ニトリが28日発表した18年3~5月期連結決算は、営業利益が前年同期比18%増の304億円だった。家具や生活雑貨の販売が好調で、同期間では2年ぶりの増益となった。市場予想の平均(300億円)も6四半期ぶりに上回った。株価は昨年来、四半期決算ごとに下げてきた。今回は再び上値を試すきっかけになりそうだ。
*生産は自社企画商品の海外委託生産が主力,ブランドの製品競争力は極めて高い、」
「3~5月期の業績はおおむね会社計画通り。原価低減策の効果が出た」。同日に都内で開いた会見で、白井俊之社長は胸を張った。
転勤者や新社会人の引っ越し需要を取り込み、家具や生活雑貨の販売が伸びた。3~5月の既存店売上高は2.7%のプラス。原材料の共通化や梱包サイズの小型化などで採算も改善した。前年同期より円安が進み、海外に保管している在庫の評価益も出た。
ニトリHDは製造から物流・小売りまで自社で一貫して手掛け、他社より低コストで高品質の商品を供給できる。例えば「最近では20万円はするベッドマットレスを7万9千円で販売できるように開発している」(似鳥昭雄会長)という。
ほぼ全てがプライベートブランド(PB)商品のため、「商品の差別化ができており、米アマゾン・ドット・コムなどのネット通販との競合も相対的に少ない」(大手証券アナリスト)。18年2月期まで31期連続の営業増益は上場企業で最も長く、投資家からは「長期で買いやすい銘柄」として人気を集めている。
だが前期は決算発表直後の株価下落が目立った。好決算でも、市場予想の平均はそれ以上という場合が続いたためだ。17年3~5月期以降は3四半期連続で発表翌日の株価が6~7%下落した。
株価チャートを見れば一目瞭然だ。期待先行でピークを付けた後、決算発表で失望売りが膨らみ下値を探る。底入れした後は再び上値を追う――。こんなサイクルだ。
財産ネットの藤本誠之企業調査部長は「予想と実績の差で自動売買するアルゴリズムが働いている」と指摘する。首都圏に住む30歳代男性の専業投資家は「発表直後に売られすぎと感じた銘柄を下値で拾い、戻りを試す段階で売れば利ざやが取れる」と語る。
18年3~5月期の営業利益は久しぶりに市場予想を上回ったため、これまで通りの展開にはならない可能性がある。決算発表前に株価が下げていた点も従来とは異なる。
19年2月期の業績予想は据え置いた。売上高は前期比7%増の6140億円、営業利益は6%増の990億円を見込む。
前期は都心部の出店拡大や人手不足に伴い販売管理費が膨らんだ。今期の人件費は「店舗ごとに効率的に人が配置できるよう努めている」(白井社長)。一方、地代家賃や物流コストの上昇で3~5月期の売上高販管費比率は前年同期と同じ35.9%にとどまった。ハードルを越え続けるには販売拡大に加え、費用の抑制がカギを握る。
ニトリHDの株価は短期的な上下動はあっても、10年間の上昇率は6.5倍に達する。増益を続ければ市場の期待はさらに高まる。似鳥会長は「売り上げと利益も大事だが、客数と店数も見てほしい。これが伸ばせれば利益はついてくる」と長期的な成長に自信を示した。*日経(野口和弘)