浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

デュカスの最高傑作「ペリ」

2009年04月11日 | 忘れられた作品作曲家
忘れられた作曲家でも作品でもない名曲「ペリ」を取り上げたのはこの曲が、その完成度の高さの割りには正当な評価を受けてゐないと思ふからである。今宵は久々に音楽を聴く時間のゆとりを持つことができたので、ミヨーのアルバムを聴き、元気付いたところでジャン・フルネ指揮によるデュカスのアルバムを手に取った。

この作品に出逢ったのは何時のことだか忘れてしまったが、今聴き直しても実に完成度の高い作品だと熟熟(つくづく)と思ふ。オランウータンも喜ぶファンファーレがおまけとして後に付けられたが、素晴らしいのはむしろ、その後に続く本来バレー音楽として作曲されたイスカンダルとペリの物語の部分であることは疑う余地も無い。

洋琴作品「ラモーの主題による変奏曲・間奏曲と終曲」でも触れたやうに、デュカスは13曲しか世に残さず、残りは破棄してしまった為、僕たち音楽愛好家は全集を集めるにも安くついて経済的に大変有り難い作家なのである。しかし、その僅かな作品を一つ一つ聴いてみると、どれもが素晴らしい技法で創られ、徹底的に吟味され尽くした感のある作品ばかりであり、なんでもかんでも大量に世に送り出したサンサーンスやミヨーとは対照的に感ずる。

独逸伝統音楽の重厚さを感じさせる音楽語法と、研ぎ澄まされた繊細な響きを併せ持った僕好みの作風だ。ルーセルやオネゲルの作品にも独逸的な匂いを感じるが、デュカスほど繊細で美しいとは思ったことがない。イスカンダルの欲望が潰え命の灯が薄らいでゆき、妖精ペリが淡い光の中に消えて行く光景が僕にははっきりと想ひ描くことができる。

管絃樂法の巧み、楽想の素晴らしさとその見事な展開法、音楽の美しさなど、どこをとってもラヴェルやドビュッシーといった同世代の仏蘭西の作家よりも崇高な位置にあると、僕は確信してゐる。

我が國にも馴染みの深いジャン・フルネ指揮、ネーデルランド放送フィルハーモニー管絃團の演奏も思ってゐた以上に良い演奏だった。

盤は、DENON RECORDSの米國盤CD CO-75284。

デュカス:魔法使いの弟子
オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団
コロムビアミュージックエンタテインメント

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