政府は中国との関係改善に向けた対処方針を固めた。中国の広域経済圏構想「一帯一路」に協力し、中国企業と共同事業を手掛ける日本の民間企業を支援。個別事業ごとに是非を判断する。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席の来日時に新たな両国関係を定義する「第5の政治文書」づくりも検討する。中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)には参加しない。
安倍首相は17/6月5日に国際交流会議「アジアの未来」の夕食会で講演し、中国の経済圏構想「一帯一路」について、「(同構想が)国際社会の共通の考え方を十分に取り入れることで、環太平洋の自由で公正な経済圏に良質な形で融合し、地域と世界の平和と繁栄に貢献していくことを期待する。日本は、こうした観点からの協力をしたい」と述べました。
新聞各紙は、初めて安倍首相が「一帯一路」への協力を口にしたということをポイントとして強調しています。これだけ見ると、いよいよ日本も「一帯一路」に参加するかのような印象を与えます。
*参加の印象を作ることがこの発言の、目的の1つ、と、みるべきだ、アメリカのTPP離脱で窮した安倍政権が、「一帯一路」に尻尾を振り始めたと見る向きもあります。選択の多様性をつくることがが外交のイロハでしょう、
ただし、産経新聞は「安倍晋三首相、中国の『一帯一路』協力に透明性、公正性などが『条件』」という見出しで、中国が支援する国の返済能力を度外視して、インフラ整備のために巨費を投じることが問題化しつつあることを踏まえた発言だという内容となっています。むしろ中国を牽制する狙いがあるという論調です。
● 安倍晋三首相、中国の「一帯一路」協力に透明性、公正性などが「条件」
。スリランカのコロンボにあるハンバントタ港は、中国からの融資でインフラ開発されましたが、6%を超える高利であるためスリランカ側の返済の目処がたたず、このハンバントタ港を中国企業に99年間貸与するという、「事実上の売却」に迫られました。
● スリランカ 港を中国に貸し出しへ 財政厳しく
中国が主導するAIIBについては、これまでも麻生副総理をはじめとして、透明性と公正性が重要だということを強調してきました。今回の安倍首相の発言も、「一帯一路」について、従来の政府の立場を踏襲したにすぎません。
中国西部から中央アジアを経由してヨーロッパにつながる「シルクロード経済ベルト」(「一帯」の意味)と、中国沿岸部から東南アジア、スリランカ、アラビア半島の沿岸部、アフリカ東岸を結ぶ「21世紀海上シルクロード」(「一路」の意味)の二つの地域で、インフラストラクチャー整備、貿易促進、資金の往来を促進する計画であり[1]、それぞれ2013年に習総書記がカザフスタンのナザルバエフ大学とインドネシア議会で演説したものである。
一帯一路構想のルートには、北極海航路、北米航路も第三のルートとして含まれている。ロシアのムルマンスクの埠頭を開発し欧州〜ロシア〜日本〜中国というルートである。これはロシアのウラジミール・プーチン大統領が一帯一路と北極海航路の連結という形で提唱し[2]、中国は「氷上シルクロード」と呼んでる[2]。とりわけ日本の釧路港をアジアの玄関口、北のシンガポールという位置づけで強い関心があることも公表されてる[3]。さらに中国、ロシア、米国を繋ぐ高速鉄道構想もあるグローバルなロジスティック戦略である。また、中国と欧州を繋ぐルートとして開通した義鳥・ロンドン路線(英語版)と義鳥・マドリード路線(英語版)も基本的にロシアを経由してトランス・ユーラシア・ロジスティクス(英語版)などが利用してるが、厳冬期でのハイテク製品の輸送に適してないロシアを迂回するルートとしてアゼルバイジャン、ジョージア、トルコを通るルートも開発されている[4]。
中国政府の李克強国務院総理は、沿線国を訪問し、支持を呼び掛けている。100を超える国と地域から支持あるいは協力協定を得ており[5]、さらに国際連合安全保障理事会[6][7]、国際連合総会[8][9]、東南アジア諸国連合、欧州連合、アラブ連盟、アフリカ連合、アジア協力対話(英語版)(英語: Asia Cooperation Dialogue, ACD)、上海協力機構など多くの国際組織が支持を表明している[10]。李克強国務院総理は「『一帯一路』の建設と地域の開発・開放を結合させ、新ユーラシアランドブリッジ(英語版)(新亞歐大陸橋、英語: New Eurasian Land Bridge)、陸海通関拠点の建設を強化する必要がある」[11]としている。
そのため、諸国の経済不足を補い合い、アジアインフラ投資銀行(AIIB)や中国・ユーラシア経済協力基金[12]、シルクロード基金(英語版)(丝绸之路基金、英語: Silk Road Fund)などでインフラストラクチャー投資を拡大するだけではなく、中国から発展途上国への経済援助を通じ、人民元の国際準備通貨化による中国を中心とした世界経済圏を確立すると言われている[13]。
2017年5月14日から15日にかけて北京では一帯一路国際協力サミットフォーラム(英語版)が開催された。
2017年10月の中国共産党第十九回全国代表大会で、党規約に「一帯一路」が盛り込まれた[14][15]。