PEN-D #1461XXとPEN-D3 #3431XXの兄弟が来ています。まずはPEN-Dからやりますけど、実家から発掘した個体でおそらく分解歴はないとのことですが・・トップカバーには両肩に目立つへこみがありますね。「と゜うしても直してほしい」とのことですが、角は治りませんし吊環の取り付け部もきれいには無理です。出来るだけというところでしょう。
分解歴はないとのことですが、何かのご記憶違いではないですか? 駒数カニ目ネジは孔が非貫通の古いタイプで分解された形跡があります。巻き戻しレバーのノブバネも裏返しにセットしてありました。
裏蓋を開けてみると・・あら、スプールを留めるナットが脱落してスプールも飛び出して来ました。
レンズを外してシャッターを見ると、カム板を留めるナットの位置が変わっていますね。赤いネジロックが工場が付けたもので、現状はそれより締め込まれた位置になっています。7時の位置に白いネジロックがしてありますから、ちゃんとした修理を受けていることが想像出来ますが、分解するとナットの締め込み位置は若干は変わる場合がありますけど、これはちょっと締め過ぎのような気もします。シャッタースピードのクリック感が弱くなったための調整かも知れませんが・・
シャッターはあまり良い状態ではありませんね。このシャッターとしては珍しく、内部の部品に錆が発生しています。保管が良くなかったと思われます。お決まりのフリクションの増大による不調です。ピンセット先のレリーズレバーはPEN-Sとは少し構成が変わっていますが、その中でも初期の部品ですね。この後に変更を受けます。レバーの作動ストッパーも取り付けられていません。(PEN-Sにはありません)左の部品が重要な部品ですが、この部分にも錆があります。研磨をする必要があります。
上の時計はセイコー・ジャイロマーベルで、1959年から製造された自動巻きの時計です。セイコーの自動巻きとしては二番目の機械ですが、初代は価格が高価であったことから市場では普及せず、実質的にそれ以後のセイコー自動巻きの祖となったモデルです。ケースは金メッキがほぼ剥離して、下地の銅メッキが露出した状態ですので、再メッキをする予定です。機械は作動はしていますが、リューズでの巻上げで異音が発生しておりO/Hが必要です。この頃の自動巻きは基本的にネジ巻きの機械に自動巻き用のローターを追加した構造のため、リューズでも巻上げが可能なのです。現在、入手出来るセイコーファイブなどはリューズでの巻上げは出来ません。作業の進捗は、ホームページの「今なに」でUP致しますのでご覧ください。
このシャッターには色々な問題がありました。まず、巻上げをミスすること。これはPEN-Sなどにも起こる不具合ですが、基本のシャッターは同じであっても、構成部品の違いから原因は異なります。次は、画像のヘリコイドねじ部とシャッターユニットの結合に緩みがあったこと。これですと鏡胴のガタ付きがあったはずです。D系の場合は、製造時期によって異なりますが、この個体は二つのユニットを連結させるためのピン(ネジ)が本来は対角で2つセットされる設計ですが、この個体のように→のみで対角側は省略されています。(↑のキー溝に嵌る)また、絞りリングの動きを規制しているブラシが本来は3個所ですが、→のように1ヵ所省略されています。
トップカバーの打痕は極力修正をしてありますが、角はへこんでいるのではなくて、潰れている(圧縮)わけですから元通りにはなりません。脱落していた露出計窓を再接着してありますが、このPEN-Dは内側からの接着でPEN-D3では外側からの接着になります。大きくなった露出計ユニットとトップカバー間のクリアランスを確保するための処置でしょう。シャッターは快調に作動しています。次はPEN-D3に掛かります。
PEN-D3ですけどね。この個体も分解歴がありますね。入手して一度も使用したことがないとのことです。ファインダーブロックの留めビスを見てください。Dは3個所でしたがD3は取り付けラグは残されていますが左下は省略しています。それは良いとして、2本のビスが逆に留められていますね。ここは、→部分は黒染めで右下は真鍮ビスが正規です。→部分のラグは塗装を掛けてありませんね。電気導通を確保するためです。そのため、腐食防止の黒染め処理が使われているのです。Dは、本体との電気的な接続はありませんので、3本すべて真鍮ビスになります。
シャッターの不具合はご指摘いただいておりませんが、ダメですね。低速側では、ご覧のように開きっぱなしです。このシャッターユニットも分解歴がありますが、前回やりましたD3と同じで30万台以降の個体ですから、シャッター内の部品が変更された後のユニットです。このユニットは古くなるとちょっと厄介ですよ。無神経な分解を受けていてダメージがあるとすると処置無し、部品を交換しなくてはなりません。製造が新しい個体がすべての点で良いわけではないのですよ。