圭が、狩りに出かけた日から、何日たったのだろう。
圭は、頻繁に外へ出かけていく。
祖母の見舞いに行くためだ。
杏子はその話を聞いているので、ただ、家で待つ。
布を取り出し、裁縫をする。
たまに、手を休め、片方の手を見る。
そこに、圭がつけてくれた水晶のブレスレッドがある。
杏子はそれを見て、また、作業を再開する。
「杏子!」
ふと呼ばれて、杏子は慌てて、振り返る。
そこに、圭がいる。
「圭」
「ただいま」
「おかえりなさい」
杏子が微笑み、云う。
「驚いた。もうそんな時間なのね」
窓を見ると、辺りは、暗くなってきている。
圭は、野菜を取り出し、杏子に見せる。
「ほら、野菜」
圭が、杏子に野菜を渡す。
「病院の帰りに、畑に寄って、とって来たよ」
「ありがとう」
杏子は、裁縫の道具をしまう。
明かりをつける。
野菜を持って、立ち上がる。
「夕飯作るから、待っていてもらってもいい?」
杏子が台所に行くのを見て、圭は坐る。
杏子がテーブルにともした、明かりを見る。
祖母が体調を崩し、病院生活をするようになってから
たったひとりで、暮らしていた家。
そこに、
別の誰かがいると云うことに、今更ながら、不思議な感じがして、
圭は、少しだけ、顔がゆるむ。
これが、いつか、当たり前、に、なる日が来るのだろう。
料理を運んできた杏子の腕を、圭はちらりと見る。
「どうしたの、圭?」
杏子が、首を傾げる。
「いや、なんでもっ」
慌てる圭に、杏子は、笑う。
杏子が、料理を全部並べ、席に着く。
食事をとる。
杏子が云う。
「明日も、病院?」
圭は、食べながら、頷く。
「そのつもり」
「わかった。気を付けてね」
杏子は、圭を見る。
「ねえ、圭」
「何?」
「紙を、少しもらってもよい?」
「紙?」
圭は、食事をしていた手を止める。
「紙って、・・・何に使うの?」
「それは、」
杏子は少し考えて、云う。
「手紙を書きたいな、と、思って」
NEXT 55
圭は、頻繁に外へ出かけていく。
祖母の見舞いに行くためだ。
杏子はその話を聞いているので、ただ、家で待つ。
布を取り出し、裁縫をする。
たまに、手を休め、片方の手を見る。
そこに、圭がつけてくれた水晶のブレスレッドがある。
杏子はそれを見て、また、作業を再開する。
「杏子!」
ふと呼ばれて、杏子は慌てて、振り返る。
そこに、圭がいる。
「圭」
「ただいま」
「おかえりなさい」
杏子が微笑み、云う。
「驚いた。もうそんな時間なのね」
窓を見ると、辺りは、暗くなってきている。
圭は、野菜を取り出し、杏子に見せる。
「ほら、野菜」
圭が、杏子に野菜を渡す。
「病院の帰りに、畑に寄って、とって来たよ」
「ありがとう」
杏子は、裁縫の道具をしまう。
明かりをつける。
野菜を持って、立ち上がる。
「夕飯作るから、待っていてもらってもいい?」
杏子が台所に行くのを見て、圭は坐る。
杏子がテーブルにともした、明かりを見る。
祖母が体調を崩し、病院生活をするようになってから
たったひとりで、暮らしていた家。
そこに、
別の誰かがいると云うことに、今更ながら、不思議な感じがして、
圭は、少しだけ、顔がゆるむ。
これが、いつか、当たり前、に、なる日が来るのだろう。
料理を運んできた杏子の腕を、圭はちらりと見る。
「どうしたの、圭?」
杏子が、首を傾げる。
「いや、なんでもっ」
慌てる圭に、杏子は、笑う。
杏子が、料理を全部並べ、席に着く。
食事をとる。
杏子が云う。
「明日も、病院?」
圭は、食べながら、頷く。
「そのつもり」
「わかった。気を付けてね」
杏子は、圭を見る。
「ねえ、圭」
「何?」
「紙を、少しもらってもよい?」
「紙?」
圭は、食事をしていた手を止める。
「紙って、・・・何に使うの?」
「それは、」
杏子は少し考えて、云う。
「手紙を書きたいな、と、思って」
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