今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

変なシボ革のPEN-W

2011年01月18日 21時54分40秒 | インポート

Dscf1825461 PEN-W #1064XXがオーバーホールに来ています。防湿庫に保管されていたようですがレンズに曇りとシャッターフリーズです。過去に分解修理を受けていますが、残念ながらあまり感心しない作業ですね。トップカバーの「W」が黄色になっていますね。余計なことを・・駒数ガラスは一度剥離して再接着をされていますが、トップカバーに密着せず、片側が浮いています。

Dscf182757 裏側がら見るとね。ゴム系の接着剤で接着されており、工場で接着されてエポキシ接着剤を取り除いていないため駒数ガラスが下がってしまっていたのです。接着も不完全でしたし、クラックも入っていますので一度分離して接着剤のカスをきれいに取り去りますが、エポキシはPEN-Sなどクロームメッキ部分は比較的剥離することが容易ですが、この個体のように塗装面は接着剤の食いつきが強くきれいに剥離することは非常に困難です。観察すると、前回の接着時にも剥がそうとナイフ様のものを当てたキズがあります。難しいので諦めたのでしょう。ここで諦めていたら満足の出来る仕上がりにはなりませんよ。ついでですからガラスは新品にさせて頂きます。

Dscf182961 タイトルのシボ革ですが、これ変なのです。シャッターユニットを取り出すためにシボ革を剥がしますが、すると何やら白っぽく変化します。観察すると、透明な樹脂のようなものを塗ってあって、シボ革の生地を曲げたために剥離をしたということです。改めて全体を見てみると、シボ革全体がマニュキュアを塗ったようにピカピカ光っています。まぁ、なんて事を・・オーナーさんが塗ったものではないと信じたいですが、全く余計なことを・・

Dscf183094 シャッターユニットはハウジングの留めビスのスリ割りが壊され放題。どうしたらこんなに無神経に部品を傷つけられるのか? よって、内部もダメですね。これでは動きません。

Dscf1836461 呆れ返って画像を撮るのもアホらしい。レンズの曇りも清掃出来ました。防湿庫保管でしたので悪化を防いだのでしょう。駒数ガラスは新品でトップカバーにぴったり密着しているでしょ。下がって接着すると針と干渉してしまうのです。調子は最高ですよ。くれぐれも余計なことはしないように。


Zuiko 20mm f3.5には気をつけましょう

2011年01月17日 22時37分31秒 | インポート

Dscf182327 リピーターのお客様からZuiko 20mm f3.5とPEN-FTが来ているのですけどね。何でも、珍しい20mmなので舞い上がって購入されたとのことですが、両方とも問題ありですね。いつも書いていますように20mmは前群の後ろのレンズが曇る持病がありまして、これは汚れや水滴ではなくて(稀に汚れもあるが)レンズ自体が曇っているのです。こうなると清掃ではきれいになりません。FTの方も、パッと見た時に違和感がありました。トップカバーは#244833ですね。熱心なファンの方ならこの画像の情報で「うん?変だ」とお感じになられたと思います。これはトップカバーの付け替えなんですね。巻き戻しダイヤルノブがローレット、裏蓋のフィルム押さえローラー横にリベットなし、半固定抵抗の露出計基板、駒数板の留めビス、等々から、この個体は24万台ではないと分かります。この頃はトップカバーの製造番号と実際に製造された年月が整列しておらず、かなりの範囲でバラバラに番号が出現してきます。トップカバーの番号は正数順に管理されて使用されたのではなくて、あるロットの範囲でランダムに使用されていたようです。トップカバーの良品の歩留まりなどもあって、欠番は相当出ていたのではないかと推測します。で、肝心の本体の番号は12万台から15万台、ことによると17万台も有りですが、部品の状態から初期に近い12万台(#118000も有り)付近と判断します。オーナーさんは下取りご希望ですが、このような個体は悩むところですね。


綿ボコリ入りのPEN-F

2011年01月15日 15時43分45秒 | インポート

Dscf1791651良くも悪くも無い微妙なコンディションのPEN-F #1511XXですよ。巻上げの感触は潤滑が切れてギシギシという感じ。角のへこみを修正のご依頼ですが、いつも言っていますように角はこの材料の板厚部分(0.5mm)は陥没していますので完全な修復は無理なんです。なるべく修正はしておきますが・・・

