先月以来、中国の二大国有石油会社の一角である中国石油天然ガス集団(CNPC)が、汚職疑惑に揺れています。
8月下旬に副総経理2名を含む4人の最高幹部が解任されて重大な規律違反の疑いで取り調べられ、9月に入ると今年3月まで同社の会長を務めその後国有資産監督管理委員会主任という閣僚ポストに転じていた蒋潔敏氏も罷免され取調べが始まっています。
CNPCの課長級以上の職員は既にパスポート没収で海外逃亡を予防されており、更なる身柄拘束や証人としての出頭命令の拡大が予想されます。
汚職疑獄の最終的なターゲットは、CNPCの元会長で前中央政治局常務委員の周永康氏とされます。解任された4人の幹部はいずれも周氏の側近だった人物です。
周氏は巨大な利権集団である石油閥の首魁ですが、胡錦濤政権時に2名追加された増員枠とはいえ、中国政界の最高指導層である中央政治局常務委員の経験者に司直の手が及ぶのは文化大革命以来のことです。
中国のメディアでは、周氏の長男周斌氏の妻の米国在住の両親が、CNPCの設備購入に関連して8億米ドルを得たと報道じられています。蒋前会長も関係したとされるこの蓄財疑惑は、石油閥による裏金作りの一環と考えられます。石油閥が中国政界に大きな影響力を及ぼしてきたのは、その豊富な資金力の賜物でしょう。
中国の二大国有石油会社CNPCと中国石油化工(シノペック)の業容は、欧米石油メジャー最大手のエクソンモービルと比べても遜色ありません。上流部門が主力のCNPCと下流部門が主力のシノペックとでは、その収益構造に大きな差があります。売上高ではCNPCを凌ぐシノペックですが、精製部門の不採算のため利益はCNPCの半分程度です。
中国国内の石油製品販売価格は政府公定価格で制限されているため、製油所はしばしば原油価格との逆ザヤによる赤字に悩まされています。
不採算部門の少ないCNPCは、特に2000年代以降の原油価格上昇で金の成る木のようなものですね。
ただ、エクソンモービルと比べると、CNPCの利益率は低いように思われます。精製部門の不振以外に、資材や設備の調達の際に裏金作りのために利益の抜かれている可能性がうかがえます。
周永康氏が省のトップを務めた四川省の人事も石油閥の利権となっているようで、石油畑出身で四川省副省長だった郭永祥氏など四川省関係者も次々と拘束されています。
済南市地裁の微博(マイクロブログ)は、11:55に、「司法警察が被告人に手錠を掛けて法廷から出て行った」と伝えただけだ。そして12:08に手錠を掛けられた薄熙来の静止画面が同微博に現れた。
この流れにはギャップがあり、実は11:54~11:55の1分間の間に、薄熙来が大声で叫んでいたという。判決を言い渡された後、薄熙来は「判決は不公平だ!明らかに事実に反している!公正じゃない!私や弁護人の証拠に基づいた弁護を全く採用していない!」と叫んだと、翌23日の香港メディア「明報」が伝えた。おそらく傍聴席にいた誰かが漏らしたのだろう。
23日の中国の新聞は、一斉に薄熙来が手錠を掛けられた姿をトップページに掲載した。中央テレビ局CCTVも、この手錠を大写しにして、薄熙来の強く握った拳が震える様を繰り返し放映した。
中共中央の強烈な意志を示した「通稿」(新華社を通して通達する統一した原稿)が配信されたものと思う。それはどんなことがあっても薄熙来は再起不能であることを示し、薄熙来をヒーローと崇める一部の人民の口を完全に封じたことも意味する。
1997年8月に党籍を剥奪され98年2月に逮捕された元北京市書記の陳希同(元中共中央政治局委員)の場合は、98年7月に16年の懲役刑を受け上告した。同年8月、その上告は棄却されている。
同じく中共中央政治局委員だった元上海市書記・陳良宇は、2008年4月に18年の懲役刑を言い渡され、上告を放棄した。
薄熙来が上告しても一審判決が覆ることは絶対にない。22日の判決時点で裁判自身は事実上終わっていると考えた方がいい。
改革開放以来、3人目の中共中央政治局委員の失脚は、今回の徹底した中共中央の意思決定により歴史に刻まれるだろう