地震も心配ではありますが、仕事ですから作業を進めていきます。このPEN-S 2.8は少し前に他でO/Hをされているとのことで、駒数ガラスのみの交換をご依頼です。それでしたらO/Hの時に同時に交換してもらえば良かったのにね。では、カバーを分離しようとシューカバーを外してみると・・あらら、皿ビスの頭が折れて無くなっていますね。頭が無いということは前回の分解時には分かっていたことですね。
残ったねじ部を観察すると、これは斜めに入っていますね。無理にねじ込んで途中で固着してスリ割りの頭がちぎれたものでしょう。何やら瞬間接着剤も塗布されていますが、何の意味があるのでしょう。左の巻上げダイヤルも瞬間接着剤の白化が認められます。なにやらイヤな予感がしますよ。
すると、ポロッとダイヤルカバーが取れて来ました。観察すると、こちらも一度取り付け部が折れたものを瞬間接着剤で付けられています。修正するためにはダイヤルを分離する必要があります。で、スリ割りを回すと・・こちらもポロッと(もうイヤだ)取れて来ました。
瞬間接着剤の跡を見てください。スプロケット軸とスリ割り頭のセンターがずれています。ということは、ネジロックの意味で塗布されたものではなくて、頭が折れてしまったものをごまかすために瞬間で接着してあるということです。私のところでは、O/H時は2軸を分離洗浄してから組立ていますが、前回の修理屋さんがどのような作業をされているのかは不明ですからその時の作業とは断定できません。しかし、瞬間接着剤が好きな作業者ですよね。で、駒数ガラスの交換のみのつもりでしたが、「見なかったことにしよう」というわけにも行きませんよね。どうしましょう?
折れたビスが残った場合でも軽微なものは中心に下孔を開けて専用工具で取り出せる場合もありますが、この個体は全くビクともしない。仕方が無いので精密に削り取ってみます。この状態で観察すると、なんと、ネジ山がありません。ははぁ、ネジ山を壊したので瞬間接着剤で皿ビスを留めたのでしょう。それを知らずに、前回の修理屋さんがビスを緩めようとしたところ頭が取れたものと推理します。この個体はヤフオクでの入手だそうで、カメラに詳しい出品者だそうです。さて、どうしますかね? ネジ山が破壊されて内径が大きくなっている場合はタップで再生させることは出来ません。
慎重にネジを切りなおして何と皿ビスが入っていますね。スプロケット軸先端の折れて内部に残ったビスは特殊小作により取り出しています。こちらも瞬間接着剤が入っており、分離には苦労しました。
一度、スプール軸も全て分解して組みなおしています。いつものように本体と部品を洗浄されていませんので、何か気分が良くありません。ダイヤルカバーは取付け部が折れやすいので、接着修理は仕方ありませんが、接着が乱暴過ぎですね。ゴッテリ塗ったから強度が出るわけではありません。古い接着面を削り取ってから再接着で使用します。
一度組んだのですけどね。2回に1回巻上げダイヤルの固着で二重巻上げ防止機構が解除されない。規則性から、巻上げダイヤル下のギヤに問題があることは分かっています。分解すると、こちらにも瞬間接着剤が流れ込んでダイヤルとギヤが平行になっていないことが原因でした。こういう修理は「あとはどうなれ修理」って言うんだよね。駒数ガラス交換のはずが随分工数が掛かりましたが、じつはシャッターも気に入らない。遅いですね。こんなことなら最初から任せて頂いたらやり易かったのですが、最初にご依頼頂けないところが私の不名なところ。今回はこれ以上は手をつけません。勿論、駒数ガラスは新品に交換してありますよ。