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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「水辺ノ夢」10

2013年09月06日 | 物語「水辺ノ夢」

「・・・落ち着いた?」

杏子は、うずくまる圭をのぞき込む。
背中をさする。
云う。
「西一族は、・・・行ってしまったよ」

圭は、息を整える。
顔を上げる。
云う。
「大丈夫だ」
その、圭の顔を、汗が流れる。

「無理は、しないで」

「え?」
杏子の言葉に、思わず、圭が聞き返す。
「無理は、・・・しないほうがいいわ」
杏子は、圭から目をそらす。

「光も、・・・そうやって、咳、を」

「光・・・っ」
云おうとして、圭は胸に手をやる。
咳。
「・・・その、苦しそうな咳」
杏子は、何かを振り払うように、首を振る。
「圭、あなたも、死んでしまうかもしれない」

圭は、大きく息をする。
訊く。
「光は、咳をしていて、・・・それで、殺されたの?」
「ええ」
杏子が云う。
「伝染病だったの」
「伝染病・・・」
「私は、知らなかった。しばらく、光に会えなくて」
「うん」
「こっそり、会いに行ったの。」
杏子が続ける。
「それが、最期の日だった。・・・光はもう、手遅れだったのよ」
杏子は、震えている。
「まだ、そこで、・・・生きていて、ね」
「・・・うん」
「光のそばにいた、お医者様が、光に注射をして・・・」
「・・・」
「でも、抵抗しないの。ただ、・・・私の名まえを」
「杏子!」

杏子は、手で口を押える。
目から、涙があふれる。

「もういい」
圭が云う。
「もういいよ、杏子」
杏子は、泣く。
圭が云う。
「ありがとう。話してくれて」

「圭・・・」

杏子は、首を振る。

「助けて」



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