今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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おかしなタイマーレバーのPEN-FT(B)

2011年03月27日 22時08分20秒 | インポート

Dscf236385 ペンスケ展のご常連さんからきれいなPEN-FT(B)が来ています。塗装の磨耗も最小で、ほとんど使用されなかったような個体ですね。銀座で入手されたそうで、さすがに良い商品が集まっているようです。ただし、問題ありで、セルフタイマーがグラグラで機能していません。セルフボタンも何やら変ですよ。どうも純正のボタンではなくて、瞬間接着剤で接着されており、ボタンを分離することが出来ません。出来ませんって言ったって、それではタイマーレバーが外れませんし、トップカバーも取ることが出来ませんよ。で、ボタンは外れぬまま、裏技でレバーを外したところです。

Dscf236575 よくよく観察すると・・・何をしてくれるのかなぁ、ボタンホルダーまで完全に接着されています。どうも素性の良くない方は瞬間接着剤がお好きのようですよね。私も全く使わないこともありませんが、1回使ったら、次に使う時には接着剤が硬化しているのが常ぐらい頻度は少ないです。

Dscf236725 なんとか分解してみるとね。ご覧のように内部まで接着剤が回っており、ボタンとしての機能は果していません。そのボタンですが、これはホームセンターに売っているアルミのリベットの頭を黒く塗装してものです。幸いアルミでしたので、ボタンホルダーのネジ山は壊されていいませんでした。

Dscf237154内部の瞬間接着剤を取り除いてあります。ボタンはうちのオリジナルを使います。ブラックモデル用は真鍮素材に塗装を施します。この修理も「あとはどうでも」修理なんですね。普通では二度と分解出来ない状態です。こんなに苦労しなくても、うちに注文してくれればすんだお話なんですけどね。しかし、この状態で銀座のショーウインドウに並んでいるんですね。なんか、タイマーレバーでこの個体のUPを終ってしまいそうです。

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では、おまけでもう一枚。めでたくトップカバーを分離して内部を点検して行きます。露出メーターユニット基板別体タイプですね。しかし、この個体#2799XXは確かに後期の個体ですが、工場で組まれたものではなくて、後にSSで交換されたものでしょう。ピンセット先のビスに塗布されているネジロックが合いません。そもそも露出メーターユニットには塗布された形跡もありません。

Dscf237351 さすが、ベテランマニアさんと言って差し上げたいのですが・・一杯食わされちゃったかも知れませんよ。まぁ、カメラとして完全であればそれはそれで良いとは思いますが・・(とフォローしている私って) 見る人が見るとこの景色はおかしいわけなんですよ。シボ革は両面テープ貼りでこれは良いとして、27万台としては本体が合いませんね。これは13万台までの初期型に属するボディーです。セルフタイマーはジジジッっという改良前のもの。前板を留めているビスがスリ割りですが、これは中期ぐらいまで。しかし、圧板は後期の2点留めタイプですね。これは36万台付近の部品です。上下カバーが殆ど新品と思われる部品というのもミステリーですね。上下カバーなど新品の部品を在庫していた修理屋さんが適当な本体と組み合わせて1台のブラックを作った? これは作ったご本人に聞いて見なければ推理はむずかしいところです。どちらにしても、この本体の製造された頃にはブラックは無いはずですから純正部品で作られたニセモノ(ちょっと可愛そうですが)と言わなければなりません。本体が初期であれば露出メーターユニットが交換されていても納得が出来ます。銀座でいくらで買ったのかなぁ ??

Dscf237455 長くなるのでシャッターは飛ばしますよ。状態は悪くはありませんでした。前板部分ですが、リターンミラーとフレネルレンズは非常にきれいです。ユニットは改良前のタイプですが、これも良好でした。ピント調整をされています。これらのことから前板はこのダイカスト本体とセットのものでしょう。最大に見て18万台ぐらいまでの可能性はあります。しかし、到底27万台には届きません。

Dscf237911完成。セルフタイマーレバーの白の色入れをしてから組立てています。ボタンもうちのオリジナルが付いています。

で、この個体のいわれですが、ボディーは中期までのタイプですが、消耗は少なく保存状態も良い。上下カバーや電池室など、細かな部品に至るまで新品(新品と言うところがポイント)で組まれた可能性が高い。裏蓋も蝶番のピンが一度抜かれていることから、交換されていることは間違いない。と言うことはどう言うことでしょう? 母体となるカメラを純正部品を使用して外装をブラック化して欲しいと依頼された可能性もありますが、その費用を考えれば本物のブラックモデルを探した方が良いですね。どちらにしても、このカメラはメーカーからの部品供給が受けられる環境にいたプロの方が作られた可能性が高いと思います。シボ革の両面テープの劣化状態やハーフミラーの曇り方を見ると5~10年ぐらい前に作られたものではないか? その頃でしたら、修理屋さんに部品として在庫が有ったのではないでしょうか? 少なくともアマチュアが部品を集めて組立てたとは思えません。ニコンのFなども、後年に部品組みのアイテム仕様が作られたようなお話しは聞いたことがありますね。

カメラとしてはO/Hを終えて調子は非常に良い状態にあります。個人として納得されてお使いになられるには何の問題もありませんけど、この個体が正真正銘のブラックモデルとして流通してしまうのはちょっと気になりますね。リペイント機でしたら、どなたが見てもオリジナルではないと判断が出来ますが、ここまで純正部品で巧妙に組まれてしまうと、私も分解してみなければ分かりませんでしたので・・・