この場所にはもともと、米軍専用のゴルフ場でしたが、沖縄に返還され、跡地の開発をイオンが行ったというわけ。
*ここは台風の多い沖縄で唯一、気軽にゆける避難所となる。楽しめる空間が提供される、だから、気候に関係なくいつでもユケル、旅行会社とタイアップ出来る、最強の訴求要因がつくれる、
*衣料は訪日観光客向け、安物はいらない、飲食は高級化と低価格を軸に多様化すべきである、地場向けを充実する、
連絡先:沖縄コンサルタント,GYO.YANO、
【大型流通業の限界】
イオンは流通業で国内1、2位の規模にはなったけど、利益高、利益率という点ではセブン-イレブンがひっぱるセブン&アイに大きく水をあけられてます。その最大の理由は、アノ手の安売り大量販売型の業態が、もはや飽和点に達していること。それから長いデフレの間を通じて、徹底的に安物中心に振りすぎた悪影響に尽きると思います。こういう商売そのものがもう飽和しているってこと。
一方で、儲かっているとはいえセブングループだって稼いでいるのはコンビニのセブン-イレブンくらい。まぁ、金融サービスも入れてもいいか・・・かつての本丸、ヨーカ堂は大苦戦からいまだ再浮上の気配も見えてこないから、やはり大型スーパーというのが限界なんでしょう。
イオンに話を戻せば・・・10年前までならまだ規模をいかして、地域内の競合店舗よりは多めの品揃えで、それなりの規模の意義もあった。ところが数年前からは行き過ぎたPB(プライベートブランド)が、売り場を完全につまらないものにした。
とにかく、安物を作らせることに血眼になり、その品質は月並みかそれ以下。そして買い物の楽しみという点では売り場にトドメを刺した観がある。PBを売らんがために、それまでそこそこあった競合他社商品を減らし、Top Valueブランドばかりにしてしまった。
セブン系はPBでも、低価格というよりも、競合するメジャー商品よりちょっとプレミアム路線を狙って、むしろ付加価値を高めたものに注力していたのと対照的。ま、それも売り場が狭くて、並べる商品が限られるコンビニでは非常にうまく機能したんだけど、売り場の広いヨーカドーを救うまでには至っていない。
どんなビジネスでもそうだけど、ある程度まで規模を作るのは、最初の立ち上げがうまくいけばなんとかなるもの。特に新規出店で伸ばせるうちは七難を隠して拡大していける。
でもそうした競争はすぐに煮詰まる。ヤマダ電機の苦戦も、イオンやヨーカドーの苦戦も、結局同じ業態ではもう需要以上の供給力になっているだけのこと。だから今後も拡大成長を追うというより、新たな業態を生み出して、かつその新業態と現存のビジネスが共存共栄になるようなビジネスモデルにしないといけない。でもその解を今のところどこも見いだせていないんだね。
ついでにいえば、組織はある程度大きくなると、組織を維持するためだけでも、拡大を追い続けるしかなくなりがち・・・でもほんとうに幸せで社会にとってもよい企業を目指すなら、規模を追い求めることは破滅だと思ってる。規模に頼らないビジネスモデルを経営者は見つけないといけない時代になっているんだ。
と、前置きはこれくらいにして・・・
イオン沖縄ライカムは、まず良いスタートを切っているように見える。
沖縄というのは、日本の中でもけっこう特殊な市場だといえる。まず第一に、遥か遠く離れた海上に孤立する島嶼県ということ。これはいろんな意味で大きい。
【沖縄マーケットの難しさ】
1番根が深いのは、文化・習慣的な面で、他の都道府県と交じりにくい。そのため、よくも悪くもかなりの独自性が顕著となる。
2番めは、県人口が140万人しかいないこと。数だけでなく、全国一経済的に貧しい県民所得ということは、この人口の過半数の購買力を考えると、140万人という数以上に、経済規模が小さいってこと。だからセブン-イレブンは沖縄に出てこないよね。
3番め、なにをするにも、送料・物流費が日本国内で一番高くつくこと。
