスト本体などは非常にがっちりとした作りで、当時からドイツの工作力は素晴らしいです。しかし、内部の巻上げ機構やファインダーの作りなどは、普及機クラスと感じます。外観の特徴は、前面にある巻上げレバーが招き猫のようで、非常にユーモラスです。ドイツでは招き猫なんてないでしょうけどね。全体のメンテナンスですけど、ファインダーの前面保護ガラスの接着はずれなどをご指摘頂いていますが、それよりも、巻上げのフィーリングが非常に重く、ガリガリとして感触で、レバーも完全に復帰しない時があります。で、分解しています。
巻上げが重い違和感の原因はここです。多少設計に無理があって、潤滑が切れた状態で作動を続けると各部の動きがギグシャグとスムーズで無くなって、急速に磨耗して行きます。ギヤの当たり面の磨耗も進んでいますが、カシメと留めているリペットがグラグラな状態です。
リベット軸がグラグラな状態なので作動に負荷が掛かって地板が変形しているのがお分かりでしょうか?これによっても、作動に不具合の原因となっています。歯車の下側当り面が細っているのに注意。本当は、リベットを外して歯車を上下逆に使った方が良いのですが、リベットの強度も落ちるので今回はこのままで使用します。
地板の変形を修正して、リベット軸を再カシメしてあります。その他、シャッターのメンテナンス注油や作動部のグリスUPをしてあります。トップカバーを外すと意外に簡単な作りでしょ。ファインダーもプリズム式ではなくて、前面は只の保護ガラスです。(レンズではありません)セルフタイマーのレバーを上方の上げると、シャッター右横の板バネを介してチャージレバーと連動します。
別の角度から。ファインダーは清掃のうえ、前面保護ガラスを接着してあります。前板を取り付けて、巻上げレバー他、各レバー関係の取付けをしてあります。レンズ交換式のため、マウント部の組立は非常にやりにくい構造ですね。ヤレヤレです。その他モルトなどを交換します。
で、こんな感じね。ドイツに招き猫がいるわけはないけど、しかし、いい得て妙ですね。右手を上げた招き猫もあるようです。巻上げは、ギヤの磨耗がありますので、スムーズとは行きませんが、完全に復帰しないということは無くなって、まぁ、こんなものでしょう。フォーマットは24X24の正方形です。程度の良い個体はけっこうな価格のようですね。うちの招き猫は全然ご利益はないですけど・・