ファンタジアランドのアイデア

ファンタジアランドは、虚偽の世界です。この国のお話をしますが、真実だとは考えないでください。

「債務のワナ」に関するメディア報道を考える   アイデア広場 その412

2018-10-26 19:55:25 | 日記

 小国を借金漬けにする「債務のワナ」の報道が、大きく紙面を占めるようになりました。中国の投資規模が巨額で、大半を融資で手当てするために、「小国を借金漬けにした」との批判的記事が増えています。実際に、スリランカは借金返に行き詰まり、整備した港湾を中国に実質譲渡しています。ザンビアに進出した中国の金属企業の鉱山現場労務環境等の悪さは常に指摘されています。債務のワナに、資源の収奪という記事が報道されています。
 そこで、この報道を少し深掘りしてみました。継続的に紙面で大きく報道される場合、その裏に何か理由があるのではないかという疑問が生じてきました。昔、湾岸戦争ではアメリカを中心としたメディアが流した記事を、日本の報道機関は世襲して報道を繰り返しました。結果として、湾岸戦争の大義名分であった大量破壊兵器はイラクに存在しませんでした。ある面で、虚偽の報道をしていたわけです。真実を報道するメディアが、なぜ間違った報道をしていたのか興味のあるところです。一般的に、アメリカ政府や議会が問題にした話題は、日本の新聞社は大きく取り上げざるを得ない立場にあるようです。これは、日本の報道の流れを見れば、明らかになることです。一方、アメリカが敵対する国々に関する報道は、アメリカ側が提供する資料をベースに報道を組み立てているようです。
 このパターンは、ヨーロッパに関しても同様のようです。ヨーロッパの主要報道機関の記事を日本は世襲する傾向が見られます。例えば、独裁者ムガベ大統領が支配したジンバブエについて、ヨーロッパのメディアは、拷問や汚職、そしてハイパーインフレについての報道を30年以上続けてきました。白人の農地を略奪し、結果として豊かなローデシアの農地を荒廃させていったという報道を繰り返したわけです。この報道に、日本のメディアも同調します。非人道的行為が繰り返されているわけですから、当然でしょう。でも、アフリカ側からの報道が非常に少ないことに違和感を抱きました。白人から農地を略奪した理由の一つは、イギリスとの約束が施行されないことにありました。イギリスとの約束は、白人の土地を補償する代わりに、ジンバブエに資金援助をするというものでした。この約束が反故同然になったために、白人の土地を黒人に配布したという経緯もあったのです。このような報道を行った日本の報道機関は、少なかったようです。
 中国によると、一帯一路沿線の64カ国向けの直接投資が、2017年に過去最高になったとの説明がありました。一帯一路の直接投資が、2017年に前年比32%増の201億ドル(2兆2千億円)になったというのです。あるアメリカのシンクタンクによると、「債務のワナ」に陥るリスクがある国としてキルギス、モルディブ、ラオス、ジブチ、モンゴル、モンテネグロ、タジキスタン、パキスタンの8カ国を上げています。一方、中国商務省によると、これら8カ国向けの投資は2017年に計22億ドルと前年より43%増えたと報告しています。
ちなみに、債務金額の多い順に、シンガポール63億ドル、カザフスタ20億ドル、マレーシア17億ドル、インドネシア16億ドルが上げられていました。この投資は、港湾、鉄道、道路などインフラ投資が多いのです。国の経済成長を考慮すれば、必要なインフラになります。成長して国が豊かになれば、借りたお金を返すことも可能です。日本も名神高速道路などでは、外国からお金を借りて作りました。そのお金は、利子を付けて返還しています。でも、アフリカ南部のザンビアは、中国の支援で整備した高速道路の建設費用の返済に窮している実情もあります。中国からの支援の受け入れに、躊躇する国も出てきているわけです。「債務のワナ」と呼ばれる問題に対して、報道の紙面が大きくなっています。
 そこで、再度少数派のアフリカの声を拾い集めてみました。中国が2001年から10年の間にアフリカに供与した融資額は、672億ドルで世銀より多いのです。イギリスやフランス、そしてポルトガルなど旧宗主国の援助にくらべ、比較にならない融資を継続的におこなってきたわけです。中国は、1950~60年代の民族解放闘争を支え、その後も良好な関係を保ってきたという歴史があります。アフリカ諸国の軍事訓練に協力し、アフリカ諸国の軍隊を整備する支援も行ってきました。この軍隊が、曲がりなりにも治安の維持に力を発揮しています。その治安の安定が、現在のアフリカの経済成長を支えているともいえます。アフリカの一般知識人は、「債務のワナは中国が最初から意図したわけではなく、結果的にワナのようになった」と好意的に解釈しています。一帯一路をめぐっては、インフラの整備資金に悩むアフリカ諸国は歓迎するムードがあります。歴史に根差す親中意識は、アフリカの諸国において見過ごせない要素になります。
 蛇足ですが、国際社会では、アメリカも中国も、そして多くの国が嘘をつきます。その嘘を大きく取り上げるか、取り上げないかは、メディアの裁量によります。そのメディアの裁量を左右する中心にいる人達の思考方式をいつか知りたいものです。