TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「水辺ノ夢」9

2013年09月03日 | 物語「水辺ノ夢」
「……もう、こんな時間に」

圭は慌てて舟を下り、杏子の手を引く。

「もうすぐ見張りが来る。
 昼に一回、夜に一回。
 ……見つかるといけない」

ふたりは草むらに身を潜める。

「あなたは西一族なのだから
 隠れなくても良いんじゃないの?」

杏子の言葉に、圭は言葉を詰まらせる。

「……会いたくないやつがいるんだ」

日が沈み、暗くなると同時に
辺りも冷え始める。

ひゅっ、と息をすう声が聞こえて
圭が咳を繰り返す。

「……圭!!? 大丈夫??」

ただの咳ではなく、
ケンケンという息苦しそうな咳。
まるで、……あの人のような。

「……気にしないで、いつもの事……だから」
「いつも……? 圭、病気なの?」

「大丈夫……うつる病ではないから」

「そうではなくてっ」

シッ、と圭が自分の口元に人差し指をあてる。

ランプの灯りが、ふたりのいる草むらに近づく。


「今日の狩りは、まぁまぁだったな」

西一族の男が2人。

狩りを終えた後だからか、いつもの事なのか
気だるく歩き過ぎて行く。

「あぁ……」

草むらの前を足早に通り過ぎた若い男を
もう1人の男が追いかける。

「おい、待てよ広司(こうじ)!!!」



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