TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」221

2020年06月16日 | 物語「約束の夜」

扉が開かれる。
無機質な広い部屋。

そこにいるのはただ1人。

「やあ、」

そうやって笑顔で皆を出迎える。

「待っていたぞ」

「「「………っ」」」

京子達は思わず動きを止める。

先程魔法で見た映像と同じ、
でも、少し歳を重ね、
年相応の顔付きになった、男。

「はじめましての奴が多いな。
 俺は、翼。一応西一族だ。
 今はこの裏一族をとりまとめる者の1人だ」

「あなたが、私の父親?」

「ええっと、西一族の、そう、確か」
「京子だ」

耀が付け足すように言う。

「そうそう、京子。
 良く来たな」

確かに、京子やマサシに顔立ちが似ている。
けれど、同じ顔であっても
雰囲気が違う。

父親に会う時は
もっと違う感情が生まれるのだと思っていた。

例えば、会えて嬉しい、とか
なぜ、家族を捨てたのかという恨み、とか。

「………」

昔の出来事を見せられた時は
酷い人だけれども、
それでも何か感じる物があった。

今感じるのは
全く違う感情。

怖い。

この人は、
出会ってはいけない人。

この区域に足を踏み入れたときから
姿を現さない沢山の使い手達に
見張られていた。

その、彼らを従える人。

「立ち話もなんだ、
 まあ、座れ」

そう、皆に告げる。

「俺達をどうするつもりだ?」

言葉を遮るように
満樹が問いかける。

「待て待て、お前は、東一族……なんだったっけ?」

悪いな、と彼は言う。

「どうにも名前までは
 はっきり覚えていなくてな」

「名を呼んで貰うつもりはない」

「そう拗ねるな。
 俺の大切な子供達」

大切な。

そう言えば、
耀も京子に同じ事を言う。
自分の妹だ、心配している、血の繋がった兄弟。

今までそう受け止めて来たけれど。

「………」

不安を覚え京子は耀の方を見る。
けれど、耀と目線は合わない。

そんな京子の事など誰も気がつくわけではなく
彼らの話は進んでいく。

「特に、チドリとカナメは
 心配していたんだ」

うんうん、と彼は言う。

「カナメ……?」

誰、という反応に、
おや、と彼は言う。

「お前だよ、ほら、海一族の。
 おかしいなその名を付けと言っていたんだが」

俺か、とツイナが唸る。

「……マジでもう一つ名前あったんだ。
 俺ってもはや、対名でなく三つ名なのでは」

「俺の血を引いていて、魔法が使えるのは珍しい。
 横取りされないかとヒヤヒヤしたよ」

「……横取りってなんだよ」
「だいたい、血が必要ってどういう事?」
「自ら望んで死ぬってのも」

ヨシノやマサシが続けざまに言う。
うーん、と翼は言う。

「だから、お前達」

ただ、静かに。

「まずは座れ、と言っているだろう」

「「「!!?」」」

その言葉と共に手のひらのアザに痛みのような物が走り、
皆、その場に蹲る。

「え?」
「なに、が」
「今のは?」

先程のチドリの魔法は
無理矢理体を動かされているという感じだった。
でも今度は違う。

従わなければ、と感じ
自然と体が動いた。

それは、
耀とチドリも同じ。

つまり
アザを持つ子供達には
同じ様に働く力。

これは、魔法だろうか。
それともまた別の力。

「なあ」

耀が言う。

それは京子達に向けて。

「お前達、これでもまだ
 どうにか逃げ出せると思っているのか?」




NEXT