今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

カスタマイズPEN-FT

2011年03月16日 21時44分15秒 | インポート

Dscf231264今日、スーパーに非常食の買出しに行きましたら、カップ麺、レトルトカレー、パンなどは棚に殆ど無い状況。母が、終戦直後の買出しと同じだ。と言ってました。夕方から計画停電の予定でしたが、何故か電気は消えなかったので作業を進めることにします。余震や放射能の恐怖。明日はガソリンや灯油が手に入るか? なにか非常時の中で生活しているようです。関係の無い地方の方々には想像は出来ないでしょうね。で、このPEN-FT #1172XXは、巻上げレバーがこの位置で固着して動かない。当然シャッターも切れないとのことで来ました。外観的には、シボ革が交換されているのが気がつきますが、内部はそれだけではないですね。パッと見て、露出メーターが基板別体タイプ。これは初期型なので交換されていても不思議は無い。しかし、セルフタイマーも変更後のタイプに交換されていますね。その他、配線は全て今風の細いリード線に交換されています。

Dscf231596 シボ革が両面テープ接着のためシールの裏紙を貼って接着面を保護します。しかし、両面テープは数年しか持ちませんよ。ピンセット先に小さな皿ビスがあります。これは、セルフレバー部のビスだね。特に悪さはしていません。シャッターユニットを見ると・・シャッター幕と分離されていますね。それより、このシャッターは初期型のものではありません。中期(20万台)付近のユニットです。観察すると、ダイカスト本体は11万台で合っています。シャッターユニットや、中身の殆どを他の個体から移植されて作られたカメラですね。だからダメというつもりはありませんよ。オーナーさんはご存知だったのかなぁ? 言わない方が良かったかな?

Dscf231681 全て分解・洗浄後に巻上げ関係を組み上げています。この部分は初期型のユニットのままですが、特に問題はありませんでした。次はシャッターだね。ユニット内部も分解をされた形跡がありますが、上部のレリーズ「押し板」が何やらイモ半田で付けられていますね。ちょっと怪しいなぁ・・シャッター幕も初期型のものではないので、シャッターとセットものでしょう。しかし、あまり製造時期の離れたユニットを組み合わせると、どうしても作動が安定せず、信頼性が落ちる傾向にあります。今回の故障原因では明らかな部分は見つかりませんでしたが、巻上げギヤの傘歯歯車などの磨耗が大きいように思います。その辺りのギヤの噛み合わせに原因があったかも知れません。最初から組み直して行きます。

Img_3642 今夕6時半過ぎから計画停電が実施されていました。ロウソクなんで何十年ぶりだろう。子供の頃は雷が落ちるとすぐに停電した。9時半に復帰したが、私の部屋は電気の暖房機しかないので毛布をかぶって震えていた。被災地の方々とは比較にならないが、東京でもみな耐えているのです。電気がついてテレビを点けたら緊急地震速報。32分ごろ銚子沖だそうだが、精神的にきついですね。

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で、ユニットの寄せ集めの個体はあっちこっちつじつまが合わず、画像を撮るのを忘れてしまいました。そもそもファインダーの無限が来ていませんが、かなり調整をいじって調整個所がキズだらけですね。ミラーユニットはこのダイカスト本体のものではないのでしょう。テンションは張り気味です。基板別体タイプの露出メーターは、普通は製造が比較的新しいので感度は良いのが普通ですが、このユニットかなり低下しています。初期型ですと、接眼プリズム抑えはアルミ製のはずですが、この個体は真鍮製のしかも2本留めタイプですから中期以降の部品ですね。いろいろな部品を集めて組まれているようです。

Dscf232051 プリズムには1点腐食がありますが、まぁ良いでしょう。フレネルレンズ、リターンミラーはきれいな方です。問題は、奥に見えるシャッターダイヤル部分。露出メーターと連動するウォームギヤが連動しない。これは、基板別体タイプのメーターユニットを使った場合、ウォームギヤの軸を受ける位置が微妙に奥で、初期型のギヤでは軸の寸法が不足するため。後期の長いタイプと交換します。

