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TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」232

2020年07月24日 | 物語「約束の夜」
気付けば、その力は弱まっている。

チドリが使っている魔法が。

「・・・・・・??」

「どうした?」

「・・・いや、」

「チドリ」

「・・・・・・」

「もっと力を込めろ」

こんなことで時間を使うことじゃない、と
センは目を細める。

笑っているのか
イラついているのか

「なんだ」

チドリは呟く。

「何が起きている?」
「何?」

「まだよ」

「・・・・・・?」

「私たちは、まだ」

マサシが云う。

「命を渡すわけにはいかない」

「!!?」

はじけ飛ぶ光。
消え去る重い空気。

「何!!」

チドリは後ろへ飛ぶ。

「立てるか?」

満樹の言葉に、ツイナは立ち上がる。
マサシも。

京子とヨシノは、倒れたままのノギとオトミに寄り添う。

翼を先頭に、皆、センを見る。

「まあ、相手が変わっただけで状況は変わってないけど」

マサシは満樹を見る。
満樹は頷く。

「おい」

センが云う。

「早く取り押さえろ」
「まさか」

翼が答える。

「いったん、敵はお前の方だ」

判っている。
ここは、翼と協力するしかない。

生き延びられるか。

生き延びられたとしても、そのあとはどうなるか。

「状況は変わってない、だと?」

翼が云う。

「変わっているぞ、お前を倒すために」

弾け飛ぶ、見えない何か。
足下が光り出す。

「これは?」

センは足下を見る。

「何? 魔法?」

「そう」

ツイナは手を振りかざす。

「俺の、ね」

光が、センを捕らえる。

「お前には無駄かもしれない。それでも、一瞬でも効果があれば」

こちらの体制を少しでも整えることが出来る。

「皆、準備はいい!?」

ツイナの言葉に散り散りに動く。

「くっ・・・!!」

あまりのまぶしさに、センは目を閉じる。

続けて

「京子! ヨシノ!」

ツイナは、手をそちらの方へかざす。

そこにいた4人の姿は見えなくなる。





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「約束の夜」231

2020年07月21日 | 物語「約束の夜」

もはや、この場を支配しているのは
裏一族の創始者であるセン。

翼も、チドリの魔法により
徐々に力を奪われていく。

「………」

満樹は翼を見る。

自分達を道具として、
必要な犠牲として扱い、
皆の母親に手酷い事をした男。

「なぜだ?」

そんな父親が
センを騙してまで
会いたいという、誰か。

だが、

翼が殺した女。

そう、センは言っていた。

それが、誰のことかは分からない。
この中の誰かの母親なのか、
それとも、
全く違う誰かなのか。

「だったら、
 なぜ、殺したんだ?」

それ程までに、
会いたいと願っているのに。

「子供には関係無い事情だ」

翼は答える。
分かるはずがない、と。

「「「………」」」

「お前にとっては、
 そうなんだろうが」

満樹は言う。

「俺達はいつまでも子供ではない」

「そうね」

マサシも満樹の言葉を継ぐ。

「あなたは知らないでしょうけれど、
 ワタシ達だって、色々な経験をしてきた。
 何も知らない子供じゃ無いわ」

まだ、意識のあるヨシノも
コクリ、と頷く。

「俺はまだ
 背も低し、顔も幼いけど、さ」

ツイナも胸を張る。

「自分の事、
 子供だとは思わないな」

少年ではなく、青年。
ツイナのこだわり。

「いつまでも、と思うでしょうけど」

京子は意識を失っている
ノギやオトミの手を握る。

「何が大人で、何が子供か、なんて
 あなたに決められる事じゃないのよ」

ねえ!!と
京子はチドリに言う。

「………京子」

チドリは答える。

「それでも、俺は
 こうするしかない」

彼の持つ杖がしなる。

「センに拾って貰わなくては
 俺は今、此所には居ない」

だから、

「術を使った。
 今までもたくさん。
 人の命も奪ってきた」

言われるままに。
彼の命ずるままに。

「裏一族に害になる者はそうだし、
 思うように動かない者は
 裏一族であろうと」

そう、とチドリは言う。

「美和子、だっけ、
 あいつも、そう」

「………そんな、美和子」

どこか、この裏一族の砦に
潜んで居るとばかり思っていたのに。

チドリは笑う。
少し、申し訳無さそうに。

「だから、ごめん、京子」

「チ………ドリ」

目の前が霞んでいく。

と、視界が黒くなる。
もう目も見えなくなったのかと
首を振るが、―――違う。

誰かが立っている、目の前に。

センと京子達の間に。

「なぜ、と言ったな」

その影は満樹に言う。

「殺すつもりなんて無かった
 ただ、
 間違えたのだろう、な」

「………」

「許されるつもりは無い。
 ただ、会いたかったもう一度」

「………翼」

父親―――翼は言う。

「身を任せた方が楽だぞ」

なあ、とセンは言う。

「お前が俺に敵うわけがない。
 力の差は分かっているだろう」
「俺だけ、ならば、な」

翼は、振り返る。

満樹達に向けられる視線。
そして。

「お前に刃向かおうって言うんだ。
 何も考えていなかった訳じゃない」






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「約束の夜」230

2020年07月17日 | 物語「約束の夜」
翼の父親。

そして、皆の祖父。

「若返りの魔法・・・」

ツイナが呟く。

何度見ても、彼は若い。
自分たちと変わらないぐらい。

それが、その魔法の力。

「裏一族の今後のため、我々は若返る必要がある」

センが云う。

「裏一族は、私のものだから」

いずれ老いがやってくる。
でも、
その主導権を、誰かに託すことは出来ない、と。

裏一族は自身で
そして
信頼ある身近な者で、固めておきたい。

「この外見で、どの一族の村長どもも、私が主導者とは気付いていない」

センは息を吐く。

「なぜ、術を使わない」
「使わないわけではない」
「お前を見込んで今回の術を譲ったんだぞ」
「だろうな」
「見込みがなければ切り捨てる」
「術なら、また、血を集めればいいだけの話」
「赤の他人が何千と必要になる」

