ファンタジアランドのアイデア

ファンタジアランドは、虚偽の世界です。この国のお話をしますが、真実だとは考えないでください。

お酒のメリットとデメリット  アイデア広場 その1366

2024-03-09 18:18:40 | 日記


 世界保健機関(WHO)の2022年の報告によると、飲酒関連の死亡者は世界で年300万人超える数字になります。飲酒関連で死亡した人は、世界中の死亡者のうち、5.3%を占めるまでになっています。ました。亡くなった方の多くは、アルコール依存症に陥っていた方ということになります。5.3%という死亡率は、先進国で問題になっている糖尿病の2.8%をはるかに上回る死亡率なのです。ちなみに、エイズによる死亡者が100万人で、マラリアによる死亡が43万人です。いかに、アルコール依存症の影響が大きいのかが理解できます。この問題には、各国も対策を取っています。
 各国の対策の中には、興味深いことが起きています。約9兆円の資産を運用するノルウェー最大の年金基金組織が、アルコールやギャンブル企業の株式を売却し始めました。年金を運用する組織は、いろいろな株式や債券を組み合わせながら、基金を増やすように運用していきます。年金受給者は、運用効率を高めてもらい、手取りを多くして欲しいわけです。でも、効率運用一辺倒では、満足しない年金受給者も増えてきています。いわゆる「罪ある会社を」を除外する風潮です。ノルウェーでの暴力事件の半数以上は、アルコールが関係しているといわれています。アルコール関連の社会的費用は、推計年間2200億円に達しています。これは、社会的に負の要因になっています。アルコールを将来にわたって、社会の安定的に発展することの障害になると判断したわけです。投資が収益だけでなく、持続可能な社会の発展につながるようにする方向に動いている事例になります。この反対に、社会的に正の要因になる事業には、支援がさしのべられるということになります。今回は、アルコールの問題に取り組んでみました。
 アルコールを含むお酒は、なぜ飲まれるのでしょうか。この答えは、心地よさを求めるからということになります。人間は、脳の報酬系が活性化されると快感を覚えます。報酬系は、脳の1つの場所にあるものではなくし様々な機能を持った脳のネットークから成り立っています。この報酬系には、普段神経が働いてブレーキをかけているのです。アルコールは、神経が制御している報酬系のブレーキを弱らせて、ドーバミンを分泌させる作用があります。ドーパミンの分泌は、ヒトに快感をもたらします。蛇足ですが、アルコール以外にも、このような作用を引き起こすモノやコトがあります。いわゆるプロセス依存というというもので、物質ではなく特定の行為や過程に必要以上に熱中し、のめりこんでしまう症状があります。具体的には、ギャンブル、インターネット、セックス、買い物、仕事などなどの中毒と言われるものです。これらに対する「耐性」ができると、日常生活で分泌されるドーパミン程度では、心地よさを得ることができなくなります。アルコールに溺れる方は、快感を得るためには、酒量を増やしていくことになります。
 このような、アルコールの誘惑から抜け出した女性もいます。一線で働く40代のある女性は、大量飲酒の習慣から抜け出せないと感じていました。飲酒することで、仕事や家のことに追われるつらさをやり過ごしていたのです。飲酒することで、不安を紛らわせていたことに気が付いたわけです。この女性は、多少の手立てを講じるぐらいでは大量飲酒から抜け出せないと考えました。そこで多くの人が禁酒する年初めの1月に加えて、12月にアルコールを断つことにしたのです。彼女は「盛大な飲み納めはなし」と決めました。ジントニックを2杯だけ飲んでベッドに入り、「これでおしまし.自分に言い聞かせた」のです。断酒すると心身ともに調子がよくなったので以来、一滴も飲んでいないという事例になります。このように断酒する行為は、大病を患った方などには良く見られる光景です。
