TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「水辺ノ夢」17

2013年10月01日 | 物語「水辺ノ夢」
圭が目を覚ました頃には
日は西に傾きかけていた。

部屋から出ると台所には祖母がいる。

「ちょっと出てくる」

圭が声をかけると、祖母は振り向く。

「あら、起きたのかい。無理はしないようにね」

声を背に聴きながら家を出る。

医者の家に行くと、薬は用意されていた。
そもそも昨日
取りに行く予定のものだった。

「……」

圭は生まれつき体が弱い。

ふとした瞬間に、激しい咳が止まらなくなる。
酷いときは発作が起こって
その時はしばらく寝込んだ。

成長して、頻度は減ったけれど

定期的に薬を飲むこと。
激しい運動をしないこと。
今でも、それが対応策になっている。

だから、狩りに行けない。

いつか、
この薬を飲まなくなる日が来るのだろうか

圭は、当てもない事を考える。

それでも圭が村でなんとか
やって行けるのは
祖母や、両親の功績のおかげだ。

「……そういえば」

圭の祖母は
昨日帰らなかったことについては
何も言わなかった。

助かった、

「説明出来そうにないもんな、東一族と居たなんて」

立ち止まり、湖を見つめる。
遠く、東一族の村は、
もう暗くなってきているだろう。

「杏子……どうしているだろうか」



NEXT 18