Dscf179415 それより問題は、巻き戻しダイヤル側のトップカバー留めビスの1本が固着してすでにスリ割りの半分(右部分)が折れて欠損しています。困ったね。PEN-Fは古いのでビスが固着している個体も多いのですが、分離をしなくては始まりません。リューターでビスの頭を削り取ってしまいます。

Dscf180079折れた真鍮ビスをダイカストの面一まで削ってから細いドリルで下孔を開けて段々と太いドリルに変えてねじ山部を残してビスを削り取ってしまいます。最後にタップを通してねじ山を再生しておきます。画像はねじ山再生後、M1.7ビスを通してテストしているところ。

Dscf179715 ところで、このカメラはどんな使われ方をして来たのでしょうね。ホコリと言うよりは綿ですよこうなると。今までで一番ひどい状態ですね。

Dscf180325 裏側から見ますよ。これすごいでしょ。フェルトの巾着袋のようなものに入れられていたのでしょうか? これはもう異常でしょ。見えない内部まで詰まっているのです。とにかく密閉性の悪いカメラですからね。しかし、この状態でも作動しているのだからね。腕時計ならケバが1本歯車に絡んでも止まってしまいます。さて、どうなるんだか・・・

Dscf181054_2 まるでテレビの裏側ですね。オークションで入手後、防湿庫に保管していたとのことですが、それ以前の状態がこれでは・・しかし、幸運なことにメカやプリズムなどは比較的良い状態でした。ブレーキのOリングは交換してあります。で、その時の画像は撮り忘れてこの状態。きれいでしょ。カメラの修理では部品を洗浄しない場合が多いようですけど、バイクのエンジンや腕時計のオーバーホールだって全て洗浄するのに、中間サイズのカメラは洗浄しないのは私には解せないのです。あの汚れ方ではブラシやブロアーで清掃しただけではこのようにはなりません。この状態で防湿庫に入れて欲しいものです。

Dscf181358 接眼枠ですが、この部品も大多数の個体で取り付けのビス孔部が割れています。ダイカストとの取付面の精度が甘く樹脂にストレスが掛かり続けている結果です。この程度(もっと崩壊状態のものもあり)のものは瞬間接着剤で補修して再使用としています。

Dscf181785 全反射ミラーはオリジナルも腐食自体はないのですが、反射率は低下していますので新品を使用します。プリズム関係は防湿庫保存が功を奏して良い状態を保っていました。しかし、リターンミラーだけはスリキズが多いのです。ホコリの付着したまでゴシゴシと拭いたのでしょう。ここは表面鏡ですからみなさんは拭いてはいけませんよ。ブロワーでホコリを吹き飛ばす程度。そもそも、ホコリを着けないように注意をすることです。

Dscf1818451 本体はこのように仕上がっています。きれいでしょ。トップカバー角のへこみは出来るだけ修正をしてあります。製造番号の色入れが抜けていましたので入れ直しておきました。

Dscf1821761 最後にセットされていた38mmレンズを清掃しましたが、前面のネームリング緩みのため、絞りリングから前が脱落したためクリックボール(ベアリング)を紛失して来ていました。最近この脱落が増えていますのでご注意ください。緩んでいる場合は、金属工具ですとキズを付けやすいので、ホームセンターで売っているイスやテーブルのゴム足で径の適当なものを入手して押え付けて接触圧力により時計方向に締め込んでください。ベアリングボール径は1/16≠1.58mmです。で、誇り高きPEN-Fの完成とします。


若い人には意味不明のダイヤル35

2011年01月13日 00時25分20秒 | インポート

Dscf177152 これは何だか分かりますね。キヤノンのダイヤル35ですね。当時、おもしろいデザインだなぁ、と思った記憶がありますが、修理となるとあまり好きなカメラではありません。商品的にはおもしろいんですが、奇抜なデザインを優先するために無理な機構をとって分解するのが非常に面倒な設計。今の若い人に「ダイヤル」って言ったって電話のダイヤルなんか知らないよね。そう言えば、刑事ドラマのダイヤル110番(古い)のタイトルに出てくる600型より古い電話機がまだ家にあります。若い頃に秋葉原の万世ビルのジャンク屋で買ったんだ。で、この個体は後期型で北米に輸出されたBELL&HOWELLバージョン。外観はきれいであまり使われなかったのでしょう。イーベイで入手されたのかな? しかし、シャッター羽根が途中で開きっぱなしになっています。で、めんどくさい分解ですが、マニュアルは初期型のモーター部で後期は強化されたタイプ。左に回すと外れるとなっているが、後期型はナット締めになっているので外れません。専用の薄レンチで外します。またまた、そう言えば、ベルハウエルは映写機やOHPなどを作っていて、東京の東村山に工場がありました。じつは、私が営業で担当していたことがありました。しかし、その直後に撤退して行きました。担当の女性は英語が出来て、ハイセンスな方だったなぁ・・

Dscf177333 お話しが横道に逸れました。で、このように分離しています。モルトはベトベトでいつも触りたくないんだよなぁ。果たして治るのでしょうか?