まぁ、他にもいろいろあるんだけど、特に重要で根深い要素としてはこんなところ。
そういう沖縄市場でも、今回のイオン沖縄ライカムは、那覇市周辺でなく、沖縄本島中部、北中城村と沖縄市の間にできた。これはまっさらのスタートなら、たぶん那覇周辺や、あるいは那覇からほど近い、豊見城や東浜など、新興住宅地として最近人気の高まっている場所でやっていたはず。それが、米軍のゴルフ場跡ありきの再開発だったので、結果的にこれまでの沖縄再開発とはちょっと違うスタート時点となり、沖縄中部で、沖縄最大の小売面積を持つ商業施設のオープンにつながることとなったわけ。
そして沖縄という個性では、那覇市とその周辺以外の住民の購買力は非常に偏っている。とにかく酒代、居酒屋代以外の外食費や、趣味性の高い被服費などへの出費がほとんどない。まぁ日本一所得が低いから・・・といえば元も子もないんだけど、毎日飲む酒代、タバコ代だけはしっかりあるんだよね。
で、本来大切な食については、とにかく安くて量があれば満足というのが圧倒的に多い。
逆の言い方をすると、良質で健康にもよく、味や技術がしっかりしたホンモノにはまったく興味がない。そういうのは、量が少ない、値段が高い、どうせそんなもの大した差はないさぁ・・・といって、お金はぜったいに使わない。
その結果、そうした食育・文化・情操教育に触れる機会もないまま育つ社会では、そうした連鎖が延々続くわけで、その地域ではまともな店は存続できないから、たまにできてもすぐに潰れる。そう、どんどん潰れていくから、さらにそうした味や質を知らない住民ばかり再生産されていく。
もう一つ、沖縄にも実はお金持ちは結構いる。もちろん貧困層の方が多いんだけど、比率でいえば結構大勢いるんだよね、これが。多くは不動産絡みや既得権絡みの不労所得が多かったりするのも特徴的なんだけど・・・まぁそれは別論だから置いといて・・・
そのお金持ちの傾向として、地元沖縄ではあまりお金使わない。県外や県外のものに使っていることが多く見受けられる。
県内に使いたいものを売っていないってのもあるんだけど・・・でも意識して地元にお金を落として回していかないと、いつまでもその地元が豊かになっていかないのに・・・そういう目線の人がすごく少ない。やさしい人は多いけどね、でもおおきな視点がないというか・・・
また話がずれてるので、戻しますが・・・
そうしてイオン沖縄ライカムのオープン約1ヶ月を見ていると・・・(オープン後1ヶ月で数回いってみた)
人はすごく入っている。集客数自体は成功といえる。
でも、低価格から中間価格くらいまでの飲食関係を除くと、実際買い物している客は少ない。
なので、今後安易に予想できるのは、今後1年経過後を目処に、高級路線の飲食店や、雑貨・アパレル系のテナントは結構退店、入れ替わりが出てくるでしょうってこと。
【これまでもよくあったパターン】
実はこれ、沖縄の新規商業施設ができるたびに、同じことが起こっている。つまり、今回もそれと同じ。ちょっとこれまでと違って期待できる要素があるとすると、規模とコンセプト(日本初のリゾートモールを目指すそうです)から、中国・台湾・タイなど東南アジアからの外国人客を一定量呼び込める可能性は高いってところかな。
あとは・・・沖縄は青い海、青い空のイメージをアピールしているけど、実はかなり晴天率が低い県。それなのに、青い海に頼りきっていて、雨が降った時に楽しめる場所が非常に少ないんだね、これが。
僕も旅行で沖縄に来ていた時に経験済みなんだけど、ちょうど台風に旅行が重なったことがある。その時・・・ホテルのプールでのんびりするか・・・と思ったんだけど甘かった。ホテルに滞在する人のほとんどが同じ考えで、ホテルのプールは座る場所さえない超満員。
夜なんかとくに悲惨で、居酒屋とコンビニしかやってないんだよね。
せっかくリゾートといわれる場所に旅行で来ているのに・・・
ちょっと強い雨が降っただけで、もうお金使う場所、使いたい場所がない!
