*SiCパワー半導体はシリコン製に比べて電力損失が10分の1で済む。HVを延命させる開發の転機という感がある、
[東京 20日 ロイター] - トヨタ自動車は20日、デンソー、豊田中央研究所と共同でハイブリッド車(HV)向けの新素材を採用したパワー半導体を開発したと発表した。2020年にも実用化し、将来的には従来品に比べ10%の燃費改善を目指す。
HV車両全体の電力損失のうち約20%がパワー半導体による損失で、燃費向上にはパワー半導体の高効率化が求められていた。従来品の素材はシリコンだったが、シリコンと炭素の化合物であるSiC(シリコン・カーバイド)を使うことで燃費を改善する。SiCパワー半導体はシリコン製に比べて電力損失が10分の1で済む。
新製品はHVの重要部品であるパワーコントロールユニット(PCU)に採用する。PCUは、走行時にバッテリーの電力をモーターに供給して車速を制御し、減速時は回生した電力をバッテリーに充電させるなど重要な役割を担っている。
SiCパワー半導体は、電流を流したり止めたりするオン・オフ時(スイッチング)の損失がシリコン製に比べて少なく、高周波化しても効率的に電流を流せるのが特徴。この性能によりPCUの体積の約40%を占めるコイル、コンデンサを小型化できる。将来的にはPCUの体積を現行の5分の1に小型化したい考え。
SiCパワー半導体を採用したPCUをHVの試作車に搭載し、テストコースで実施した走行実験では、5%を超える燃費向上が確認されたといい、今後1年以内に公道での走行試験を開始する。
ただSiCはシリコンに比べてコストが高く、低コスト化が課題。20年にはまだ目標の10%燃費改善、PCUの5分の1小型化も実現できていない可能性があるが、トヨタ第3電子開発部の濱田公守・担当部長は「技術の7―8合目、10合目の手応えを感じる段階」でSiCパワー半導体を採用したHVを販売したい、と語った。
トヨタは現在、広瀬工場(愛知県豊田市)でシリコンによるパワー半導体を8インチのウエハーで自社生産している。13年12月にはSiCパワー半導体を開発するためのクリーンルームを設置し、4インチのウエハーで試作を実施中。量産時のウエハーサイズや生産拠点など詳細はまだ「白紙」(濱田氏)としている。