センは笑う。

「今回を逃したら、次はどうする?」

「・・・・・・」

「はぁ、仕方ないなぁ」

センは頭をかく。

「さっきのお前と一緒だ。・・・チドリ」

センの目の合図に、チドリは下を向く。

「いや、」
翼が云う。
「父親の云うことを聞け」

「・・・・・・」

「早く、若返りの術を」
「よみがえらせる術だ」

チドリは動かない。

「ねえ!」

伏せていた京子は、声を出す。

「チドリが困っているじゃない!」
「京子!」

満樹の制止も聞かず、京子は云う。

「私たち、みんな血がつながっているんだもの! なのになぜ!」
「黙れ、京子!」

耀が叫ぶ。

けれども、

何も、聞いていないように。
聴こえていないように。

センは手を出す。
翼を指さす。

「お前は、切り捨てだ」

「・・・・・・」

「チドリ、今回も私が若返りの術を使う」

「・・・はい」

「あいつも使え」

「!!?」

皆、顔を見合わせる。

光。

止まっていたようで

徐々に、動いていた魔法。

奪われている、力。

満樹は、周りを見る。
何人かは、もはや意識がない。

翼は立ったまま。

「使うのは俺だ」

呟く。

「会うために」




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「約束の夜」229

2020年07月14日 | 物語「約束の夜」

皆の視線が
その青年に向けられる。

「お前が来たのか……セン」

チドリが呟く。

セン。

青年はそう呼ばれる。

「あ、そうよ、セン。
 千さん!!」

京子の記憶がより鮮明になる。

「やあ、京子。久しぶり」

ふわり、と
セン、は京子の言葉に応える。
その様子はどこか
チドリにも似ている。

「あいつは一体」

満樹の問いかけに
京子は言う。

「親切にしてもらったの」

山一族の村から西一族の村へ戻るとき
京子を村まで送ってくれた、その人。

「いい人だと、思う、けど」

「ははは」

その言葉に翼が笑う。

「いい人、だと、こいつが」

冗談は止してくれ、と。

「………そう言うなよ、傷つくだろ」

やりとりを聞いていたセンは
少し拗ねたように呟く。

「俺は優しいつもりだけど、
 なあ、翼」

これはどういう事だ、と

「約束が、違うぞ」

声の調子が、雰囲気が、がらりと変わる。

「若返りを望むというから、
 今回はお前に譲ったというのに」
「力の使い道を変えただけだ」
「使い道、ね」

頬杖をつき、
センは皆を見回す。

「この数だと、
 せいぜい数分呼び出すだけだ」

「それで構わない」

「思い出話でもするつもりか」
「そうだ。
 俺はそれでこの力を使う。
 若返るつもりはない」

は、とセンは笑う。

「自分が殺した女に
 随分ご執心だな」

「黙れ!!!」

「「「…………」」」

何がどうなっている、と
2人のやりとりを
満樹達は見つめる。

先程までこの場を支配していた翼。
それが、突然現れた青年と揉めている。

「チドリ」

センはチドリを呼ぶ。

「もう回復しただろう」

来い、と。

チドリは頷くと
立ち上がり、よろめきながらも
センの元に歩み寄る。

「チドリ!!」

京子が声を掛けるが
ムダだ、と翼が言う。

「元からチドリが仕えているのはセンだ。
 あいつが拾い、あいつが育てた」

「セン、ってひと
 一体何者なの?」

