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TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」223

2020年06月23日 | 物語「約束の夜」

「………聞いた事がある」

ツイナが呟く。

「司祭様が言っていた。
 使ってはいけない、禁じられた術がある、と」

でも、そんな事が、と
頭を振る。

「曰わく」

父親が続けるように言う。

「瀕死の怪我や病を治すことが出来る」
「魔法を使えない者が
 強力な力を持つことが出来る」

す、と
自分の胸に手をあてる。

「衰えた体を、若返らせる事が出来る」

「若返り?」
「それが目的なの?」

なんなら、と父親は言う。

「この術は、死んだ者すら
 生き返らせることが出来るそうだ」

「………そんな夢みたいな話」

「ああ、夢の様だろう。
 誰もが一度は願うことだ」

歳を重ね衰える体に向き合う毎に、
無力を思い知る毎に、
色々な物を失う毎に。

「なんで?」

京子が問う。

「なんで私達なの?」

「簡単だ」

父親は皆を見回す。

「この魔法は、
 血の繋がりが濃いほど力も強くなる」

親、兄弟、そして子供。

「反対に、
 赤の他人であれば、
 村一つ消える人数が必要だ」

人の血を、命を使い、
成し遂げられるもの。

「そんな事、許されるわけがない」

「ああ、俺もそう思うよ」

父親が頷く。

「他人を犠牲にして
 好き勝手が出来るなんて
 筋が通るわけ無いよな」

「………分かっているじゃない」

父親は、道理を理解している?
では、なぜ?

「だったらこんな事」

「自分の事は自分でしないといけない。
 子供が8人必要であれば
 揃えるしかない」

そうすれば、文句は無いだろう、と。

つまり、京子達は
この儀式のためだけの子供達。

だからチドリは言っていたのだ

俺達は役目の為だけに準備された子供、と
今まで何も知らずに
幸せだったなお前達、と。

「八つの一族全てを揃えるのは苦労した。
 よく無事に育ってくれたな。
 どこかで勝手に死んでくれなくて何よりだ」

そう、笑顔で言う。

「………嘘よ、そんな、私達」

そんなの、人でもなんでもない。
ただの道具。

「待って」

マサシが言う。

「今、子供は8人と言ったわね。
 それはどういう事?」

ここに揃った、子供達は9名。
数が合わない。

「単純な話だ」

チドリが父親の代わりに答える。

「若返っても、また人は歳をとる。
 血は、常に必要だ」

また、次の術を使うために。

「それに、後継者も、必要だろう」

八つの一族。
必要なのは8人の子供達。

各一族一人と言う事であれば
余るのは一人。

京子は耀の方に振り返る。

「………お兄ちゃん?」





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