今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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綿ボコリ入りのPEN-F

2011年01月15日 15時43分45秒 | インポート

Dscf1791651良くも悪くも無い微妙なコンディションのPEN-F #1511XXですよ。巻上げの感触は潤滑が切れてギシギシという感じ。角のへこみを修正のご依頼ですが、いつも言っていますように角はこの材料の板厚部分(0.5mm)は陥没していますので完全な修復は無理なんです。なるべく修正はしておきますが・・・

Dscf179415 それより問題は、巻き戻しダイヤル側のトップカバー留めビスの1本が固着してすでにスリ割りの半分(右部分)が折れて欠損しています。困ったね。PEN-Fは古いのでビスが固着している個体も多いのですが、分離をしなくては始まりません。リューターでビスの頭を削り取ってしまいます。

Dscf180079折れた真鍮ビスをダイカストの面一まで削ってから細いドリルで下孔を開けて段々と太いドリルに変えてねじ山部を残してビスを削り取ってしまいます。最後にタップを通してねじ山を再生しておきます。画像はねじ山再生後、M1.7ビスを通してテストしているところ。

Dscf179715 ところで、このカメラはどんな使われ方をして来たのでしょうね。ホコリと言うよりは綿ですよこうなると。今までで一番ひどい状態ですね。

Dscf180325 裏側から見ますよ。これすごいでしょ。フェルトの巾着袋のようなものに入れられていたのでしょうか? これはもう異常でしょ。見えない内部まで詰まっているのです。とにかく密閉性の悪いカメラですからね。しかし、この状態でも作動しているのだからね。腕時計ならケバが1本歯車に絡んでも止まってしまいます。さて、どうなるんだか・・・

Dscf181054_2 まるでテレビの裏側ですね。オークションで入手後、防湿庫に保管していたとのことですが、それ以前の状態がこれでは・・しかし、幸運なことにメカやプリズムなどは比較的良い状態でした。ブレーキのOリングは交換してあります。で、その時の画像は撮り忘れてこの状態。きれいでしょ。カメラの修理では部品を洗浄しない場合が多いようですけど、バイクのエンジンや腕時計のオーバーホールだって全て洗浄するのに、中間サイズのカメラは洗浄しないのは私には解せないのです。あの汚れ方ではブラシやブロアーで清掃しただけではこのようにはなりません。この状態で防湿庫に入れて欲しいものです。

Dscf181358 接眼枠ですが、この部品も大多数の個体で取り付けのビス孔部が割れています。ダイカストとの取付面の精度が甘く樹脂にストレスが掛かり続けている結果です。この程度(もっと崩壊状態のものもあり)のものは瞬間接着剤で補修して再使用としています。

Dscf181785 全反射ミラーはオリジナルも腐食自体はないのですが、反射率は低下していますので新品を使用します。プリズム関係は防湿庫保存が功を奏して良い状態を保っていました。しかし、リターンミラーだけはスリキズが多いのです。ホコリの付着したまでゴシゴシと拭いたのでしょう。ここは表面鏡ですからみなさんは拭いてはいけませんよ。ブロワーでホコリを吹き飛ばす程度。そもそも、ホコリを着けないように注意をすることです。

Dscf1818451 本体はこのように仕上がっています。きれいでしょ。トップカバー角のへこみは出来るだけ修正をしてあります。製造番号の色入れが抜けていましたので入れ直しておきました。

Dscf1821761 最後にセットされていた38mmレンズを清掃しましたが、前面のネームリング緩みのため、絞りリングから前が脱落したためクリックボール(ベアリング)を紛失して来ていました。最近この脱落が増えていますのでご注意ください。緩んでいる場合は、金属工具ですとキズを付けやすいので、ホームセンターで売っているイスやテーブルのゴム足で径の適当なものを入手して押え付けて接触圧力により時計方向に締め込んでください。ベアリングボール径は1/16≠1.58mmです。で、誇り高きPEN-Fの完成とします。