 面白いデータがあります。中高年の方は、アルコールに頼る傾向が高く、35歳以下の人はアルコールにはあまり頼らないことが分かってきました。若者が、アルコールに頼らない合理的で、なおかつ悲しい事情も徐々に分かってきました。若者は人生経験が少なく、先が見通しづらい状況に慣れていないため、ストレスには弱い傾向があります。彼らは、50歳より上の人より抑うつ状態や燃え尽き症候群になりやすいのです。でも、若者には強い見方も現れました。SNSで、気軽に打ち明けられる環境が整ってきました。問題をオープンに話せることは、大変好ましいことなのです。精神的不調を隠さなくていいという意識の下で、容易にSNSで打ち明けられるツールを手に入れたわけです。問題をオープンに話せることは、飲酒に頼るよりは望ましいことです。もはや飲酒が、若い世代にとって当たり前のストレス解消法ではなくなりました。でも、中高年は心の問題を明け透けには語る場がありません。自分が不安障害やうつ病だとは認めない傾向が強いのです。若者は、ストレスから逃避するいくつかの手段を持っています。中高年の逃げ場は、若手より過度な飲酒に頼ることになったわけです。
 ドーパミンとは逆の作用をするセロトニンなどの抑制物質は、過度な興奮を抑えてくれます。サルの集団では、ボスザルとランクの低いサルを比べると、脳内の機能が違うことが知られていいます。ボスザルは、セロトニンを豊富に分泌し、セロトニンの働きが活発です。セロトニンの働きが悪いと不安が強くなり、おどおどびくびくして心配やストレスが増大していくのです。「ボスざる」のようにセロトニンが多ければ、集団の統制を冷静に行うことができるようです。これを、人間の職場に持ち込むという発想がでてきます。グーグルは、成果をあげるチームとあげないチームを調べたことがありました。これによると、チームのメンバーが優秀か、どんな人材なのかはあまり関係ないようです。チーム内に心理的安全性が確立されている場合に限り、多様性の発想や創造性が得られるという結果になったのです。その心理的安全性は、本当にありきたりのものだったのです。最も心理的安全性を感じることとは、「他愛のない雑談ができる」ことでした。次に、「心身の状態を配慮し合える」とか「人格や発言をむげに否定されない」などになります。良いチームは、メンバーが互いの考えを尊重する気風があり、間違いを認めたり、リスクをとってチャレンジしたりできる安心感が、チーム内にあったということです。このようなコントロールを、チームのリーダーが行うことができれば、チームとして効果をあげることができます。仕事中毒の人は、快楽の中で働くことができます。もっとも、快楽だけでは、人間失格になってしまいます。適度な雑談や心身の安心という快楽を享受しながら、セロトニンで過度の依存症を抑える職場も楽しいかもしれません。快楽のしくみを知り、それをコントロールすることを「ボスざる」の統治能力を学ぶ必要もあるようです。
 最後は、日本酒のお話しになります。大豆などの穀物に、カビなどの微生物を生育させたものを「麹」といいます。麹菌は、発酵の過程でコウジ酸とよばれる有機酸を生産することは古くから知られていました。麹菌は清酒、醤油、味噌、焼酎の醸造に欠かせない微生物です。以前から、種麹屋は、味噌や醤油の製造業者にも専用の麹を供給しています。さらに時代が進み、酒造りのためのカビを専門に造る技能集団が現れます。専門の技能集団(杜氏や蔵人)が、酒造家にカビを供給するようになります。清酒醸造の職人である杜氏と蔵人たちは、季節労働者であり、夏は農業に従事しています。発酵槽の温度が上がりすぎると、酒酵母よりも先に乳酸菌が繁殖してもろみが台無しになります。発酵槽である樽のもろみの温度が上がらないように雪の積もる厳寒の気温が必要だったのです。冷凍機のなかった時代は、人為的に温度を下げることができなかったわけです。新酒は、冬の風物詩でもあったわけです。「酒は百薬の長」と昔から、言い伝えられてきました。お酒に、いくつかの格言と作法がありました。「酒は飲むべし、飲まれるべからず」などの格言があります。これらは、適度にお酒を楽しみながら、人々と程よいコミュニケーションをとることが、望ましい人間関係を築くことを経験的に示しているようにも思えます。

 蛇足ですが、農作業を行う人々は逗しく日焼けした手をしてしました。皮膚が黒くなるのは、メラニンという色素が沈着するためです。でも、清酒造りに携わる杜氏などの手は、不思議と白く、綺麗になることが昔から知られていました。ある企業が、コウジ酸がメラニン合成酵素であるチロシナーゼの働きを抑えることを発見しあました。1976年頃、この企業がコウジを含む美白剤を開発し化粧品として販売しました。お酒には、まだまだビジネスチャンスが眠っているようです。