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今日の筆洗

2016年09月28日 | Weblog

 十一歳の女の子がある男に手紙を書いた。一八六〇年十月のことである。「あなたにどうしても大統領になってほしいのです。だから、ほおひげを生やしてください。ひげを生やせば、あなたのやせた顔がもっと立派に見えるからです。そうすれば大統領になれるでしょう」▼手紙をもらった男はどうしたか。女の子の指示に従い、ほおひげを生やした。十六代米大統領エーブラハム・リンカーンである▼ひげのない写真のリンカーンはなるほど神経質で温かみのない人物にも見える。少女の助言なくば、歴史は変わっていたか▼選挙、とりわけ米大統領を目指す戦いにおいて候補の外見や印象はリンカーンの昔から大きなカギであろう。昨日の米大統領選挙のテレビ討論会。真っ赤なスーツのクリントンさんに若々しい青のネクタイのトランプさん。いずれも外見の方は申し分ない。されど印象は、である▼予想通りの非難合戦となった。攻撃あるのみのトランプさん。半ば軽蔑まじりの冷笑で応えるクリントンさん。なるほど「不人気」同士のお二人で、双方ともに印象はよろしくない▼憎悪、意見対立による分裂した社会。それは間違いなく、米国が抱える悩みだが、二人の討論からは国民を協調や理解へと導く糸口もなければ、雰囲気もうかがえぬ。選挙後が心配である。あの少女、二人に何か助言の手紙を書いてくれまいか。