この野菜の栽培装置は、2013年創業の独スタートアップ、インファームが開発した。遠い他国や地方の畑から、店に届くまでに傷んでしまう野菜をどうしたら少なくできるのか。インファームが見いだした答えは「店の中に畑を持ち込む」ことだった。都市近郊の拠点で苗まで育てておき、後は店内の専用ケースの中で育て「完成品」とする。離れていた畑と店が近づけば、輸送コストや廃棄ロスは減る。燃料から生じる二酸化炭素(CO2)も減らせる。一石二鳥だ。
インファームの「畑」は600を超える。スーパーだけでなく、レストランにも広がり始めた。英仏など欧州6カ国に続き、2019年には米国にも進出し、小売り大手クローガーと組んだ。日本でも参入の準備を進めている。
食べる前に廃棄、日本で年643万トン
国連によると、野菜や果物は生産量の45%、魚は35%が食卓に届く前に捨てられたり失われたりしている。野菜はリンゴに換算して3.7兆個、魚はアトランティックサーモンにして30億匹分という途方もない規模だ。
<figure class="nui-figure nui-figure--center" data-cms-height="2000" data-cmd-width="1600" data-aspect-ratio="0.8" data-body-index="14">失われ方は様々だ。東南アジアなど温暖な地域では生育段階で捨て置かれたり、収穫後に市場や店に運ぶ過程で傷んだりする。一方、北米や日本などの先進国では、大量の食べ物が消費過程で捨てられている。形が不格好だったり消費期限内に売れ残ったりして捨てられる食べ物の多くは十分食べられる。日本で生じる食品ロスは年643万トン。1人あたり51キログラムにもなる。
98億人まで増える人口を満たすには、13年生産分の倍の食べ物が必要だと予測されている。国連が2030年までに食品ロスを半減させる目標を掲げ、各国が政策対応を急ぎ始めたのは、大量生産・大量廃棄のモデルに地球が耐えられなくなりつつあるからだ。
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