浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

オネゲルの洋琴の為のコンチェルティーノ「かもめの水兵さん」

2009年03月31日 | 忘れられた作品作曲家
仏蘭西近代の作曲家、オネゲルが1924年に世界の各地の音楽要素を取り込んで作曲した「洋琴の為のコンチェルティーノ」を取り出して久々に聴いてゐる。この曲は友人Iのお気に入りの作品で、亜米利加のジャズ音楽や我が國の河村光陽作曲「かもめの水兵さん」の主題を基に作曲したと云われてゐる(友人Iによる)。

我が國の童謡などの有名な旋律は知らぬ間に多くの作曲家に盗用されてゐることは意外と知られてゐない。友人Iはそのことを研究し、新たな発見があると必ず僕に一番に知らせてくれたものだ。この曲の冒頭に登場するのが「かもめの水兵さん」の主題であることは誰が聴いてもすぐに分かるだらうが、あまり知られてゐない作品なため話題に上ることは無い。

第2部では仏蘭西近代の雰囲気を愉しむことができるが、第3部ではジャズの影響を強く受けた軽いタッチの音楽に仕上がってゐて興味は尽きない。特に第3部ではバッハの手法にジャズが混入したやうでとても面白く聴くことができる。定旋律が金管によってコラール風に奏される中、通奏低音を伴って洋琴や管楽器などの装飾的な動きが挿入されていく様は、正にバッハのコラールやカンタータを彷彿とさせる。その装飾的な部分や低音の動きがジャズ風にアレンジされてゐると云えばイメージできると思ふ(ただし、どの解説書にもそんなことは書いてゐないので僕の妄想かも知れない)。

演奏は、維納3馬鹿ラスと云われた3人の洋琴家の一人、ワルター・クリーンの独奏、ハイリッヒ・ホルライザー指揮維納プロムジカ管絃團のスタジオ録音である。現在、この演奏は市販されてゐないやうだが、なかなかの名演だと思ふ。

盤は、米國TurnaboutのLP TVS34130。


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