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今日の筆洗

2016年09月06日 | Weblog

 「ごらんよ、あそこで、ハトの豆を売っているおばあさん。子どもの時に連れてきてもらって見た時にはもう既にああいうおばあさんだったんだよ。ときどき見ても全然変わっていない」▼落語の「付き馬」の一場面だが、こういうことはよくあるのではないか。子どもの時のあいまいな記憶や高齢者への印象、思い込みが「幻覚」を見せるのか。変わらぬお顔が懐かしく、幼き日の「あの時」へと戻ったような気にもなるものだ▼おばあさんから突然に店をたたむと告げられたような寂しさである。両津勘吉がいなくなる。「週刊少年ジャンプ」で、四十年間連載を続けていた秋本治さんの「こちら葛飾区亀有公園前派出所」が十七日発売号で最終回となるそうだ▼長きにわたって子どもと遊んでくれた主人公である。子どもの気質も興味も大きく変わる中で時代時代の子どもの心をつかみ続けた。おそらく空前絶後となる異例の長期連載は秋本さんの研究とお人柄によるものだろう▼「遊んでくれた」と書いたが、両さんは「遊んでやる」ではなく、子どもとともに「遊んでいる」人物だろう。子どもと同じ立場、同じ考えで笑う両さんだからこそ定年まで十年もないわが身を含め、いつの時代の子どもも心を許し慕った▼いつでも会えると思っていたので長い間、会いに行っていない。そうか、あの場所からいなくなるのか。