浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

チェルカスキ自作の「プレリュード・パセティーク」と「熊蜂は飛ぶ」ライブ

2009年01月12日 | 洋琴弾き
巨匠時代の化石、シューラ・チェルカスキのライブ音源は数多く残されてゐて、今後、ミケランジェリのやうにライブ盤が次々と発売されていくやうになるだらう。しかもミケランジェリと異なるのは、チェルカスキのレパートリーの広さである。何が出てくるか、愉しみにしておこうと思ふ。

チェルカスキの自作アンコール・ピース「プレリュード・パセティーク」は以前にも取り上げたことがあったが、この名曲は何度も言ふが(正確には2回目だ)彼が小学6年生のときの作品であり、その曲想や難易度の高さは、とても小学生のものとは信じ難い。後になって書き換えたのだらうと疑う方も居るだらうが、機械吹込みのSP盤がそのことを証明してくれる。ご存知のやうに機械吹込みは1925年以前の録音方式だ。このクレディットには1923年録音と記されてゐるのだ。60年も前に作曲したアンコール・ピースを70歳を超えた巨匠がアンコールで取り上げてゐるのが今日のレコヲドである。

場所は、倫敦のウィグモア・ホール、時は1982年2月20日。ムソルグスキの「展覧会の絵」とアンコールとして弾いた2曲が収められてゐる。恐らく半数以上の聴衆はこの作品が何なのか知らずに聴いてゐるのだらうと想像する。演奏會終了後、初めて聴くこの名曲の題名は何か、きっとロビーで話題になってゐたことだらう。

それにしても、音色の美しさ、技術面、取り上げる作品の幅広さなど、老いを全く感じさせないチェルカスキのパワーは驚異的だ。倫敦の聴衆は熱狂してゐて、歓声の中から始まる「熊蜂の非行」では、終わるなり思わず「ウヮ!」と声が出てしまふのが理解できる。

盤は、英國BBC放送局によるCD BBCL4160-2。


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