Dscf232124 トップカバーを付けてあります。オーナーさんから「セルフタイマーのレバーがしっかり留まっていない」とのご指摘でしたが、レバー自体はこんなもので問題はありません。そこでボタンを付けようとすると、あれれ、ワッシャーが入っていますね。これは過去に何台も見た記憶があります。オークションでの購入個体だったような。正直なところ、カメラとしてはあまり良い印象はありません。確かに初期型のボタンは厚みが薄いですから、それを改善するためには簡単で悪くはないアイディアだとは思います。しかし、掛かっているネジ山が短くなるので緩みやすいのです。私は、うちのオリジナルの厚み増したボタンに替えます。

Dscf232347 で、付属の38mmですが、分解歴ありでホコリの混入を清掃ご希望です。それは良いのですが、マウント部のスリ割りビスのスリ割りがひどいことになっていますね。これね、私に同じ事をしろと言われても出来ませんね。新品を組んでいた経験から、ビスの頭を傷つけることには特に神経を使います。この方は失礼ですけど、センスと基礎技術がないのではないですか?

Dscf2324991 裏蓋ですけどね。圧板を分離してみると・・裏側に鉛筆の修理履歴があって、それを中途半端に消していますね。圧板の裏には製造年月がありますが、初期は赤鉛筆の手書きで中期以降はゴム印の捺印になっていますので、画像から初期の圧板だと言うことが分かります。しかし、その赤字が消されています。故意かどうかは不明ですが、この文字は何と書いてあるか分かりますか? 意外に画像のほうが判読し易いのですが、トップカバーのロット№から「6-Z」であろだろうと思われます。(1966-12) 圧板の表面を清掃して取り付けます。 部分に変形と塗装剥れがありますね。対応する本体にもありますから、分解時にビスを挟んだまま裏蓋を閉めたためと分かります。変形を修正してタッチアップをしておきます。

Dscf232516 こうしてみると、初期型のボディーとしては異常と思えるくらいきれいですね。とすると、内部のユニットも殆ど消耗はしていなかったと推測しますが、それでは何故シャッターユニットなどを交換する必要があったのでしょう? 電池室(ボタン含む)も初期のものより中期以降のタイプに交換されています。初期型ボディーの心臓移植モデルというところでしょうかね。調子自体は悪くはありませんけどね。


イタリアの洒落者ベンチーニ・コメットS

2011年03月15日 21時44分33秒 | インポート

Dscf230552 イタリア製の127サイズトイカメラ? ベンチーニSというカメラですね。子供向けのおもちゃではないのでしょうけど、作りはかなり簡単なものです。ダイカスト製本体にカバーや小物がほとんどアルミ製ということで異常と思えるくらい軽いです。しかし、トップカバーの造形などは、イタリア製小排気量バイクのクランクケースのように魅力的な形をしています。で、メンテナンスのご依頼ですが、構造が簡単に過ぎていじるところも無いなぁ。単玉F11(おっと11ですか)レンズのヘリコイドが固着しています。シャッターは、1/50のエバーセット式。鏡胴部分のピントリングのように見える凸凹はデザイン上のダミーです。Dscf230615                       

レンズ部を分離してみます。ヘリコイドグリスは完全に固着して動きませんね。洗浄をして新しいグリスを塗布しておきます。

シャッターはこんな感じ。今は閉じているところですよ。

Dscf230712これが開いたところ。1時部分の側面にあるレバーを起こすとバルプ固定とすることが出来ます。

Dscf231012 裏側から覗いてみますよ。ピンセット先のエキセントリックな形状の丸棒がシャッターと直結しているわけで、レリーズボタンを下げると連動してシャッターを作動させます。はじめ、一見インナーワイヤー式かなと思いましたが、そんなに高度な構造ではありませんね。      

