アマゾンジャパン(東京・目黒)が国内の食品や日用品メーカーに対し、同社の通販サイトで販売した金額の1~5%を「協力金」として支払うよう求めていることがわかった。物流費の上昇のほか、システムの更新費用が経営の負担になっているためとみられる。人手不足をきっかけにしたコストの上昇が取引企業や消費者の負担につながる可能性が出てきた。(関連記事企業2面に)
複数のメーカー関係者によると、アマゾンジャパンが取引先メーカーに協力金の支払い要請を始めたのは昨年11月末。アマゾンが商品を仕入れ、自ら販売する直販事業が対象となる。販売システムの更新と利便性向上のために18年から「ベースコープ」という名目で、食品や日用品メーカーは販売額の一律2%、他のメーカーは1~5%を支払うよう求めたという。
これまで直販事業では取引メーカーから一律に費用を徴収することはなかったが、今年から協力金としてコスト負担を求める。米アマゾン・ドット・コムは米国内ですでに同様の制度を導入しているという。アマゾン側からは協力金の支払いの有無による取引の見直しについて言及はなかったというが、「応じなければ取引条件が悪くなったり、仕入れを断られたりするかもしれない」(日用品メーカー)ととらえる企業も多い。
大手食品メーカーの幹部は「一律に2%を支払えという条件は受け入れがたい」としている。家庭用品の中堅メーカーは「中小はアマゾンとの取引がなくなれば死活問題だ。他の広告費を削って、協力金の支払いには応じる方向」と話す。
一方、「企業規模を問わず一律なら平等だ」(中堅の家庭用品メーカー)と理解を示す企業もある。アマゾン側は個別に交渉を続けているとみられる。すべてのメーカーが支払いに応じるかは不透明で、規模や商品シェアによって条件に差がつく可能性もある。
企業間の商取引に詳しい牛島総合法律事務所の川村宜志弁護士は「合理的な根拠があればメーカーに協力金の負担を求めること自体に問題はないが、取引停止などを条件に支払いを強要すれば独占禁止法における優越的地位の乱用に抵触する恐れがある」と指摘する。
米アマゾンの決算資料によると、17年12月期の日本市場での売上高は119億ドル(約1兆2500億円)と前年同期比で10%増加した。国内小売業で百貨店大手のJ・フロントリテイリングなどを抑えて6位の規模だ。
だが、急速な拡大ペースに配送体制の整備が間に合わず、ヤマト運輸など配送業者の人手不足問題の原因となった。ヤマトとアマゾンは昨秋までに、商品配送料を4割程度引き上げることで合意した。メーカーへの協力金の要請は物流費などのコスト増も背景にあるとみられる。
アマゾンは1月、米国で無料配送サービスなどを受けられる「プライム会員」の月会費を18%値上げし、12.99ドルに改定した。年間一括払いの会費は99ドルで据え置いた。日本のプライム会員は月額400円、年額3900円と米国に比べて安い。プライム会員の会費を含め、各種料金や商品価格などで値上げの余地はありそうだ。
アマゾンジャパンは日本経済新聞の取材に対し、「個別の契約については答えられない」(広報本部)と話した。