自分達とそう歳が変わらない
1人の青年。

だが
そこに居るのは。

「あいつこそが、
 裏一族の創始者だ」

「………え」

何を言っているのだ、と
満樹達は戸惑う。

裏一族の創始者。

「そんなわけ」

「だから」

分からないのか、と翼は言う。

「既に一度若返っているんだよ」

「………?」

「あいつは、
 必要であれば必要な数を使う」

いい人、と言ったな、と
翼は京子に言う。

「その時一体、
 何人の命が使われたと思う?」

禁じられたこの術は
対象となる者に血が近ければ近いほど
少ない犠牲で済む。

では、
全く無関係の者を使うのであれば。

翼はこう言っていた。

村一つ消える人数。

「「「…………!!?」」」

「そして、俺の父親」

つまり、

「あいつはお前達の祖父だ」





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「約束の夜」228

2020年07月10日 | 物語「約束の夜」
「翼!!」

チドリが叫ぶ。

「止めろ! 止めるんだ!!」

それでも光は集まる。

「それぞれに事情があるんだ」
翼が云う。
「お前たち子どもには判らない、事情が、な」

「それでも!!」

父親の力は絶対だ。
この、短い時間で、ここにいるすべての者が、判っている。

でも

チドリの力も
思った以上にあった、のか。

はっきりとは、判らない。

力がぶつかり合い
見えない何かが、はじけ飛ぶ。

「チドリッ!!」

その言葉と同時に、空間を包んでいたものが消える。

チドリは肩で息をする。
その場に倒れ込む。

「お前」

倒れたまま、チドリは翼を見上げる。

「翼・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・ははっ」

「・・・・・・??」

「そうだよ、チドリ」

翼はチドリを見下ろす。

「やはり、それぐらいなきゃな」

翼は、動く。
先ほどの場所へと。

皆、その動きを目で追う。

「・・・・・・!?」

先ほどまで、翼がいた場所。

その場所に

誰かがいる。

ただ、じっと皆を見つめ、坐っている。
いつの間にか。

「・・・・・・誰?」

誰かが呟く。

「あれは・・・?」

「あれは、」

京子が呟く。

「知って、る」
「知ってる?」

満樹が訊く。

「どう云うことだ?」
「・・・西一族の山で見たことある」
「山で?」

満樹ははっとする。

そう云えば、どこかで会ったような気がする。

その場に坐る、若い男。

どことなく、雰囲気が翼に似ている。

「同じきょうだいか」

マサシが小さな声で云う。

裏一族としている、翼の、子?

「まだ、いたのか?」

ツイナも云う。

「生け贄は8人だと云っていたじゃないか」
「もしものための?」

何かあって、ひとりでもいなくなれば、
翼の云う術は使えなくなる。
願いは叶えられなくなる。

そのためにいる、きょうだい?

「お前たち、いろいろと思っているだろうが」

翼が云う。

「全部、ハズレだ」

「???」

地面に伏したままのチドリは首を振る。
耀も目を背ける。

「俺の比じゃない」

「???」

皆、顔を見合わせる。




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