Dscf231162 1940年代のカメラのようで、時計で言うと下のスモールセコンドと同時代と思われます。イタリアだって敗戦国ですから、物資も厳しい時代のカメラということでしょうね。古いだけにシボ革の剥離が激しいですので、補修接着をして完成とします。                                                                   


ちょっと厄介なPEN-S2.8

2011年03月13日 22時30分53秒 | インポート

Dscf2289151_2 地震も心配ではありますが、仕事ですから作業を進めていきます。このPEN-S 2.8は少し前に他でO/Hをされているとのことで、駒数ガラスのみの交換をご依頼です。それでしたらO/Hの時に同時に交換してもらえば良かったのにね。では、カバーを分離しようとシューカバーを外してみると・・あらら、皿ビスの頭が折れて無くなっていますね。頭が無いということは前回の分解時には分かっていたことですね。

Dscf229174_2 残ったねじ部を観察すると、これは斜めに入っていますね。無理にねじ込んで途中で固着してスリ割りの頭がちぎれたものでしょう。何やら瞬間接着剤も塗布されていますが、何の意味があるのでしょう。左の巻上げダイヤルも瞬間接着剤の白化が認められます。なにやらイヤな予感がしますよ。

Dscf229446_2 すると、ポロッとダイヤルカバーが取れて来ました。観察すると、こちらも一度取り付け部が折れたものを瞬間接着剤で付けられています。修正するためにはダイヤルを分離する必要があります。で、スリ割りを回すと・・こちらもポロッと(もうイヤだ)取れて来ました。

Dscf229633 瞬間接着剤の跡を見てください。スプロケット軸とスリ割り頭のセンターがずれています。ということは、ネジロックの意味で塗布されたものではなくて、頭が折れてしまったものをごまかすために瞬間で接着してあるということです。私のところでは、O/H時は2軸を分離洗浄してから組立ていますが、前回の修理屋さんがどのような作業をされているのかは不明ですからその時の作業とは断定できません。しかし、瞬間接着剤が好きな作業者ですよね。で、駒数ガラスの交換のみのつもりでしたが、「見なかったことにしよう」というわけにも行きませんよね。どうしましょう?

Dscf229962 折れたビスが残った場合でも軽微なものは中心に下孔を開けて専用工具で取り出せる場合もありますが、この個体は全くビクともしない。仕方が無いので精密に削り取ってみます。この状態で観察すると、なんと、ネジ山がありません。ははぁ、ネジ山を壊したので瞬間接着剤で皿ビスを留めたのでしょう。それを知らずに、前回の修理屋さんがビスを緩めようとしたところ頭が取れたものと推理します。この個体はヤフオクでの入手だそうで、カメラに詳しい出品者だそうです。さて、どうしますかね? ネジ山が破壊されて内径が大きくなっている場合はタップで再生させることは出来ません。

Dscf230155 慎重にネジを切りなおして何と皿ビスが入っていますね。スプロケット軸先端の折れて内部に残ったビスは特殊小作により取り出しています。こちらも瞬間接着剤が入っており、分離には苦労しました。

Dscf230284 一度、スプール軸も全て分解して組みなおしています。いつものように本体と部品を洗浄されていませんので、何か気分が良くありません。ダイヤルカバーは取付け部が折れやすいので、接着修理は仕方ありませんが、接着が乱暴過ぎですね。ゴッテリ塗ったから強度が出るわけではありません。古い接着面を削り取ってから再接着で使用します。

Dscf230441 一度組んだのですけどね。2回に1回巻上げダイヤルの固着で二重巻上げ防止機構が解除されない。規則性から、巻上げダイヤル下のギヤに問題があることは分かっています。分解すると、こちらにも瞬間接着剤が流れ込んでダイヤルとギヤが平行になっていないことが原因でした。こういう修理は「あとはどうなれ修理」って言うんだよね。駒数ガラス交換のはずが随分工数が掛かりましたが、じつはシャッターも気に入らない。遅いですね。こんなことなら最初から任せて頂いたらやり易かったのですが、最初にご依頼頂けないところが私の不名なところ。今回はこれ以上は手をつけません。勿論、駒数ガラスは新品に交換してありますよ。


