かなり昔に購入したPEN-S 2.8 #1785XXを久しぶりに使おうとしたらシャッターが不調とのこと。PEN-Sとしては初期の個体で1961年-8月の製造だと思いますから生産を始めて1年目というところでしょうか。コパルでのシャッターユニットは6月の完成で、通常はタイムラグは1ヵ月程度ですから夏休みが入ったのでしょうかね? 初期の個体としては外観や保管状態も良好で未分解の個体でした。あまり複数のオーナーを点々としなかったのでしょう。しかし、工場を出たままの状態ではシャッターはちょっと辛い時期です。オーバーホールとこの頃の駒数ガラスにお約束のクラック入りのため、新品に交換をご希望です。
シャッターユニットを全て分解したところ。このユニットも製造時期によって少しずつの変更がありますが、このユニットは最初期の仕様となっています。元々、国内ではシャッターは時計メーカーが製造しているものが多いのですが、このユニットは小型ということもあってより時計に思想は近い設計だと感じます。コパルはオルゴールメーカーが有名でしたが、諏訪地区ですので精工舎などへの部品供給もあったのではないでしょうか。状態ですが、この頃の個体に多いシャッター羽根の腐食も無く良好な状態。3時位置の部品が6時位置のスローガバナーを叩く部分に僅かに打撃磨耗が認められます。潤滑が無い状態で使用を続けるとなります。症状が進むとシャッターが開きっぱなしでフリーズしてしまいます。
その部品たちを全て洗浄してから組立をします。腕時計の部品サイズに慣れていると巨大な部品に見えますけどね。サイズ的には懐中時計程度のサイズなんですけどね。
シャッターユニットが完成しています。初期の製品ですとシャッター羽根は一見きれいに見えますが、じつは表面は赤錆が発生しているケースが多いのです。当然、作動抵抗となっています。この個体の場合も全体の赤錆のほか、一枚だけ腐食が進んだ羽根がありますので、他の羽根と干渉しない一番前にセットしてあります。では、洗浄済みの本体に組み込んで行きます。
このように完成しています。初期のPEN-Sとしては程度は良好ですね。ファインダーのリンクル塗装ハゲもありません。駒数ガラスは交換してありますが、駒数カニ目ネジは初期型の特徴であるカニ目孔非貫通タイプです。調子は最高だと思います。