Dscf177575

ご覧のようにシャッター羽根が開いたままになっています。レンズもかなり曇っていますね。しかし、北米にあったものと見えてカビのような湿気によるダメージはないようです。この時点であつちこっちに貼られたモルトの残骸を清掃しておきます。デザインを優先させるために無理なレイアウトのため、異常にモルトの部分が多くて閉口します。

Dscf178065 すみません。昨夜は2時過ぎまでやっていましたので画像を撮るのを忘れました。カメラとしてはどってことないメカですので組み直して正常に作動しています。こうやって見れば、変なところにレリーズボタンが付いているカメラというだけですね。

Dscf178162 後期というのか2型というのかはファインダー窓横にプレートがおごられています。横に筋状の接触キズが目立ちますね。このタイプはハードケースに入っていたはずですけど、内部で接触していたのでしょうか? 確かに懐かしい電話のダイヤルがありますね。

Dscf178315 内部の様子。1型とは電池を押えるレバーの基点が逆なんですね。この手のカメラのお約束で、ダミーのフィルムをセットしませんとシャッターは切れません。(スプロケットを巻けば切れますが)ファインダーのミラーなども全く劣化していない状態でした。

Dscf178798 国内にあった個体は乱暴な分解を受けてケースがアルミアルマイト処理のためキズだらけになっているものが多いですね。この個体は非常にきれいです。たぶん、使い始めた初期に故障をして修理をしないまま保管されていたのではないかと想像します。変り種のカメラをコレクションしたい方は欲しいのでしょうね。治す方はストレスが溜まりますけど・・


結構初期のPEN-S 2.8

2011年01月11日 00時55分15秒 | インポート

Dscf1752851 かなり昔に購入したPEN-S 2.8 #1785XXを久しぶりに使おうとしたらシャッターが不調とのこと。PEN-Sとしては初期の個体で1961年-8月の製造だと思いますから生産を始めて1年目というところでしょうか。コパルでのシャッターユニットは6月の完成で、通常はタイムラグは1ヵ月程度ですから夏休みが入ったのでしょうかね? 初期の個体としては外観や保管状態も良好で未分解の個体でした。あまり複数のオーナーを点々としなかったのでしょう。しかし、工場を出たままの状態ではシャッターはちょっと辛い時期です。オーバーホールとこの頃の駒数ガラスにお約束のクラック入りのため、新品に交換をご希望です。

Dscf175752 シャッターユニットを全て分解したところ。このユニットも製造時期によって少しずつの変更がありますが、このユニットは最初期の仕様となっています。元々、国内ではシャッターは時計メーカーが製造しているものが多いのですが、このユニットは小型ということもあってより時計に思想は近い設計だと感じます。コパルはオルゴールメーカーが有名でしたが、諏訪地区ですので精工舎などへの部品供給もあったのではないでしょうか。状態ですが、この頃の個体に多いシャッター羽根の腐食も無く良好な状態。3時位置の部品が6時位置のスローガバナーを叩く部分に僅かに打撃磨耗が認められます。潤滑が無い状態で使用を続けるとなります。症状が進むとシャッターが開きっぱなしでフリーズしてしまいます。

Dscf176075 その部品たちを全て洗浄してから組立をします。腕時計の部品サイズに慣れていると巨大な部品に見えますけどね。サイズ的には懐中時計程度のサイズなんですけどね。

Dscf176548 シャッターユニットが完成しています。初期の製品ですとシャッター羽根は一見きれいに見えますが、じつは表面は赤錆が発生しているケースが多いのです。当然、作動抵抗となっています。この個体の場合も全体の赤錆のほか、一枚だけ腐食が進んだ羽根がありますので、他の羽根と干渉しない一番前にセットしてあります。では、洗浄済みの本体に組み込んで行きます。

Dscf177057 このように完成しています。初期のPEN-Sとしては程度は良好ですね。ファインダーのリンクル塗装ハゲもありません。駒数ガラスは交換してありますが、駒数カニ目ネジは初期型の特徴であるカニ目孔非貫通タイプです。調子は最高だと思います。