稀少になりつつあるPEN-EES-2

2011年03月12日 12時37分13秒 | インポート

Dscf228866 みなさん、ご承知の通り未曾有の大災害が拡大しつつある国難の只中ですので、うかれたコメントの「今なに」更新は自粛したいと思いまが、ご心配を頂くメールも頂戴しておりますので、ご安心を頂く意味で更新をして行きます。昨夜は強い余震を心配して徹夜でテレビの報道をチェックしておりましたが、現在は、体感する余震も少なくなりましたので作業を再開しています。

最近、程度の良い個体を探すことが難しくなって来ましたPEN-EES-2です。外観は殆ど未使用の新品のような状態ですが、残念ながら露出計が作動していません。どうもメーターが不良のようですね。http://www6.ocn.ne.jp/~tomys800/


女子カメラのPEN-Fですが・・

2011年03月08日 01時08分15秒 | インポート

Dscf226558 女性オーナーさんのPEN-F #2127XXですが、少し前に一度修理に出されているとのことです。しかし、巻上げレバーもここで固着しており、うんともすんとも動きませんね。これは普通じゃありませんよ。だいぶ使い込まれて汚れた個体ですね。例のすっきり感がまるで無いのが気になります。

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女の子だから、もう少しカメラをきれいにしましょうね。ところで、裏蓋を開けてビックリ。シャッター幕が途中で止まっていますよ。フリーズなどではこのようにはなりません。シャッターのバネが折れたような場合にはなりますけど・・

Dscf226977 あれれ、マウントを分離してみると、なにやら紙で自作されたシムが入っていますね。こんなことする必要があるのかなぁ? 他の方がされることは分からないなぁ・・ボトムキャップにシールが貼ってありますからプロの方の作業なんでしょうね。

Dscf227091 分解してみると・・あぁ、ダメですね。アイドラーギヤ軸の軸ネジの頭が飛んでしまっています。こんな現象は滅多に無いのですがね。不思議なことに、飛んだはずのネジ頭がどこにも見つかりません。もう少し探してみますけどね。いやはや、女性の方の個体としては困りましたね。ご説明をしてもご理解頂けないでしょうしね。愛機は大変なことになっているのですよ。

Dscf227262 軸ネジの頭はギヤ列の中で見つかりました。画像のアイドラーギヤ上の右がそれで、ネジ部が折れています。左は良品ですがこのネジは緩み留めのために裏側からポンチ加工をされていますので普通は分離できません。(してはいけません)問題は地板に残ったネジ部分です。ポンチ加工がされていますので簡単には緩みません。かといって強い焼入れが入っていますのでリューターで削ることも出来ません。腕時計の世界では折れたネジを抜くための工具はありますが、今回のケースに有効かは分かりません。

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では、何故ネジ頭が飛んだのかです。頭のスリ割りには無理に回そうとした形跡はありません。そこで、シャッターを見ると右のハンマーは反時計回りで回転してコントロールレバーを叩きますが、レバーがこの状態で固着しているためハンマーが急停止をしたことが分かります。ははぁ、それが原因でアイドラーギヤに負荷が掛かり頭が飛んだものと推理します。スローガバナーの留めビスを観察するとスリ割が痛んでいますので、分解されてどうにかなっているのかも知れません。どちらにしても、この状態から「治せ」と言われれば治すことは出来ますが、他にもいろいろいじられて問題がありそうですから考え物ですね。ご説明をしてもオーナーさんは女性なのでご理解が頂けないでしょうし、費用も掛かりますからね。うちの在庫を代わりにお出しした方が良いかも知れません。