女性なら、マリンスポーツしない時なら、ちょっとオシャレしてショッピングやレストランにも行きたいって人は多いはず。でもオシャレしていけるような場所もない。だって居酒屋とコンビニだけなんだから!これが観光立県沖縄の笑える、泣ける現実。
そういう面では、この大きなモールは、雨や台風時に遊びに行ける数少ない大型施設の一つにもなるでしょう。
【他にも期待したい要素】
ここまであまり良い話しではないと思われるでしょうが・・・良い面や期待したいことも多々ある。
まず、沖縄初出店や、沖縄初導入・紹介品も増えたこと。最初に書いた通り、購買力がなく、底辺商品以外あまり需要もないため、各商品の選択肢が非常に限られているのが沖縄の特徴の一つ。
そこに一応、初めての規模の店だからと、商品種類という点でもいままではなかった店・商品がちょっと増えたというのは、その存在を知っている県内客には非常にありがたいこと。待ち焦がれていたと言っても過言ではないほど。
例えばこのみたらし団子。沖縄ではほんとに貴重だ。なんでって・・・
沖縄でも、どこのスーパーに行っても、みたらし団子は大概売ってる。でもね、全部まがいものなんだよね。
団子の生地がもち粉から作ってあり、しかも砂糖を加えてあって甘い。甘すぎる。
そして多くの場合、その団子を焼いていない。要するに、白玉状態。甘い白玉串に刺して、醤油蜜をまぶしてあるものが、沖縄でいうみたらし団子。
でも、みたらし団子、追分団子をちゃんと知っている味覚からすると、それは全然おいしくないわけ。
甘くなく、(もち粉から作らないから)しっかりした歯ごたえがある団子に、焼きで香ばしさが加わり、甘くない団子にこそ、醤油と砂糖や味醂を煮詰めた蜜の甘じょっぱさが絡んで、あのみたらし団子の美味しさになっている。
それがやっと、イオン沖縄ライカムにテナントとして入ったこの店がみたらし団子を扱っているから食べられるようになった。
よくみりゃちょっと高いよね・・・本土の商店街で普通に買うのと比べると・・・でもね、欲しくても無いって状態が当たり前になってると、こういうのがたまらなく恋しくなってくるんだよね。逆に、どうせ毎日食べるもんじゃないから、ちゃんとしたホンモノの味で出してくれるなら、ちょっと高くてもいいよ。場所代だって高いんでしょ・・・って思えるんだ。
この手の事例は他にも多くある。日本酒の種類だったり、日本各地の特徴的な調味料の銘柄だったり・・・・・・ね。やはり食べるものって、長く慣れ親しんだ味や、旅行であちこち行ったことのある人なら、それぞれの名前に見合う、ちゃんとした本場の味ってのがアタマにしっかり染みこんでくるものだから・・・似て非なるものってのはどうもイヤなんだよね。
あとは、こういう商品や店を、県内客がどれだけ応援(利用)して、商売として根付かせてあげられるか?だと思う。これがうまくいったら、このイオン沖縄ライカムは成功したってほんとうに言えると思ってる。
経済力が低く、大きなレジャー施設や情操教育面での経済が未発達な沖縄では、これまでもイオンとサンエーの大型モールは、子供連れがただで遊びにいくレジャーパークの代用品でもあった。というか、今もそう。
今回もそういう客がものすごく多い。これは当分変わらずそんな状況が続くでしょう。質の向上につながる変化が今のところ皆無なんだから、変われるはずもないし。
だから今も、来場客数は多いけど、買い物客数は少ないし、それが続けばその商業施設はいずれ苦しくなるわけだし。
沖縄が今後、県民の中でだけでなく、県外、国外へも通用する観光立県になっていくために
これだけしんどいことばかり書いている自分としては、今度の施設はほんとに生き残って成功してほしい。そうでないと、次への成長や質的な向上の道がまた遠くなるから・・・それは自分のつまらない、小さな生活面の満足度だけでなく、沖縄という場所が今後ほんとうに豊かに上質になっていく上での1ステップだから、ほんとうに成功してほしい。
・・・と、本来イオンという大型流通企業は、街場の小さな商業・自営業を潰してきた企業なので、応援したくはないんだけど、現状は大手の威を借りて沖縄のステップアップを期待したい。