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今日の筆洗

2016年09月10日 | Weblog

 もしも三十五億年の生命の歴史を一時間に縮めると…。最初の一秒で単細胞生物が生まれ、五十一分十秒もたってから魚が登場する。恐竜は五十六分に現れ、三分後に絶滅。現生人類の誕生は五十九分五十九秒八の出来事だ▼『もしも地球がひとつのリンゴだったら』(小峰書店)は、大きなスケールの出来事を身近な尺度に置き換えて見せてくれる絵本だ。地球をリンゴにたとえれば、人が住めるのは、八分の一。だが、その中には農業に向かない土地が多く、都市化で失われた農地も多いので、リンゴを三十二等分した小さな一かけの土地で、人類の食べ物は生産されているそうだ▼そんな本をめくりながら、つくづく感じるのは、人の傲慢(ごうまん)さ、あさはかさだ。五十九分五十九秒八に現れたばかりなのに、たった〇・二秒後に自らを絶滅させるほどの核兵器を、手放そうとしない▼きのう核実験を強行した北朝鮮は、「われわれの尊厳と生存権を守り、真の平和を守るため」に核兵器が必要だと声明を出したそうだが、その「われわれ」とは、誰のことか▼人の寿命を砂浜の足跡にたとえれば、わずか五歩の足跡も残さずに死んでしまう子は、日本や韓国では千人のうち三、四人。だが、北朝鮮では二十七人もいる▼国の富を子どもの命を守るために使わず、人殺しの道具に費やす。「われわれ」という言葉の何と虚(うつ)ろなことか。